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金網によじ登って動き回る4歳児

これは私が散歩をしていた時に出会った場面です。

あるお家の前を通りかかったら、金網の塀に子どもが乗ってですね。こうやって、あっち動いたりこっち動いたり、上ったり下りたり、いろんなことをして遊んでいて。
ママ友のようですが、その家に親子で遊びにきたような感じでした。

もう帰る時間なので、帰ろうって言ってるらしいんだけれども、嫌だって言って、なかなか素直に言うことを聞かないんですね。
それでその時、お母さんがなんて言ってたかっていうと、

「危ないから降りなさいっ!」。

もう次々にお母さんの言葉が飛び出して来て、それが私の耳に聞こえてきちゃったので、つい話しかけちゃったんですけどね。

「危ないからおりなさい!」「だめ!」「そっちへ行ってはダメ!」「ほら車がくるでしょう!」「だめ!」「おっこっちゃうよ!」「ダメっ」「もう行くよっ!」「行かないんなら置いて行っちゃうよ!」「ここにお泊りだからねっ!」

すぐにおさまらない様子だったので、ちょっとこれはほっとけないなって気持ちに私なっちゃって。それで、ちょっと声かけちゃったんですね。

「ここで遊びたくなっちゃったんだよね。面白いんだよね」
って私が言ったら、
「うん」って子どもが頷いてですね。
「楽しくって帰りたくないんだよね」って言ったら、
「うんーっ!」ていうんですね。

その子どもが今やってる、遊んでるっていうこの気持ちを、やっぱり共感することがすごく大事かな。受け入れるってそういうことなんで。

そしたら、私の顔を見てニコニコして
「うん、面白いんだよ」って言ってました。

お母さんと違うことを言ったので、ちょっと失礼かなと思ったので、私は実は親子育をやってるこういう者なんです、って名乗ってですね。
子どもが帰りたくなるような気持ちにするには、叱ったり怒ったじゃなくて、「ここに置いてっちゃうよっていうのは、お母さん嘘だよね、置いて行かないでしょ」って言ってね。

いくつ?って聞いたら4歳っていうので、
4歳の子どもにね、嘘ついちゃダメだよねって。

子どもはお母さんの言うことを信じなくなるし、実際に子どもはお母さんの言うことを聞いてないし、お母さんは子どもの目を見て話してない。

後ろから声をかけたり、横から声かけたりしていて、子どもと向き合って話していない。
「もう帰る時間だから帰ろうねって。でもこれすごく楽しくて面白いんだよねって。お家にこういう所ないしね」って。「じゃあ、あとどれくらいしたら帰ろうか?」とかね。

4歳になったら、だんだん時間の観念も出てくるので、
「あと5分位したら帰ろうね」とか、
「お母さん待っているから、帰る時間を決めて帰ろうね、教えて」
っていう風に言ってもいいと思います。
5分、10分の時間を待ち、見守るっていうことの余裕が欲しいと思います。

そんな風にして、ちょっと話ししたんですね。

そしたらなんと、そのママ友が、
「子どもってのはこういうものなのよ」
「子どものいう事など、いちいち聞いていられない。もう行くのよ!」
って、子どもをさっと抱き上げて、車の中に押し込んじゃったんです。

私はお母さんと話をしていたので、あっけにとられながら、それで終わりだったんですけどね。

だけど、そういう対応してると、やっぱり無理やりに子どもの意思に反することをやることになっちゃうので、子どもは大人を信頼しなくなるし、言うことを聞かなくなるということなんですよね。

だって自分の言うことを聞いてくれないんだもの。
自分のやりたいことを通す。人は誰でもそうでしょ。
やりたいことをやりたい、通したいじゃないですか。

そりゃ子どものは遊びだから、遊びなんていい加減に止めなさい、って大人は思うかもしれないけど、子どもにとっては大事な仕事と言ってもいいくらいのなのよね。

それなのに、子どもにそうやって嘘ついたり、脅かしたり、叱りつけて言うことを聞かせようってなると、その挙句、子どもはどうなっていくかということ。それを考えなければいけない。

お母さんが「しまったなぁ」と思って気が付いて変われば、子どもは変われます。すぐに変われるぐらい、変われます。

子どもが嬉しくなるような言葉をいっぱいかけて、そして子どものやりたいと思うことが存分にできる環境をできるだけ用意する。
 
もちろんできないことだってありますよ、環境を用意できないことだってあります。
それは、いろんな都合、生活のいろんなリズムで生活のルールありますから。ケジメもあるしね。
出来ないこともいっぱいあるけれども、それは親が一所懸命、子どもに説明することだし、子どももそれがわかって行動できる子になっていけばいいわけです。

3歳、4歳、5歳、6歳になったら、段々とそれができるようになります。だから6歳になって学校に行けるんです。

集団生活の中でルールを守って生活するっていう態度が身につくのが、6歳と思っていいと思います。
ですから、それまでは練習だと思って。
なんとかして言うことを聞かせようじゃなくてね。
練習していると思うと、いいと思いますね。

本人の意見を大事にする、自分はどうしたいのか。
私は、お母さんは、こういうふうにしたいんだけれども、あなたはどうしたいの。
どこまで行ったらできるの?とか、帰れるの?とか、そういうふうにして、自分で決めるっていう事を練習するといいと思います。

でも3歳4歳は、まだ、今目の前にある楽しいことに夢中になっちゃいます。
ただ、お母さんとの信頼関係が出来ていれば、段々、子どもは親の言うことを受け入れるようになると思いますね。それの練習だと思って。

やりたい気持ちを育てること。子どもがやりたいと思ってやっていることの中に、子どもにとって大切な育ちがいっぱいあるんですよ。

この金網によじ登るって、簡単に手がつけられてよじ登りやすいですよね。
まぁ危ないから見守ってなきゃいけないんだけれども、その遊びの中で、子どもにはバランスを取る力とか、金網を指でしっかりつかむ力とか、そういう力を本当に一生懸命使ってるんですよね。

木によじ登るのもそうですけれども、そういう遊びの中でしか培われない力だってあるので、そんなこともやりたい気持ちは尊重してください。
そこでダメなら、網をよじ登るような遊びもありますよね。そういうところへ行って遊ぶと、子どもはよじ登りたいんですから、喜んでやりますよね。

そうやって、子どものやりたい気持ちを満たすことをしていかなきゃいけないんじゃないかな、って思います。

(2020年11月講演会より#4)


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