転職ではなく島留学へ。島で就職という新たな選択の懸け橋に
社会人として1年働き、退職。
転職ではなく大人の島留学を選択した彼女が島で再就職した経緯とは。
今回はR4年度島留学を卒業し、今年度から島前ふるさと魅力化財団に財団総務として就職した田中沙采さんにインタビュー。
島での暮らしや大人の島留学卒業後の進路について聞いてみました。
大学時代に海士町へ
━石川県の大学、経済経営学部に入学した田中さん。
海士町を知ったきっかけはなんだったのでしょうか?
田中さん:
所属していたゼミで高校魅力化プロジェクトの経済効果を研究していて。
その研究の一環で海士町へ来たのがきっかけでした。
当時はまちのいいところだけを切り取った感覚で…。
またいつかいってみたいとは思っていました。
転職という選択ではなく、「大人の島留学」という選択
━大学卒業後、小売業界に就職した田中さん。
地元の店舗で働き始めるも、「これから先、このままでいいのだろうか?」と違和感があったといいます。
当時はすぐに転職という選択肢はなかったそう。
しかし、とあるご縁から環境がガラッと変わることに…。
田中さん:
環境を変えたいと思ったタイミングに、たまたま大学時代にお世話になった先生が「大人の島留学があるよ」ってFacebookに投稿していて。
地方で若者が働くことやU・Iターンといった分野に関心もあったので、「今だな!!」と思って応募を決めました。
「とりあえず。やってみる」が原動力に
━大人の島留学の運営に興味があったという田中さん。
来島後は大人の島留学を運営する島前ふるさと魅力化財団(以下、財団)で働くことに。
田中さん:
財団に所属しながら、最初の3ヶ月間は週2回、現場支援としてCAS工場に行っていました。
ただ、それ以外の財団スタッフとしての仕事がなかなか決まらなくて…。
その時に「財団でnoteを書いてみる?」と声をかけてもらえて。
それから「離島にもっと若者の還流を」というnote(以下、還流note)を担当することになりました。
田中さん:
ライティングはもちろん、記事の企画を立てることもはじめて。最初はめちゃくちゃ苦戦しました。
まずはもともとある企画から、順番に自分らしい形を作っていって。
後々こういう記事があったら面白いんじゃないかな?と企画を立てながら少しずつ書けるようになっていきました。
田中さん:
これまでの還流noteが大切にしてきたものを残しながら、いろんなストーリーを届けていけたらいいなと思っていて。
取材相手の言葉が一番伝わる形、読む人のスクロールの手が止まらない記事を模索していました。
━成果が見えにくいのも広報の宿命
田中さん:
読了数がわからない反面、書いても一方通行で成果が見えづらいという悩みもあって...。
そんな中で、2泊3日のお試し島留学という企画で島に来た方から「あの記事を読んで、島に来ました!」といってもらえることがあって、少しでも島に来るきっかけになれたと思うとすごくうれしかったです。
noteだけでなく、大人の島留学生や島体験生が暮らすシェアハウスの整備や清掃を任されることもありました。ずっと文章を見ていると行き詰っちゃうので、私にはあっていたのかも(笑)
━シェアハウス整備や空き家の清掃から新たな気づきもあったといいます。
田中さん:
はじめの頃はひたすら竹を切ったり、草を刈る仕事で前向きになれなかったけど、繰り返すうちに考えるようになって…。
地道な作業だけど、ちいさな積み重ねから、まちの景観が守られたり、家屋の保全や空き家に人が暮らせるようになる。
「誰かが手を動かすことが誰かの暮らしにつながる。」
それに気づけただけでも島に来た価値があるなと実感しました。
休日に生まれる地域との交流
━休日は好きなことから交流につながったことも
田中さん:
自分から色々な人と関わることに苦手意識があったけど、好きなことから新しい交流や会話も生まれました。
田中さん:
休日はもともと土いじりや花を植えることが好きで、畑をやっていました。
畑をやっていると近所の人が集まってきて「一緒にお茶しようよ!」と誘ってもらえることも多くて。
今は別の地区へ引っ越してしまったけど、今でも時々お茶に行っています。(笑)
島留学を終え、島に就職。働く選択肢を…。
━1年間の大人の島留学を終えて、4月からは島前ふるさと魅力化財団に総務として就職した田中さん。
「これは、やりきった!」と言えるものがまだ見つかっていなくて、自分の武器を1つでも作りたいと思い、島に残ることを決めました。
━総務として…
田中さん:
これまで財団で働いてきて、前線で活躍する財団スタッフが安心して働ける環境を整えたいと思い、総務として財団に就職しました。
総務経理という仕事って正直、島じゃなくてもできる仕事かもしれないけど、島で総務経理として働くことで、若い人が島で働く、仕事の選択肢が広がるといいなと思っています。
田中さん:
現在、色々導入しているソフトとかサービスがあるんですけど、様々なツールを使ってみんなの仕事のタスクや進め方に、いいアウトプットがうまれる運用をしていきたいです。
財団には、教育事業部と地域事業部があります。
教育事業部は10年以上の積み重ねがあるけど、地域事業部はできたばかりで、まだ余地がある感覚。
その基盤づくりや他のスタッフが進み続けられる環境をつくることが今のモチベーションです。
手ざわり感が島の面白さ
━最後に島での暮らしについて聞いてみました。
田中さん:
前職は小売業だったので同期は何百人といて。名前と顔も知らない人がほとんどでした。
島に来てからは一緒に働く人が把握できるし、誰がどの事業所で働いていて、何をしているのかもわかる。
仕事で東京に出張したとき、「何者でもない感」をすごく感じて…。
どっちがいいとかはないけど、「ここに関わっているんだ!」とはっきり自覚して働けるのは、島で働く面白さだと思います。
田中さん:
新卒で島にくること、就職した会社を辞めて島にくることって、勇気がいることに思われがちだけど…
わたしは島にくることはあたりまえに存在する選択の1つだと思うし、どんな選択をしても、自分のやり方次第で面白くできるって思うんです。
自分で仕事を作ったり、暮らしを工夫してみたり。
それをまるっと楽しめたとき、島での仕事や暮らしも面白くなってくるんじゃないかな?と思います。
あとがき
経験や出会いもたくさんある。
島ならではの距離感は、自分と向き合える環境かもしれません。
そのきっかけから、暮らしを楽しめるかは自分次第。
働くという選択肢に「島」があってもいいのでは。
(R5年度 大人の島留学生:渋谷)
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