親と子のコミュニケーションは、その子が産まれた瞬間からはじまります
この間、電車の中でこういう光景を見かけました。
ちょうど空いていた時間帯だったので、私は奥の座席に座っていました。
ひとりのお母さんが乗ってきて入口のすぐ脇に座って、子どものベビーカーをそのまま扉の方に向けて置きました。
子どもは靴を履いていましたから、もう3歳ぐらいになっていましたね。
15分ぐらい私はずっと見ていたのですけれども、お母さんはその間、何をしていたと思いますか?
ずっとスマホをやっていたのです。
子どもはどうするかなと思ったら、座ったまま、まっすぐ前を向いてじっとしているんです。
寝てないんですよ。
扉のほうをまっすぐ向いてじっと座っていてね。
その扉には何もなくて、広告のこんな小さなのが張ってあるけど、あとは何もないんです。
それでもその一点を見てじっとしてるんです。
そういう子ってありえますか?
普通はああしたり、こうしたり、あっちを見たりこっちを見たりね、周りにもお客様もいるわけですから。
お母さんの方も見ないし、お母さんも声もかけない。すごく不思議に思いました。
よっぽど私声かけようかと思ったけど、私はすぐ降りるから、そのときは声をかけませんでした。
普段は声かけるんですよ。電車の中でも私はかけちゃう。見てられなくなっちゃうからね。
そういうお子さんとお母さんの関係があって、子どもが直ぐ傍にいるんだけれど、子どもの世界と自分の世界が違うお母さんがいるっていう事ね。これ、関係学でいうと「外在」なんです。別々なんです。
この親子の場合、せっかく外に来てね、いろんな人との出会いがあるのに、そういう出会いのチャンスの時に、子どもが人からなにか声かけられるとか、自分から何かに働きかけるとか、そういうことの経験もホントに少ないんじゃないかと思います。
なんでじっとしてこうやって座っていられるのかなって思いませんか。
そういう生活に慣れちゃっているのだと私は思います。
そういう外接関係のまま3歳まで育っちゃうと大変ですよ。
いろんなものに興味を持ったり触ってみたり、そういう要求があるから赤ちゃんは泣くのでね。
お母さんはその要求を満たしてやるでしょう、いつまでも泣いていたら困るものねぇ。
いつも赤ちゃんはこうやって泣いて知らせるじゃない。それがすごく大事なこと。
泣いている赤ちゃんとか、今お話しした親子の関係なんか、お母さんが子どもにいろいろ語りかけをしないと、子どもはお母さんに期待しなくなるんです。
何かして欲しいって要求も出さなくなる。それは赤ちゃんの時からからスタートしているんですよ。
去年の6月に生まれた私の孫には、いっぱい声かけてあげてねって、お嫁さんには言っています。
おむつ取り替える時も、おっぱい飲ませている時も、お母さんはここにいるよって感じでね。
「ちゃんと子どもの目を見てね。その時こそしっかり子どもと向き合える時間なのだから」と言って。
会ったらすごくよくそれをやっていて、パパも一所懸命声かけて話をしてる様子をしょっちゅう見ます。
そうすると、人に対する反応が違う。
私が見ると、私が何か言ってもすぐニコって笑ってきます。
ニコって笑ってくれる子はすぐに可愛くなるでしょ。
お母さんが働きかけないと子どもはニコって笑い返さないんですよ。その練習をしていないといけない。
この赤ちゃんの時期は大事なんです。その時期に子どもとお母さんの関係、人と人との信頼関係の基礎ができてくるんです。
(2020年2月11日講演会より#3)
(つづく)
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