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Project / SIDE B 018 : 薄羽

薄羽

かつて「東国随一の駿馬」と噂された栗毛がいた。名を薄羽(うすばね)という。今も半島の名として残る一族の棟梁で、源頼朝の右腕ともなった三浦義澄が愛馬であった。義澄は伊豆で挙兵した頼朝に従って奮戦するも、平氏方の畠山重忠、江戸重長らが本拠の衣笠城に押し寄せると、城を捨て、海を渡り、安房国(千葉県)へと落ちのびんと画策する。浜に小舟を五艘繰り出し、義澄もそのひとつに乗り込んだ。畠山の追手が迫り、一刻も早く船を出したいが、肝心の義澄がこの期に及んで「薄羽を引いてこよ、船に乗せよ」という。側近の長井某が必死に諫めるも、義澄は頑として聞かない。と、その時、火の手の上がる衣笠城の方角より鋭いいななきとともに駆け参じたるは、栗毛の薄羽。傍らに美しき月毛の牝馬を従え、東国一の名に恥じぬ威風堂々たる姿である。薄羽は義澄の前でぶるると鼻を鳴らし、主に深く首を垂れると、月毛の牝馬を伴い波穏やかな相模灘にざぶんと身を投じた。次第に遠く消えゆく薄羽の姿を見て、義澄は涙ながらに「われ東国一の忠臣を得たり」とつぶやいたという。そんな言い伝えを元に、このメリーゴーランドが作られたのである。

Photo by Kentaro Kamata (His FB page)

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