【エッセイ】死に値しない命

文章は詐術である。そして対話は暴力の萌芽である。
支配欲は暴力の源泉だ。
暴力の最終目標は敵を殲滅し容赦なく奪い去ること。

直截的な肉体的接触は暴力を誘発する。剥き出しの欲動を無策のまま放置すると歯止めが効かず敵味方の区別なく全滅への路を突き進む。

文明でも文化でも「夾雑物」として存在している。人類規模の破滅を防ぐためにである。

言語は直截的な肉体的接触を回避するための緩衝材だ。肉体的暴力の優劣を言語は妨げる。第三者に対しても言語で表明したことを理解させることが可能になるからだ。

貨幣も暴力を回避する手段といえる。貨幣の前では暴力の優劣だけで商品が往来することはなくなるから。

さて、媒介となるものの条件は価値中立であること。「善悪」や「正義と悪」などの道徳的価値の軽重を媒介として持ち出すと潜在的に暴力が埋められる。
正しく「地雷」である。