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どうやって肥やしなんか思いついたんだろう

 地元は田舎で畑が当然のようにある土地柄です。そして、畑には肥やしが当たり前にある。肥料と言えば肥料なんですが、材料は往々にして生き物から出てくる例のあれです。肥やしの山のそばを通り過ぎようもんなら、かぐわしいにおいが私の鼻を殴りにかかります。作物を育てるのに大切なものとは言え、科学技術が進んだ今でもどうにもならないことなのか、畑は毎年のようにかぐわしくなっていました。

 先日もジョギングをしていると、嗅いだことのあるにおいに鼻を殴られました。ええ、肥やしが近くの畑でこんもりとしていました。そんな久々のパンチでふと疑問が浮かんだのです。繰り返しになりますが、肥やしは肥料とは言え、材料は往々にして生き物から出てくる例のあれです。それを畑にまこうだなんて、今はみんな効能を知ってますから何とも思いませんが、知らないうちからそんなことする人を見たらどうかしてると思うでしょう。

 そもそも肥やしの起源はいつなのか。軽く検索してみましたが、分かりませんでした。衣食住のように人間の暮らしの根底にあるものの起源を調べると、往々にして文字のなかった時代までさかのぼってしまうようです。文字がなければ記録が残らない。そのため、遺跡やそこから出てくるもので推測するしかなくなり、正確な情報が分かりづらくなる。起源もぼんやりとした予想に留まってしまいます。

 人類の食を支える農業もまた同じで、軽く検索をかけるだけで最古の農業の痕跡は23000年前とかものすごい情報が出てきます。最初期の文字が6000年くらい前に出てきたそうなので、文字通り桁が違います。肥やしを思いついた猛者の名前なんてとっくに歴史の彼方へ消え失せているのでしょう。

 もう想像するしかありません。例えば、例のあれの処理に困ったどこぞの面倒臭がり屋が畑に埋めて誤魔化した。しばらくして、誤魔化したポイントに生えた雑草が周囲に比べ、やたらとよく育ってることに気づく。「こりゃいけるんじゃね」ということで、思い切って畑の土に例のあれを埋めてみたところ作物が育つ育つ。そして、みんなに教えて肥やしの誕生となった。

 こんな想像もできます。ある日、仲の悪い隣の農家が自分の畑に穴を掘って、あろうことか例のあれをプリプリ投下した。そして、家に来てこう言うわけです。「お前の畑に例のあれをプリプリしてやったぜ。しかも、お前のクワでしっかり耕したからもうどこからどこまでが例のあれか分からないぜ。ぐわっはっは」。腹を立てるもどこに例のあれがあるのか確かに全く分からない。仕方なく悔しさを噛み締めて作物を育てるも、なんかいつもより豊作になった。あれ、ひょっとして。今度は自分で畑に例のあれをプリプリして耕すとまた豊作。こりゃいけるぞと思い、みんなに教えて肥やしの誕生となった。

 こんなのでしか歴史のロマンを感じられないのが私の悪いところです。

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