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【大月書店通信】第167号(2022/12/26)

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今月16日、岸田内閣は、「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略」「防衛力整備計画」の「安保3文書」を閣議決定しました。

これは、「敵基地攻撃能力(反撃能力)」をもつミサイルの配備、5年後に防衛費GDP2%を達成することなど、憲法9条のもとで「専守防衛」を掲げてきた日本の安全保障政策を大転換させるものです。そのような重大なことが、十分な議論もなく、あっさりと決められ、世界第3位の軍事大国へと舵が切られようとしています。

すでに沖縄の南西諸島では、ミサイル基地の配備が着々と進んでいます。県民の4人に1人が犠牲となった沖縄戦の傷跡が、いまだ残るその地で。

今月の新刊『沖縄 戦火の放送局――軍隊に飲み込まれたラジオ』は、沖縄戦で壊滅した最後の沖縄放送局長が残した手記をたどり、軍隊とともに戦争へと突き進むメディア・放送人のありようを描いた作品です。

著者の渡辺考さん(NHK沖縄チーフディレクター)は、「これは決して遠い他人事の話ではない」「権力が牙をむき、戦争が始まってからでは、遅い」のだと記します。

報道を通して戦争の悲惨さを目の当たりにする今、私たちは日本の過去をもう一度見つめ直す必要がある、と強く思います。

☆年末は12月28日(水)まで、年始は1月5日(木)から営業いたします。来年もどうぞよろしくお願いいたします。

【新刊案内】

12月の新刊です。お近くの書店にてお求めください。

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●金平茂紀さん推薦。「報道にたずさわる一人の人間として、泣いた」
沖縄 戦火の放送局――軍隊に飲み込まれたラジオ
渡辺考[著] 2,200円(税込)

太平洋戦争開戦とともに始まった沖縄の放送局。その最後の放送局長・岩﨑命吉の手記が発掘された。情報戦を担い日本軍と一体化していく姿を映し出したBS「沖縄 戦火の放送局」にさらに取材を重ね、戦時下のメディアにせまる。

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●《たちまち重版》36年間、患者を診てきた医師が語る真実
水俣病と医学の責任――隠されてきたメチル水銀中毒症の真実
高岡滋[著] 2,970円(税込)

多くの患者が放置され、今なお裁判が続いている水俣病。この苦難は国に取り込まれた医学者の不作為によって生まれ、それはまた医学の歪みをもたらしてきた。水俣病に関わった専門家の誤りをただし、水俣病医学の空白を埋める。

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●車椅子から、生命に対する暴力にNOと言う
このからだが平和をつくる――ケアから始まる変革
安積遊歩[著] 1,760円(税込)

生命に優劣をつける優生思想も、戦争も根は同じ。「争えない体」を持つ私たちが生きること、それ自体が平和への歩み――。障害当事者として、女性として、親として、果敢に街に出、発言してきた著者が語る車椅子からの平和論。

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●50周年・通巻300号記念画 メディアを志す人のために50人が薦める50冊
放送レポート1月号 no. 300 550円(税込)

●メディアを志す人のために50人が薦める50冊(上)●前川喜平さんインタビュー 市民とともに歩むNHK会長を●なぜ今「男性学」なのか(ゲスト・せやろがいおじさん)●「霊感商法」を、私はこう取材した(藤森研) ほか

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●特集=「特別支援教育」はすべての学びの場で
月刊 クレスコ1月号 no.262 550円(税込)

国連から日本政府に対し、「特別支援教育」は「分離した教育」だとして中止を求める勧告が示され、議論が起こっている。障害のある子どもの権利を保障するため、「特別な」場だけではない「特別支援教育」の充実を考える特集。

【話題の本】

★ 岸本聡子『地域主権という希望』1月刊行! ★

草の根の選挙運動によって「奇跡」とも言われる当選を果たした杉並区長・岸本聡子さん。ヨーロッパの市民運動の世界から、日本の自治体行政に分け入って挑戦を続ける岸本さんの新著を、1月に刊行いたします。

地域主権という希望――欧州から杉並へ、恐れぬ自治体の挑戦
岸本聡子[著] 1,760円(税込)

世界各地で起きている自治体からの変革=ミュニシパリズムの実例を紹介。新自由主義による地域経済と政治の劣化に歯止めをかけ、足元から公共と民主主義を再生する希望の指針。お近くの書店でご予約ください。

★ トランスジェンダー差別を考える。『朝日新聞』で2冊紹介 ★

『朝日新聞』(12月17日)読書面で、『トランス男性によるトランスジェンダー男性学』(周司あきら 著)と『差別はたいてい悪意のない人がする』(キム・ジヘ 著、尹怡景訳)が紹介されました。

いずれも高い評価を得ている自信作です。ぜひお読みください。

★ 『デジタル・シティズンシップ プラス』が今年の10冊に ★

4月に刊行した『デジタル・シティズンシップ プラス――やってみよう! 創ろう! 善きデジタル市民への学び』(坂本旬ほか著)。東洋経済education×ICT編集部が選ぶ今年の10冊に入りました。

姉妹篇の『デジタル・シティズンシップ』(2020年)と併せてご一読ください。

★ 『ヨノナカを変える5つのステップ』書評・紹介記事続々 ★

9月に刊行した『ヨノナカを変える5つのステップ――マンガでわかるコミュニティ・オーガナイジング』(鎌田華乃子 著、沢音千尋 漫画)。書評・紹介記事が続々と出ています。

『朝日中高生新聞』(10月9日)、『月刊生徒指導』(10月13日)、『しんぶん赤旗』(10月23日)、『全国商工新聞』(11月21日)、『日本教育新聞』(12月5日)、『月刊全労連』(2023年1月号)、『民医連医療』(2023年1月号)などなど。

仲間とつながって変化を起こす具体的な方法をマンガで解説。ぜひご一読を!

★ 『地域でつくる・地域をつくる メディアとアーカイブ』受賞 ★

4月に刊行した『地域でつくる・地域をつくる メディアとアーカイブ』(松本恭幸 編)が、デジタルアーカイブ学会の第4回学会賞を受賞しました。

コミュニティ・メディアの先進事例を多数紹介した本書は、専門家以外の方々が読んでも大変おもしろいと思います。ぜひご一読ください。

【イベント】

★ 安積遊歩×荒井裕樹 「非力さ」を変革の手がかりに ★

新刊『このからだが平和をつくる――ケアから始まる変革』(安積遊歩 著)の刊行記念トークイベントです。

車いす利用者として果敢に街に出ることで「障害者が当たり前に街で暮らせる」社会をつくってきたと自負する安積遊歩さん。その半生を振り返る新著の刊行を記念して、障害者運動の経験と文学をつなぐ著作で注目される荒井裕樹さん(二松学舎大学文学部准教授)と対談いただきます。

★ 岸本聡子『地域主権という希望』刊行記念トークイベント ★

「話題の本」欄でも予告した、岸本聡子さんの近刊『地域主権という希望――欧州から杉並へ、恐れぬ自治体の挑戦』の刊行記念イベントです。

  • 日時:2月4日(土)13時00分~14時30分

  • 会場:今野書店(東京都杉並区、JR「西荻窪」駅徒歩1分)

  • *配信あり

詳細は決定しだい大月書店ウェブサイト等でお知らせします。
どうぞお楽しみに!

【お知らせ】

★ 「君も本棚を作ってみないか?」(田野大輔)連載開始! ★

ファシズムの教室――なぜ集団は暴走するのか』でお馴染みの田野大輔さんによるウェブ連載が、大月書店noteで始まりました。

「君も本棚を作ってみないか? 研究者のための本棚自作マニュアル」

歴史研究者がなぜ、本棚づくりに没頭するに至ったのか。本棚自作がもたらす効用や、具体的な製作手順を解説していきます。

早くもSNS上で大反響! ぜひご注目ください。

【編集後記】

暮しの手帖社にはキッチンがあって、レシピを紹介する際は編集者が本当に調理して確認していると聞きましたが(今もそうなのかな?)、いよいよ私も本棚を作る日が来たようだ……。(Q)

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