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冬は最も生きていることを実感する季節である。

我々は秋に身を鮮やかに染め上げた木々が、その蓄えた艶治をそのままに末枯れ死にゆく様を生に見る。

冬は死に満ちている。
春に揚々と咲き誇るのを予感させて、生命は美しく甦る為に死ぬ。
こうして、死が冬の乾固の芸術を作り出す。

我々は、冬を充満する死を観察し、それによって我が生を実感するのではないだろうか。
この生命の動揺は、極めて繊細に、潜在的に我々の生を揺らしているのではないか。

だが、今年は冬というものをあまり感じられていない。
自粛にあって、季節から隔たった箱の中で、のうのうと日が過ぎるのを待っている。

冬にあっては、死が我が身を侵食するのを決死に守らねばならない。
だが、今の状況においては、より安全なシェルターに守られている。

死が遠く、故にまた、生も遠い。

私の時間は極めて懶惰だ。

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