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パンデミックの将来シナリオーー「すべての国が安全になるまで、どの国も安全になれない」件

▼産業医の辻洋志氏が、ツイッターで、国際学術会議(ISC:International Science Council)がランセット誌で発表した論文

COVID-19パンデミックの将来シナリオ

(「Future scenarios for the COVID-19 pandemic」

2021年2月16日)

を要約してくれていた。

▼とても簡潔にまとめてくれている。

もとの論文を、DeepLで読んでみた。

https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(21)00424-4/fulltext

著者の代表はDavid Skegg,Peter Gluckman,Geoffrey Boulton,Heide Hackmann,Salim S Abdool Karim,Peter Piot

▼ポイントは、

「すべての国が安全になるまで、どの国も安全になることはできない」

という点に尽きる。今は、これができない。自国中心主義ーー国粋主義が、最悪の道をつくる。

数少ない具体的な突破口が、「COVAX(コバックス)ファシリティー」という枠組みだ。日本は率先して取り組んでいる国の一つであるが、残念ながら、あまり日本に住む人に知られていない。

▼さて、ランセット論文で筆者が気になったところを抜粋。適宜改行と太字。

COVID-19ワクチンは多くの国で展開されていますが、これは危機が解決に近づいていることを意味するものではありません。パンデミックが新たな段階に入っただけです。

多くの要因がパンデミックの全体的な結果を左右します。ワクチンを提供する際に、グローバルなアプローチではなく、国粋主義的なアプローチをとることは、道徳的に間違っているだけでなく、すべての国が安全になるまで、どの国も安全になることはできないため、(国境管理の緩和を含む)「普通」のレベルに戻ることを遅らせることになります。

SARS-CoV-2は、犬猫を含む多くの動物に存在していること、ワクチンの接種率が不完全で、免疫学的防御の程度にばらつきがあることなどから、おそらく世界的に根絶することはできないだろう。

悲観的なシナリオは、SARS-CoV-2の亜種がワクチン免疫を逃れる能力を持って何度も出現し、高所得国だけが迅速に適合ワクチンを製造して何度も集団再接種を行い、国家的な制圧を目指す一方で、その他の国は繰り返し出現する亜種や新たに流通するウイルスに十分な効果を持たないワクチンに苦慮するというものです。

このようなシナリオでは、たとえ高所得国であっても、おそらく大流行が繰り返され、社会やビジネスにおける「正常性」への道のりははるかに長くなるでしょう。

www.DeepL.com/Translator(無料版)で翻訳しました。

▼まず著者らは、「ワクチンが世界各地に展開しているが、だからといってパンデミックの解決に近づいているわけではない」と明言する。

▼そして「新型コロナウイルスの根絶は不可能だ」と言っている。

▼さらに、楽観的なシナリオと悲観的なシナリオがあって、ここでは悲観的なシナリオだけを紹介しっておくが、その主人公は、ナショナリズム、自国中心主義、一国至上主義、国粋主義、表現は何でもいいが、要するに「自国を優先させる」国家の動きである。

▼その近未来を、この論文は正確に言語化している。筆者は、これには説得力があると思った。その箇所を再び要約すると、

1)変異株(いま日本で流行し始めている)が何度も出現し、

2)金持ちの国だけが何度もワクチンを改良・確保して自国民に繰り返し接種するのだが、

3)金持ちでない国は、能力不足のワクチンしか持てず、さらに困窮する、

というシナリオだ。

ワクチンの第一弾、第二弾が普及し始める、という現段階は、間違いなく希望なのだが、希望の始まりと言ったほうが正確かもしれない。ランセット論文では、とにかくコロナ対策は長く続く、という見通しを繰り返している。

▼現下の日本政府は、とてもそこまで考慮して手を打っているとは思えないが、その現状を批判することは容易(たやす)い。

いっぽう、支えることは難しい。

今は、支えるべき時であると考えている。

(2021年3月22日)

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