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「夜の案内者」青い娯楽6

 町の外に出て、来た時と同じように布をくぐり、砂丘を登りながらアサは聞く。
「それ、どうするの?」
「猫さんたちの町を覚えてますか?」
「猫って腎臓養殖の?」
「はい」
 ネズミがもらってきた液体は培養液なのだという。細胞を育てるのに使われるような液体なら、腎臓を育てるのにも使えるんじゃないかと思い、もらってきたようだ。
「使えると思いますか?」
「その前に送れるの、それ?」
「車掌に聞いてみます」
「そっか、使えるんじゃないかな」
「本当ですか?」
「使えるよ。うん、まぁたぶん、きっと。絶対」
 培養液の瓶を胸に抱えて砂の山を登るネズミを振り返りながら、アサは恋人たちの姿を思い出す。彼らの最期は幸福だったのだろうか。

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小説投稿サイト「エブリスタ」で連載中の「夜の案内者」の転載投稿です。
物語のつづきはエブリスタで先に見られます。

▼夜の案内者(エブリスタ)
https://estar.jp/novels/25491597/viewer?page=1

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