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「アマゾン」の「あとで買う」機能がとても便利な話

▼新刊本を買う時、アマゾンの「あとで買う」機能はとても便利だ。「あとで買う」の一覧が、たとえ100冊を超えても、筆者のデスクトップで閲覧すると、1列に8冊の表紙が並び、次々と眺めることができて、とても一覧性が高い。

▼アマゾンの「この商品を見た後に買っているのは?」機能なども、思いもよらない本が出てきて、面白い。それらのなかで、気になったものを「カート」に入れて、「あとで買う」ボタンを押せば、あっという間に「買いたい本一覧」に追加されるわけだ。

▼尤(もっと)も、実際に本を買うのはアマゾンではない。使うのは「あとで買う」機能のみ。実際に買うのは、たとえばhontoというサイトで最寄りの丸善やジュンク堂書店に取り寄せたり、神保町まで足を運んだ際に東京堂書店や書泉グランデ、仮店舗の三省堂書店に寄ったりして買う。

「あとで買う」機能のあるアマゾンは、本屋での時間を価値的に過ごすための下調べとして、最強の道具だ。

▼hontoも、マイページで本のリストをつくることができるが、一覧性ではアマゾンに到底かなわない。すぐにつくれる「ほしい新刊本リスト」の一覧性を比べると、現時点でアマゾンにかなうサイトは見当たらない。

▼ただし、hontoにあってアマゾンにない、とても便利な機能がある。該当する本をクリックすると、「ブクログ」と「読書メーター」のレビューを、両方とも見ることができるのだ。

両サイトのレビューは、おおむねアマゾンのものよりも質が高い。hontoを使うことによって、ブクログと読書メーターとアマゾンレビューとを簡単に眺めることができるので、重宝している。

▼アマゾンの「あとで買う」の一覧性の高さは至便なのだが、筆者にとっては、「実際の本屋で棚を眺めた際の一覧性」には到底、及ばない。

幸い、翌日や当日に取り寄せなければならない本など、まず存在しない。だから、買いたい本は、本屋で買う。

▼アマゾンでつくった一覧を眺め、その本を本屋で買うと、「おや?」と違和感を覚えることが、たまにある。新刊本なのに、そっちとこっちで値段が違うのだ。本屋で買う値段よりも、アマゾンでの値段が高くなっている。

これは、正確にいうと筆者の勘違いで、いくつかの出版社はアマゾンを使っていないから、別の業者が、その出版社の本をアマゾンで値段を吊り上げて売っているのだ。

ふだんアマゾンしか見ておらず、注意力散漫な消費者は、まんまとひっかかってしまうだろう。

▼最近の本でいうと、水声社からイーゴリ・エヴラームピエフ著『ロシア哲学史』という素晴らしい本が出た。8800円。

これがアマゾンだと、12540円プラス配送料350円で、「新品」として売っている。

この、「新品」というのが、ミソだ。

▼もう一冊挙げておくと、花鳥社から『よみがえる与謝野晶子の源氏物語』。神野藤昭夫著、4180円。この本の場合は、「ほぼ新品」として、5177円プラス配送料256円で売っている。「新品」になると、7645円プラス配送料350円だ。
(いずれも2022年9月4日現在)

要するに、水声社や花鳥社はアマゾンで本を売らないから、別の業者がアマゾンで「新品」として出品しているわけだ。

だから、「これは出版社が売っている新品だ」と間違えて、定価の9割増とか、4割増とか、3割増とかの値段で買ってしまう人も出てくるだろう。引っかけたほうは得をして、引っかかったほうは損をする。

もちろん合法だが、ずいぶんと強欲な商売だ。筆者がアマゾンで本を買わない理由の一つである。

▼ちなみに、古本を探す際にも「アマゾン一択」という人が小誌の読者にいるかもしれないので、別の選択肢を提示しておく。

▼現下のウクライナ戦争の背景を読み解くために、ブレジンスキー著『地政学で世界を読む』(日経ビジネス人文庫)は、とても価値のある一冊だ。

本書は2003年の出版で定価880円。この名著をなぜ版元が品切れにしているのか事情はわからないが、アマゾンだと6000円で売っている。

数日前、「日本の古本屋」では500円(プラス送料)で売っていた。ただし、すでに売れてしまったので、買えた人はラッキーだった。

▼こうした本は、図書館の検索サイト「カーリルローカル」で探せば、だいたい借りられる。また、「日本の古本屋」になくても、ヤフオクやメルカリでひょっこり安価で見つかる場合もある。

それでも入手できない場合、もしくはどうしても現物を入手しなければならない場合もある。その場合、この本については、アマゾンで6000円で買わなければならないが、そうした例はごく稀(まれ)だろう。

▼本を手に入れる、という営みは、10年前と比べて想像もつかないくらい多様になった。しかし、多様になると案外、一強があらわれたり、寡占されたりして、逆に選択肢が貧しくなる場合もある。

道具を使っているようで、道具に使われていることが増えないように、気をつけたい。

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