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大人が読んでも新鮮!低年齢から“性”の多様性を伝える英国発の性教育の絵本

この数年で関心が高まっている性教育。思春期からで十分では?と思いがちですが、ユネスコの「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」では就学前から始めるべきとされています。でも、どこから伝えていいのか、いつ伝えればいいのか。難しいですよね。
今月発売の『ようこそ!あかちゃん せかいじゅうの家族のはじまりのおはなし』は、英国で5〜7歳以上の子ども向けに作られた絵本です。妊娠から出産までのプロセスを科学的に解説すると当時に、性や家族の多様性を最大限に尊重した描きかたになっています。大人が読んでも目を開かされる、その魅力を綴った「訳者あとがき」を公開します。

 性は、人間が人間らしく生きること(人権)にかかわります。性教育はからだのしくみを学ぶだけではありません。人間関係や、社会における性の問題まで、とても幅広い内容を含みます。ユネスコの性教育のガイダンスでは5歳から、WHOでつくられた性教育のスタンダードでは0歳から、性にかんする教育をはじめるべきとされています。誤った性の情報がメディアや社会にあふれているなかで、子どもたちの性を学ぶ権利をどのように保障するかが、おとなに問われています。

 この絵本はイギリスで、5歳から7歳の子どもを対象につくられました。対象が子どもでも、科学的に正確な事実をわかりやすく伝えていることが大きな特徴といえます。つまり、嘘やごまかしがありません
 子ども向けの絵本は、わかりやすくと考えるあまり、社会のさまざまな思い込みが隠れていることがあります。たとえば、精子や卵子が擬人化されていたり、精子が「泳ぐ」、卵子が精子を「待っている」といった表現です。卵子がドレスを着たお姫さま、精子が勇ましい王子さまとして描かれている絵本や教材もあります。こうした表現は、隠れたメッセージを子どもに伝えていないでしょうか。おとな自身が、すりこまれた思い込みや偏見に気づく感性を磨きながら、いっしょに考えていきたいものですね。

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 もうひとつの特徴は、イラストの描きかたやことばの選択においても、あらゆる多様性が意識され、解釈がひらかれているという点です。さまざまな肌の色や髪型、洋服やおもちゃ、見た目。障がいを持った人、さまざまな家族のかたちや誕生死にもふれています。絵本を開くたびに、また読み手のアンテナが高くなるにつれ、新たな発見があることでしょう。

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 ぜひ、子どもたちといっしょに探してみてください。子どもの「みつけた!」や「なんで?」に、おとながどのように寄りそうかも重要になってきます。子どももおとなも、いろんな性や家族のありかたの可能性を想像することで、自分のからだやこころとの向きあいかた、他の人とのかかわりあい、そして社会のとらえかたを広げていけるはずです。
 絵本をどのように読むかは読み手の自由です。子どもがひとりで、友だちと、おとなと子どもで、あるいは、おとながひとりで、おとなどうしでも読んでもらいたいと思います。本書が、人権としての性を学ぶ出発点となることを心から願っています。

浦野匡子(うらの まさこ)和光幼稚園教諭。“人間と性”教育研究協議会「乳幼児の性と性教育サークル」所属。
艮 香織(うしとら かおり) 宇都宮大学教員、“人間と性” 教育研究協議会幹事。 



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