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遠野のザシキワラシとオシラサマ (中公文庫 B 21-15 BIBLIO)


遠野のザシキワラシとオシラサマ (中公文庫 B 21-15 BIBLIO)

 日本の妖怪について知りたいなら、必ず読むべき基礎文献の一つです。
 著者の佐々木喜善【ささき きぜん】は、かの柳田国男にネタを提供した人です。つまり、『遠野物語』のネタ元です。
 まさに、日本の妖怪研究の原点となった人です。

 本書では、題名にあるとおり、ザシキワラシとオシラサマについて、語られています。喜善が、ザシキワラシ、または、オシラサマについて書いたものは、ほぼすべて、これ一冊に集約されています。

 本書を読まずに、ザシキワラシについて語ることは、できません。
 オシラサマについても、同じです。
 ザシキワラシとオシラサマについて、最もよくまとまった文献資料です。

 ザシキワラシは、東北地方の一部に伝わる妖怪ですね。けれども、本書を読むと、妖怪というより、福の神的性格が強いとわかります。ザシキワラシがいる家は、富裕になるといわれます。
 とはいえ、妖怪っぽいところも、大いに残しています。例えば、ある家のある特定の部屋で寝ると、いたずらを仕掛けて眠らせない、という話が、たくさん、本書に載っています。

 いっぽう、オシラサマは、これまた東北地方の一部に伝わる神さまです。ありがたい神さまではあるものの、怖いところもありました。機嫌を損ねると、祟るのです。
 もちろん、神さまらしい霊験を表わすこともあります。例えば、本書には、農繁期に農作業を手伝ってくれたオシラサマの話が、いくつか載っています。

 本書を読むと、ザシキワラシとオシラサマとは、ちょうど、「妖怪と神さまの間」に位置するものではないかと感じられます。
 どちらも、怪異を起こすものであり、人に福をもたらすものです。

 妖怪や神さまというものが、どのように生まれ、育ってゆくのかを、本書はよく表わしていると思います。
 日本文化の奥深いところに、迫る本ですね。

 以下に、本書の目次を書いておきますね。

ザシキワラシ
 奥州のザシキワラシの話
 ザシキワラシの話 1
 ザシキワラシの話 2

ワラワミコとダイダラボッチ
 子供遊戯神の話
 秋田三吉さん

オシラサマ
 オシラ神に就【つ】いての小報告
 オシラ神の家に憑【つ】きし由来とその動機
 農業手伝神
 屋内の神の話

解説  山下 久男
遠野の市【まち】の謡【うた】  山田 野理夫
後記  山田 野理夫
文庫版解説  桜庭 一樹



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