○15章 令和エンタメとファンタジー ~パンドラの箱の中に本格は座しているか~

 長い旅も終わりが見えてくると寂しさを感じる。6年前が最近かなどは個人差が大きいだろうが、17~23年を今であるとして、そのトレンドを見ることで旅を終わるとしよう。

 まずは小説界の今に渦巻く濁流の中へ、いざ。

◆なろう系が見分けやすくなった乖離時代?◆


・2017~19年の小説戦線
「86-エイティシックス-/安里アサト」「戦闘員、派遣します!/暁なつめ」
「スーパーカブ/トネ・コーケン」
「通常攻撃が全体攻撃で二回攻撃のお母さんは好きですか?/井中だちま」
「キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦/細音啓」
「悪役令嬢なのでラスボスを飼ってみました/永瀬さらさ」
「痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います。/夕蜜柑」
「この勇者が俺TUEEEくせに慎重すぎる/土日月」「聖女の魔力は万能です/橘由華」
「最強の鑑定士って誰のこと? ~満腹ごはんで異世界生活~/港瀬つかさ」
「魔王になったので、ダンジョン造って人外娘とほのぼのする/流優」
「異世界のんびり農家/内藤騎之介」「異修羅/珪素」
「出会ってひと突きで絶頂除霊!/赤城大空」「物理的に孤立している俺の高校生活/森田季節」
「なぜ僕の世界を誰も覚えていないのか?/細音啓」「ぼくたちのリメイク/木緒なち」
「可愛ければ変態でも好きになってくれますか?/花間燈」
「自称Fランクのお兄さまがゲームで評価される学園の頂点に君臨するそうですよ?/三河ごーすと」
「てのひら開拓村で異世界建国記〜増えてく嫁たちとのんびり無人島ライフ〜/星崎崑」
「魔王の俺が奴隷エルフを嫁にしたんだが、どう愛でればいい?/手島史詞」
「最強魔法師の隠遁計画/イズシロ」「槍使いと、黒猫。/健康」
「たとえばラストダンジョン前の村の少年が序盤の街で暮らすような物語/サトウとシオ」
「失格紋の最強賢者 〜世界最強の賢者が更に強くなるために転生しました〜/進行諸島」
「俺だけ入れる隠しダンジョン/瀬戸メグル」「ポーション頼みで生き延びます!/FUNA」
「レベル1だけどユニークスキルで最強です/三木なずな」「十歳の最強魔導師/天乃聖樹」
「どうやら私の身体は完全無敵のようですね/ちゃつふさ」
「乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です/三嶋与夢」「暴食のベルセルク/一色一凛」
「せっかくチートを貰って異世界に転移したんだから、好きなように生きてみたい/ムンムン」
「異世界に飛ばされたおっさんは何処へ行く?/シ・ガレット」
「素材採取家の異世界旅行記/木乃子増緒」「望まぬ不死の冒険者/丘野優」
「勇者召喚に巻き込まれたけど、異世界は平和でした/灯台」
「転生貴族の異世界冒険録〜自重を知らない神々の使徒〜/夜州」
「竜騎士のお気に入り 侍女はただいま兼務中/織川あさぎ」
「七つの魔剣が支配する/宇野朴人」「錆喰いビスコ/瘤久保慎司」
「魔王学院の不適合者 〜史上最強の魔王の始祖、転生して子孫たちの学校へ通う〜/秋」
「三角の距離は限りないゼロ/岬鷺宮」
「日常ではさえないただのおっさん、本当は地上最強の戦神/相野仁」
「真の仲間じゃないと勇者のパーティーを追い出されたので、辺境でスローライフすることにしました/ざっぽん」
「ひげを剃る。そして女子高生を拾う。/しめさば」「継母の連れ子が元カノだった/紙城境介」
「キミの忘れかたを教えて/あまさきみりと」「公女殿下の家庭教師/七野りく」
「史上最強の大魔王、村人Aに転生する/下等妙人」
「異世界でチート能力を手にした俺は、現実世界をも無双する〜レベルアップは人生を変えた〜/美紅」
「航宙軍士官、冒険者になる/伊藤暖彥」「陰の実力者になりたくて!/逢沢大介」
「西野~学内カースト最下位にして異能世界最強の少年~/ぶんころり」
「僕のカノジョ先生/鏡遊」「魔導具師ダリヤはうつむかない 〜今日から自由な職人ライフ〜/甘岸久弥」
「新米オッサン冒険者、最強パーティに死ぬほど鍛えられて無敵になる。/岸馬きらく」
「日本へようこそエルフさん。/まきしま鈴木」
「魔眼と弾丸を使って異世界をぶち抜く!/かたなかじ」
「天才王子の赤字国家再生術〜そうだ、売国しよう〜/鳥羽徹」
「転生賢者の異世界ライフ 〜第二の職業を得て、世界最強になりました〜/進行諸島」
「察知されない最強職/三上康明」「地味な剣聖はそれでも最強です/明石六郎」
「ひとりぼっちの異世界攻略/五示正司」
「ハズレ枠の【状態異常スキル】で最強になった俺がすべてを蹂躙するまで/篠崎芳」
「出遅れテイマーのその日暮らし/棚架ユウ」「いずれ最強の錬金術師?/小狐丸」
「異世界で土地を買って農場を作ろう/岡沢六十四」
「出来損ないと呼ばれた元英雄は、実家から追放されたので好き勝手に生きることにした/紅月シン」
「穏やか貴族の休暇のすすめ。/岬」
「冒険者になりたいと都に出て行った娘がSランクになってた/門司柿家」
「二度転生した少年はSランク冒険者として平穏に過ごす ~前世が賢者で英雄だったボクは来世では地味に生きる~/十一屋翠」
「幼なじみが絶対に負けないラブコメ/二丸修一」
「世界最高の暗殺者、異世界貴族に転生する/月夜涙」
「最強出涸らし皇子の暗躍帝位争い 無能を演じるSSランク皇子は皇位継承戦を影から支配する/タンバ」 
「カノジョに浮気されていた俺が、小悪魔な後輩に懐かれています/御宮ゆう」
「一億年ボタンを連打した俺は、気付いたら最強になっていた 〜落第剣士の学院無双〜/月島秀一」
「元・世界1位のサブキャラ育成日記 〜廃プレイヤー、異世界を攻略中!〜/沢村治太郎」
「鍛冶屋ではじめる異世界スローライフ/たままる」
「悪役令嬢になんかなりません。私は『普通』の公爵令嬢です!/明。」
「リビルドワールド/ナフセ」「異世界転移、地雷付き。/いつきみずほ」
「千歳くんはラムネ瓶のなか/裕夢」「塩対応の佐藤さんが俺にだけ甘い/猿渡かざみ」
「探偵はもう、死んでいる。/二語十」「ライアー・ライアー/久追遥希」
「聖剣学院の魔剣使い/志瑞祐」
「英雄王、武を極めるため転生す 〜そして、世界最強の見習い騎士♀〜/ハヤケ」
「魔界帰りの劣等能力者/たすろう」
「クロの戦記 異世界転移した僕が最強なのはベッドの上だけのようです/サイトウアユム」
「友達の妹が俺にだけウザい/三河ごーすと」「処刑少女の生きる道/佐藤真登」
「お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件/佐伯さん」
「ここは俺に任せて先に行けと言ってから10年がたったら伝説になっていた。/えぞぎんぎつね」
「勇者パーティーを追放されたビーストテイマー、最強種の猫耳少女と出会う/深山鈴」
「実は俺、最強でした?/澄守彩」
「解雇された暗黒兵士(30代)のスローなセカンドライフ/岡沢六十四」
「本能寺から始める信長との天下統一/常陸之介寛浩」
「信者ゼロの女神サマと始める異世界攻略/大崎アイル」
「最強陰陽師の異世界転生記/小鈴危一」
「最弱テイマーはゴミ拾いの旅を始めました。/ほのぼのる500」
「ティアムーン帝国物語〜断頭台から始まる、姫の転生逆転ストーリー〜/餅月望」
「転生した大聖女は、聖女であることをひた隠す/十夜」
「もふもふを知らなかったら人生の半分は無駄にしていた/ひつじのはね」
「悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。/天壱」

 令和開始で区切ることも考えたが、昭和と平成でも区切らなかったし、刊行年のみのフォローで月は一切記載してないし、ということでまあ気にせずに行こう。

 WEB出身でないライトノベルからだが、創世記からの伝統的なライトノベル・ファンタジーというジャンルは完全にマイノリティ側になったと言っていいだろう。
 とはいえ壊滅したわけはなく、SFもの系譜と言える「86-エイティシックス-」「錆喰いビスコ」や、「ハリー・ポッター」をリスペクトしつつライトノベル味に仕上げた「七つの魔剣が支配する」、ライトノベル・ファンタジーの王道感に満ちた「キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦」などが出てきている。
 なろう系文化にも適応したライトノベルとでも言うべき枠からは「通常攻撃が全体攻撃で二回攻撃のお母さんは好きですか?」などが話題作となった。

 現代もの枠も、学園ファンタジー系より、ラブコメものや日常ものの方が強くなっているが、新しい傾向としてはスニーカー文庫が新文芸(ライト文芸)を取り込み始めたことだろう。
 新文芸は男性向けが苦戦し、女性向け特化にシフトしつつあったことは軽く触れたが、スニーカー文庫が受け皿として立候補した感がある。

 「キミの忘れかたを教えて」はそれまでのライトノベル的現代ラブコメものか、新潮社nex創刊時あたりのラインナップ作風かと問われれば後者になる作品だが、ライトノベルとして成功しヒットしている。
 もちろん「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」などの大ヒット作が切り開いたライトノベルらしい現代ラブコメものも強く、電撃文庫やガガガ文庫などからヒット作が出ている。
 どちらも受け入れられる体制が整ったというところだろうか。「スーパーカブ」のような、漫画界で長くブームとなっている少女と趣味と日常的ジャンルのヒット作も出てきている。

 そしてこの分野もWEB小説出身が増加してきている。このままWEB小説出身も見てしまおう。

 「ひげを剃る。そして女子高生を拾う。」「継母の連れ子が元カノだった」は「キミの忘れかたを教えて」とほぼ同期で同系統とも言えるスニーカー文庫のヒット作だが、カクヨム出身となる。
 カクヨムはKADOKAWAがオールジャンル対象でWEB小説の賞を設定して拾い上げていることもあってか、なろう系の王道と呼ばれる作風以外の投稿も比較的多く見られ、そこから出てきた作品たちだ。

 「カノジョに浮気されていた俺が、小悪魔な後輩に懐かれています」も初出は小説家になろうだが、カクヨムWeb小説コンテストを受賞している。他に「塩対応の佐藤さんが俺にだけ甘い」は小説家になろう出身となる。
 特徴としては、少年少女のボーイ・ミーツ・ガールものもあるが、社会人×学生や、社会人×学生×社会人といった大人が絡んでくる形が見られる。
 このムーブメントに対して特定の命名はまだされていない気がするので、何か小洒落たムーブ名をつけたい気はする。

 なろう系異世界転生ものは絶好調だ。書籍化されるペースとヒット率がとにかく凄まじい。「転生賢者の異世界ライフ ~第二の職業を得て、世界最強になりました~」「失格紋の最強賢者 ~世界最強の賢者が更に強くなるために転生しました~」などは大きくヒットした。

 なろう系は実はかなり細かくトレンドが変化している世界と言われており、異世界転生ものも初期からの変遷が多くみられる。
 ハーレム、スローライフ、食事系は初期から強かったが、追放系と呼ばれる一度突き放されてから相手側が後悔するカタルシス系の人気が急上昇していた。あとスローライフ系との絡みだろうが農業ものが強い。

 女性向けでは悪役令嬢ものが強いが、コバルト文庫時代や「アンジェリーク」の頃から続くロマンス系も安定している。またアジア系の宮廷を舞台したファンタジーものも変わらない人気という感じだ。

 ここに来て、ぱっとタイトルを見て伝統的ライトノベル出身ぽいな~と、なろう系ぽいな~の判別がしやすくなっている印象はある。
 その一方でライトノベル書下ろしの現代ものとWEB小説出身のそれは判別困難だ。なろう系がライトノベルの一部だ否だという議論の段階を超えて、概念として完全に独立・定着した証かもしれない。

◆熱狂期を越えて、次の10年はもうはじまっている?◆


・2020~23年の小説戦線
「楽園ノイズ/杉井光」「声優ラジオのウラオモテ/二月公」
「豚のレバーは加熱しろ/逆井卓馬」「転生王女と天才令嬢の魔法革命/鴉ぴえろ」
「スパイ教室/竹町」「VTuberなんだが配信切り忘れたら伝説になってた/七斗七」
「経験済みなキミと、経験ゼロなオレが、お付き合いする話。/長岡マキ子」
「夢見る男子は現実主義者/おけまる」「ひきこまり吸血姫の悶々/小林湖底」
「カノジョの妹とキスをした。/海空りく」「冰剣の魔術師が世界を統べる/御子柴奈々」
「転生したら第七王子だったので、気ままに魔術を極めます/謙虚なサークル」
「転生貴族、鑑定スキルで成り上がる ?弱小領地を受け継いだので、優秀な人材を増やしていたら、最強領地になってた?/未来人A」
「わたしが恋人になれるわけないじゃん、ムリムリ!(※ムリじゃなかった!?)/みかみてれん」
「やり直し令嬢は竜帝陛下を攻略中/永瀬さらさ」
「TRPGプレイヤーが異世界で最強ビルドを目指す ~ヘンダーソン氏の福音を~/Schuld」 
「俺は星間国家の悪徳領主!/三嶋与夢」
「ループ7回目の悪役令嬢は、元敵国で自由気ままな花嫁生活を満喫する/雨川透子」
「悪役令嬢ですが攻略対象の様子が異常すぎる/稲井田そう」
「白豚貴族ですが前世の記憶が生えたのでひよこな弟育てます/やしろ」
「勇者パーティーを追放された俺だが、俺から巣立ってくれたようで嬉しい。……なので大聖女、お前に追って来られては困るのだが?/初枝れんげ」
「ふつつかな悪女ではございますが ~雛宮蝶鼠とりかえ伝~/中村颯希」
「ギルドの受付嬢ですが、残業は嫌なのでボスをソロ討伐しようと思います/香坂マト」
「ユア・フォルマ/菊石まれほ」「わたし、二番目の彼女でいいから。/西条陽」
「男女の友情は成立する?(いや、しないっ!!)/七菜なな」
「転校先の清楚可憐な美少女が、昔男子と思って一緒に遊んだ幼馴染だった件/雲雀湯」
「お見合いしたくなかったので、無理難題な条件をつけたら同級生が来た件について/桜木桜」
「時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん/燦々SUN」
「クラスで2番目に可愛い女の子と友だちになった/たかた」
「王様のプロポーズ/橘公司」
「じつは義妹でした。~最近できた義理の弟の距離感がやたら近いわけ~/白井ムク」
「【朗報】俺の許嫁になった地味子、家では可愛いしかない。/氷高悠」
「サイレント・ウィッチ/依空まつり」「負けヒロインが多すぎる!/雨森たきび」
「現実でラブコメできないとだれが決めた?/初鹿野創」「義妹生活/三河ごーすと」
「佐々木とピーちゃん/ぶんころり」「神は遊戯に飢えている。/細音啓」
「才女のお世話 高嶺の花だらけな名門校で、学院一のお嬢様(生活能力皆無)を陰ながらお世話することになりました/坂石遊作」
「灰原くんの強くて青春ニューゲーム/雨宮和希」
「信じていた仲間達にダンジョン奥地で殺されかけたがギフト『無限ガチャ』でレベル9999の仲間達を手に入れて元パーティーメンバーと世界に復讐&『ざまぁ!』します!/明鏡シスイ」
「片田舎のおっさん、剣聖になる~ただの田舎の剣術師範だったのに、大成した弟子たちが俺を放ってくれない件~/佐賀崎しげる」
「竜殺しのブリュンヒルド/東崎惟子」「姫騎士様のヒモ/白金透」
「我が焔炎にひれ伏せ世界/すめらぎひよこ」
「左遷された無能王子は実力を隠したい ~二度転生した最強賢者、今世では楽したいので手を抜いてたら、王家を追放された。今更帰ってこいと言われても遅い、領民に実力がバレて、実家に帰してくれないから……~/茨木野」
「追放されたチート付与魔術師は気ままなセカンドライフを謳歌する。~俺は武器だけじゃなく、あらゆるものに『強化ポイント』を付与できるし、俺の意思でいつでも効果を解除できるけど、残った人たち大丈夫?~/六志麻あさ」
「わたしはあなたの涙になりたい/四季大雅」「ミリは猫の瞳の中に住んでいる/四季大雅」

 レーベル事情を補足しておこう。00年代から活動していたマッグガーデンが休止中だったレーベルをWEB小説対応型にリブートさせたマッグガーデン・ノベルズとして16年から参戦してきている。
 ライトノベル前夜にファンタジー系解説書を出して人気だったと紹介した新紀元社も16年にモーニングスターブックスを展開した。
 少年ガンガンから考えるとオタクエンタメ系出版社としては老舗なスクウェア・エニックスもWEB小説の書籍化事業に乗り出している。
 女性向けでは一二三書房のサーガフォレストからもヒット作が見られるようになっていた。

 WEB小説時代に新人賞の立場や価値はだいぶ変わったと言われているが、それでも大手の新人賞が持つ伝統と格式と実績はやはり強く、ファンタジア大賞を受賞した「スパイ教室」はレーベルの最前線を支えるヒット作となっている。
 「我が焔炎にひれ伏せ世界」はスニーカー文庫が12年ぶりに大賞を出したとして驚かれた。

 大型新人として注目されているのが四季大雅だ。「わたしはあなたの涙になりたい」で22年の小学館ライトノベル大賞を授賞し、「ミリは猫の瞳の中に住んでいる」で23年の電撃小説大賞金賞を受賞した。
 エンタメ史というのは10年後20年後に振り返ってはじめて見えてくるものも多いわけで、こういった大型新人の未来が実に楽しみではある。

 新しいムーブメントとしてはVTuberという概念の登場だろうか。「VTuberなんだが配信切り忘れたら伝説になってた」は声優がVTuberデビューする的なプロモーションを仕掛けてライトノベルと動画の連動が話題となった。
 動画連動といえば「じつは義妹でした。~最近できた義理の弟の距離感がやたら近いわけ~」「義妹生活」はそれぞれYouTubeの動画チャンネルが原作であり、これも新しい書籍化の形と言えるだろう(※85)。

 「追放されたチート付与魔術師は気ままなセカンドライフを謳歌する。~俺は武器だけじゃなく、あらゆるものに『強化ポイント』を付与できるし、俺の意思でいつでも効果を解除できるけど、残った人たち大丈夫?~」は、SNSで特殊な盛り上がりを見せた作品だ。
 話題となったのはコミカライズの方であり、原作には存在しない大胆すぎるアレンジが強烈にもほどがあるはっちゃけ系として話題になった。原作者公認とのこと。

※85 一般書籍界でもゆっくり解説と呼ばれる雑学解説動画がヒット→商業書籍化などのムーブメントが起きている。一例としては奇書の世界史 歴史を動かす“ヤバい書物”の物語など

 WEB小説では、アマチュアが小説を投稿し人気が出て出版社からスカウトされデビューという型とは異なるムーブも出始めている。プロとして実績がある作家がWEB小説投稿サイトで新作連載を開始するという動きだ。
 ヒットから遠ざかっているベテランが復活を期して挑むパターン、書籍化前提で先行公開という形で連載するパターン、書きたいから書いているパターンなどがあるようだ。

 23年夏現在は悪役令嬢もの(女性向け)とはまた異なる、なろう系全体としての令嬢ものブームなんて話も聞こえてきている。
 しばらくお嬢様時代が続くのかもしれない。 

 なろう系バブルは現在進行形で継続中とも、熱狂期は過ぎたとも言われている。どちらが正しいかは時が経たねばわからぬだろうが、ライトノベル誕生、セカイ系、ポストセカイ系、なろう系と見てきた変遷のサイクルから何かを見出すなら、そろそろまた時代を変える何かがビックバンしてきそうな気がしないでもない。

◆ライトノベルファンの盲点となった独立世界◆


・2017~23年のボカロ小説
「あの夏が飽和する。/カンザキイオリ」「ベノム 求愛性少女症候群/城崎」
「グッバイ宣言/三月みどり」「嘘つき魔女と灰色の虹/そらる」

・2017~23年の新文芸(ライト文芸)
「君は月夜に光り輝く/佐野徹夜」「キネマ探偵カレイドミステリー/斜線堂有紀」
「ひとりぼっちのソユーズ/七瀬夏扉」「Hello,Hello and Hello/葉月文」
「すみれ荘ファミリア/凪良ゆう」「後宮の烏/白川紺子」
「威風堂々惡女/白洲梓」「15歳のテロリスト/松村涼哉」
「それってパクリじゃないですか? ~新米知的財産部員のお仕事~/奥乃桜子」
「蟲愛づる姫君の婚姻/宮野美嘉」「今夜、世界からこの恋が消えても/一条岬」
「龍に恋う 贄の乙女の幸福な身の上/道草家守」「僕は天国に行けない/ヰ坂 暁」
「魔獣医とわたし 灰の世界に緑の言ノ葉/三角くるみ」「青の女公/喜咲冬子」
「掌侍・大江荇子の宮中事件簿/小田菜摘」「水の剣と砂漠の海 アルテニア戦記/森りん」
「双子騎士物語 四花雨と飛竜舞う空/せひらあやみ」
「この恋が壊れるまで夏が終わらない/杉井光」
「エナメル―その謎は彼女の暇つぶし―/ 彩藤アザミ」
「神去り国秘抄 贄の花嫁と流浪の咎人/水守糸子」「水無月家の許嫁/友麻碧」
「占い師オリハシの嘘/なみあと」「穢れの森の魔女 赤の王女の初恋/山本 瑤」
「聖女失格/永瀬さらさ」「王と后/深山くのえ」

 ボカロ小説は河出書房新社などの一般系からMF文庫Jなどの男子向けライトノベルまで幅広い場所で顔を出し続けるが、ブームとしては落ち着いた感がある。
 ファン層も固定化されてライトノベル的エンタメの一ジャンルとして定着したというところだろうか。

 新文芸(ライト文芸)の方だが、18年に小学館文庫からの暖簾わけのような形で小学館文庫キャラブン!が創設されている。
 メディアワークス文庫、富士見L文庫、新潮社nex、講談社タイガ、集英社オレンジ文庫あたりで戦国時代が形成されているが、既に語ったように女性向け傾向へのシフトが完了済みだ。
 ジャンル傾向としては、まず強いのは現代青春もので「今夜、世界からこの恋が消えても」「この恋が壊れるまで夏が終わらない」などが出てきている。お仕事ものと呼ばれるジャンルも人気だ。ここらへんはドラマ化や実写映画化に到る作品も多い。

 そして、本記事で新文芸を重要視してきた理由の1つでもあるのだが、ポスト少女小説としての顔を得たことにより、昔ながらの古き良きファンタジーの正統後継者とでも言うべき作品たちが多く登場している。

 ライトノベル始祖論や前夜の主役話で少女小説が欠かせないという話はした。コバルト文庫や講談社X文庫の全盛期は少女小説からも大量のファンタジー系名作が出た。
 ライトノベル黄金期に入っても有名どころでは「十二国記」など、男女の枠を超えて愛された名作が出てきているし、東洋系特化ということもなく中世西洋風の作品も多い。
 ライトノベル・ファンタジー黄金期の終わりからなろう系黄金期へと変容していく過程の中で、少女小説の取り上げが目に見えて減っていることに気付いていた方もいるかもしれない。
 レジーナブックスなど女性向けWEB小説は紹介していたので、そちらに吸収されていたのか。それもある。だが、コバルト的、あるいはX文庫的なファンタジー小説は新文芸に移籍していた。
 そしてそれらは令和にも一定の支持を得ることに成功しており、勢力比のような見方をするのであれば。ライトノベル戦線における往年のファンタジーとなろう系という比率よりかなり高い。

 こういう言い方も出来る。ライトノベルから消えた(消えかけている)ライトノベル前夜からの空気を持つファンタジーを令和時代に引き継いだのは、女性向けに舵を切った新文芸であると。
 本格的なファンタジーを巡る論では少女小説や少女漫画全てを無視するものもある。そういった論では新文芸も拾われずともやむなしなのかもしれないが、本格的なファンタジーと認識する作品の中にコバルト文庫やX文庫の名作が入ってくるのであれば、令和の新文芸ファンタジーも同じように拾うべきだろう。

 ここで久しぶりに少し意地の悪い質問をするとしようか。

 貴方はライトノベル誕生前後のファンタジー黄金期を理想とする人間であり、かつ少女小説や少女漫画は好まない男性層である。そんな貴方にとって、古き良きファンタジーはマイノリティになった最新ライトノベル、ファンタジーは強いが往年のライトノベルとは違うものに見える最新なろう系、80~90年代ファンタジーの息吹を最も色濃く残す女性向け新文芸。さて、どれが一番理想的なファンタジーに近いですか?

 一般文芸も見てしまおう。ハヤカワ文庫はライトノベル読者層との親和性が高いレーベルなわけだが、ここからも「裏世界ピクニック」「JKハルは異世界で娼婦になった」などが出てきている。後者は小説家になろう出身の異世界転生ものだ。

 「ボクたちはみんな大人になれなかった」は新潮社からの刊行だが、WEB配信サイト(あるいはオンラインマガジン)であるcakes出身だ。個人HPやブログに近いものという認識で問題ないと思うが、これの実質的な後継者といえるサービスがnoteとなる。
 本記事の初出場所も複数候補から検討した結果noteを選んだわけで、色々と注目度が高いコンテンツではある。

 「イスルイン物語」は現実世界の聖書を伝道するために生み出されたファンタジー小説という特異的かつ興味深い作品だ。作者は素性不明の覆面作家でもあり、コアなファンタジー愛好層からの関心が高い。

 他に、23年に刊行されたばかりの「レーエンデ国物語」が、ハイファンタジーを堪能できる作品として注目されている。

 久しぶりにケータイ小説出身を取り上げよう。ケータイ小説文化をルーツとする、なろう系とは別世界といえるWEB小説投稿サイトは複数根付いており、そういった場所出身で17年に刊行された「夜が明けたら、いちばんに君に会いにいく」は、思春期の女子から高い支持を得るヒット作となった。
 児童文学からは「かがみの孤城」と「火狩りの王」を挙げておきたい。

 一般文芸としての歴史小説はほぼ拾っていなかったが、インターネットの匿名掲示板文化からこれまで紹介済みのものとはまた違う形で飛び出してきた作家として坂上泉を紹介しておきたい。
 「明治大阪へぼ侍 西南戦役遊撃壮兵実記」がデビュー作だが、松本清張賞を受賞した書き下ろしの大河小説でありWEB小説が初出ではない。
 著者はアマチュア時代に歴史系やる夫スレでの作品投稿を趣味としていた背景を持つ。小説執筆に際しては専門家に師事して一から基礎を磨いてもいたそうなので匿名掲示板からプロデビューした作家という枠ではないが、WEB上におけるアマチュア創作文化から出てきたのはライトノベル的な作家だけではないという一例とはなるだろう。

◆定番シリーズの逆襲と、ソシャゲ界震撼の怪物◆


・2017~19年のコンピュータRPGとソシャゲ戦線
「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド/任天堂」
「ファイアーエムブレム ヒーローズ/任天堂」
「Ever Oasis 精霊とタネビトの蜃気楼/任天堂」「ドラゴンクエストXI/スクウェア・エニックス」
「ニーア オートマタ/スクウェア・エニックス」「LOST SPHEAR/スクウェア・エニックス」
「SINoALICE -シノアリス-/スクウェア・エニックス&ポケラボ」
「蒼き革命のヴァルキュリア/セガ」「仁王/コーエーテクモゲームス」
「BLUE REFLECTION 幻に舞う少女の剣/コーエーテクモゲームス」
「ハコニワカンパニワークス/日本一ソフトウェア」
「GOD WARS ~時をこえて~/角川ゲームス」「アライアンス アライブ/フリュー」
「オトメ勇者/レベルファイブ・マイネットゲームス」
「アズールレーン/Yostar」「天華百剣/DeNA」
「メギド72/DeNA」「放置少女~百花繚乱の萌姫たち~/ c4games」
「マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝/アニプレックス」
「バンドリ! ガールズバンドパーティ!/ブシロード」
「あいりすミスティリア!~少女のつむぐ夢の秘跡~/オーガスト・DMM」
「OCTOPATH TRAVELER/スクウェア・エニックス」
「ロマンシング サガ リ・ユニバース/スクウェア・エニックス」
「Fate/Grand Order Arcade/セガ」「あなたの四騎姫教導譚/日本一ソフトウェア」
「CRYSTAR -クライスタ-/フリュー」「Death end re;Quest/コンパイルハート」
「WORK×WORK/フリュー」「Vampyr - ヴァンパイア/Focus Home Interactive」
「アリス・ギア・アイギス/コロプラ」「ドールズフロントライン/サンボーンジャパン」
「Rance X -決戦-/アリスソフト」「ファイアーエムブレム 風花雪月/任天堂」
「ドラゴンクエストウォーク/スクウェア・エニックス」「新サクラ大戦/セガ」
「十三機兵防衛圏/アトラス」「ライザのアトリエ ~常闇の女王と秘密の隠れ家~/コーエーテクモゲームス」
「DESTINY CONNECT/日本一ソフトウェア」「アークオブアルケミスト/コンパイルハート」
「SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE/フロム・ソフトウェア」

・2020~23年のコンピュータRPGとソシャゲ戦線
「龍が如く7/セガ」「プロジェクトセカイ/セガ」
「天穂のサクナヒメ/マーベラス」「サイバーパンク2077/スパイク・チュンソフト」
「アークナイツ/Yostar」「ガーディアンテイルズ/Kong Studios・Yostar」
「原神/COGNOSPHERE」「ディズニー ツイステッドワンダーランド/アニプレックス」
「ラストオリジン/スタジオヴァルキリー」「ブルーアーカイブ -Blue Archive-/Yostar」
「ウマ娘 プリティーダービー/Cygames」「メガトン級ムサシ/レベルファイブ」
「咲う アルスノトリア/NextNinja」「戦場のフーガ/サイバーコネクトツー」
「ヴァルキリーエリュシオン/スクウェア・エニックス」
「ハーヴェステラ/スクウェア・エニックス」「シン・クロニクル/セガ」「遊戯王マスターデュエル/コナミ」
「ドルフィンウェーブ/マーベラス・HONEY∞PARADE GAMES」
「ELDEN RING/フロム・ソフトウェア」「ヘブンバーンズレッド/WFS」
「勝利の女神:NIKKE/Level Infinite」「ファイナルファンタジーXVI/スクウェア・エニックス」
「BLUE PROTOCOL/バンダイナムコ」「LOOP8/マーベラス」
「ホグワーツ・レガシー/Portkey Games」
「崩壊:スターレイル/OGNOSPHERE」「ディアブロIV/ブリザード・エンターテイメント」

 最後ということで、人気シリーズも覗いていこう。「ドラゴンクエストXI」はMMOだったXを挟んでからソロRPG型に戻ったとして注目されたが、シリーズ最新作に相応しいとされる高評価を受けている。

 「ファイナルファンタジーXVI」は23年夏リリースの最新作も最新作だが、原点とも言える本格的なダークファンタジー色が強い作品として、かなり評判が良いようだ。

 「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」は初代からずっと高い人気を誇り続けていたシリーズが、それでも定番化によるマンネリは発生していたとしてシリーズの大転換点を謳っており、それに相応しい名作として話題を浚った。
 最新作となる「ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム」も同じく評価されている。

 「ニーア オートマタ」は美しさと残酷さを兼ね備えた傑作ファンタジー作品として、世界的なヒット作となっている。

 「Rance X -決戦-」はPC-R18界を黎明期から支えてきた「ランスシリーズ」の完結作だ。ファンタジー黄金期を生み出した構成員でもあるシリーズの完結は、多くのファンから讃えられた。

 「ファイアーエムブレム 風花雪月」「ライザのアトリエ ~常闇の女王と秘密の隠れ家~」なども長いシリーズ化の中で大きな話題作となる。
 他にRPG的要素もあるが本質的にはアクションゲームだったシリーズがドラクエ型RPGにシステムチェンジした「龍が如く7」、世界的人気のファンタジー久々の新作である「ディアブロIV」なども反響を呼んだ。

 完全オリジナル新作として評判を得たのが「十三機兵防衛圏」だ。多分RPGではないのだが、RPG的要素もあるといえばある。
 練りこまれた設定、キャラクター、物語、それをゲームに落し込んだ完成度の高さが絶賛された。

 ダークファンタジー的な要素を内包する和系作品というジャンルは昔から海外人気が高いのだが、その枠でヒットしたのが「仁王」「SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE」となる。
 ダークファンタジーと言えば「ELDEN RING」だろう。フロム・ソフトウェアの集大成や決定版などと呼ばれるほど高い評価を得た。その世界観構築には「氷と炎の歌(ゲーム・オブ・スローンズ)」の作者が参加しており、そこも話題となった。

 「天穂のサクナヒメ」はマーベラス作品ではあるが、実質インディーズゲームとなる。
 日本神話を題材とした世界観やアクションパートの楽しさだけではなく、農水省が反応するほどのガチ過ぎる稲作ゲームという他に類を見ない特徴でも盛り上がった作品だ。

 ソシャゲからはYostarの躍進が目覚しい。戦艦擬人化もの枠となる「アズールレーン」に、ソシャゲ界では「千年戦争アイギス」とその姉妹作ぐらいしかヒットが出ていなかったタワーディフェンス系の「アークナイツ」と、どちらも多くのファンを獲得している。
 さらに「ブルーアーカイブ -Blue Archive-」はライトノベルやPCゲームなどを含む日本エンタメ数十年分を熟知した愛情がないと作れないとまで言われるシナリオの濃さやクオリティの高さが評判となっている。

 シナリオ面の評価が高いソシャゲといえば「メギド72」だろう。ソロモン王の悪魔はエンタメ界では割と定番なモチーフではあるがその枠で収まる作品でもなく、80年代SFやライトノベル黄金期、海外のSF・ファンタジー・幻想怪奇系などに精通していないと描けない物語が大きく支持されている。

 「ドラゴンクエストウォーク」は「Pokemon GO」のフォロワー枠と言ってよい位置情報利用ソシャゲだ。大ヒットブームを自社作品に落しこむ得意技の本領発揮というところだろうか。
 位置情報系としてはニコニコ動画を擁するドワンゴ発でドラクエやチュンソフトで有名な中村光一も関わる「テクテクテクテク」なども出てきたが、こちらは短命で終わっている。

 また、23年夏に出たばかりの「Pokémon Sleep」は、現実の睡眠をゲームとして開拓する意欲作として話題となっている。

 女性人気が凄まじく高いのが「プロジェクトセカイ」「ディズニー ツイステッドワンダーランド」だ。前者はボーカロイドものになるが、初音ミクが単純な男性人気のある一キャラクターで終わらない可能性を示す最大作品ともなった。

 かつてのMMOと今のソシャゲの融合点とか到達点とか新時代の指標とか言われるメガヒット作が「原神」だ。スマホゲームのクオリティ基準を上げたとも言われている大作であり、以降に登場するソシャゲは基準作として比較されるようになったという話も出てきている。

 そして、ここ数年で最大の話題作であり、社会現象級と言われている作品が「ウマ娘 プリティーダービー」となる。競馬を原作とした擬人化ものプロジェクトでありゲームが初出ではないのだが、ゲームの方は延期による延期の果ての待望のリリース直後から爆発的反響を呼び、特殊なマニアでもないライト層までCygamesの親会社であるサイバーエージェントの決算報告書を話題に出すほどの売り上げを叩き出した。
 元々競馬ファンから強く愛されていた人気引退馬への寄付金が、この作品の登場以降は桁違いに跳ね上がるなどの現象も引き起こしている。

 リスト外からは「ARK: Survival Evolved」「荒野行動」「PUBG」「フォートナイト」「死印」「LITTLE NIGHTMARES-リトルナイトメア-」「Rules of Survival」「フォーオナー」「嘘つき姫と盲目王子」「抜きゲーみたいな島に住んでる貧乳はどうすりゃいいですか?」「ミストラリアの魔術師」「ASTRO BOT: RESCUE MISSION」「エーペックスレジェンズ」「DAEMON X MACHINA」「Fall Guys」「BALAN WONDERWORLD」あたりだろうか。

 一言添えたいものとしては、木村拓哉が主人公を演じて話題となった「JUDGE EYES:死神の遺言」、宇宙系デジタル人狼ゲームとして本家に迫るブームとなった「Among Us」、人間とファンタジー系種族が共存する現代的都市で繰り広げられるドラマが魅力の「コーヒートーク」、ビジュアル面だけでなくアクションゲームとしての評価も高い「Little Witch Nobeta」、ローグライクシューティングとでも言うべきジャンルの代表作となった「Vampire Survivors」、格闘ゲームの伝説的タイトルにして冬の時代とも言われる業界を大復活させるかと注目されている「ストリートファイター6」を挙げておきたい。

 コンピュータゲーム界、特にRPG界では技術的クオリティが上がるほど見た目重視への疑問、物語一本道はゲームとして正しいのかなどの議論、ムービー偏重への反発などが飛び出してきていた。
 だが、ストーリー評価が高いものほど人気が出やすい傾向もある。ソシャゲでもその傾向はあり、ストーリーがしっかりしていないとソシャゲも生き残れない時代になってきている印象はある(※86)。
 また、10年代後半はリアルでドラマチックな洋ゲーやバトルロイヤル系が主流・主役だった向きがあるが、20年代に入ってファンタジー色の強い作品がまた復興してきている気配も見られる。

 エピックでヒロイックなファンタジーを求める層にとって、今、コンピュータRPGは追い風の場となっているかもしれない。

※86 ソシャゲにはストーリースキップ勢という流派(?)も存在するはする。ファミコン時代から文章は読み飛ばす人や音量0でプレイする層は普通にいましたね

◆2017~23年のアナログゲーム戦線。不変の強さの都市伝説とホラー◆


 まずTRPGだが、「のびのびTRPGザ・ホラー(17年)」「新クトゥルフ神話TRPG(日本語版19年)」「ゴブリンスレイヤーTRPG(19年)」「この素晴らしい世界に祝福を!TRPG(19年)」「人鬼血盟RPG ブラッドパス(19年)」「アンサング・デュエット(20年)」「捏造ミステリーTRPG 赤と黒(20年)」「ラストレクイエム ~ネオゴシックRPG~(21年)」「スタリィドール(21年)」「ストリテラ オモテとウラのRPG(22年)」あたりが出てきている。

 16年以前からあった傾向ではあるのだが、TRPGは動画文化による布教・拡散効果が強くなっている。かつてはリプレイ本という書籍でプレイする様子を楽しんでいたのだが、リプレイ動画やリプレイ風創作動画という文化が新たに生まれており、ムーブメントの拡散に貢献していた。
 初期は「ソード・ワールド」「ソード・ワールド2.0」あたりが強かったが、時代を経る毎に「クトゥルフ神話TRPG」「新クトゥルフ神話TRPG」(※87)が盛況となっていき、現在では一強に近いと言ってしまって良いだろう。
 そこへの連動性に関してはしっかりとした研究が必要だろうが、SCPブームも関係はありそうだ(※88)。

 WEB小説出身人気作がTRPG化されるなど新作も出てきてはいるが、まだ当分はクトゥルフ時代が続きそうな印象だ。

※87 新クトゥルフ神話TRPGは、正確にはクトゥルフの呼び声の第7版という位置付けになる

※88 SCP財団と呼ばれる創作コミュニティサイトが08年に設立され、そこからの発信として現実世界に存在しないはずの怪奇や幻想が実際に存在するかのように語られる文化。日本でも動画での紹介などで拡散されブームが続いている。日本では人面犬などの都市伝説ホラーが流行した時期があるが、ああいった系のより本格的で世界的な創作活動という認識で問題ないだろう

 TCGは「マジック」が「指輪物語」とコラボした世界で1枚しかないカードに数億円の懸賞金が懸けられたり、「ポケモンカードゲーム」で異常な高騰と買占めが発生していたりとなかなか凄まじいことになっているが、全体としては異常なことも含めて安定している印象がある。
 ただ、強盗や詐欺といった刑事事件が目立つようになってきていることは大きな社会問題ではある(※89)。

 新規参戦としてはソシャゲの「Shadowverse」が、22年に「Shadowverse EVOLVE」としてTCG化している。他に「ビルディバイド(21年)」「ONE PIECEカードゲーム(22年)」「OSICA(22年)」「ユニオンアリーナ(23年)」などが登場した。

※89 ビックリマンやドラクエブームの頃からカツアゲと呼ばれる強盗事件はあったし、オンラインゲーム時代はデータの詐欺売買なども問題化した。ゲームセンターは不良と非行の歴史でもあるとかまあ色々あるはある。とはいえ……というやつである

 伝統的アナログゲーム界隈からは「ウイングスパン(19年)」、オタクエンタメ的界隈からは「まじかる☆キングダム(21年)」を挙げておきたい。

 社会情勢・社会問題。なかなかセンシティブではある。しかしまあ、アナログゲームの醍醐味は実際に会って遊ぶことにあるため、コロナ禍の影響を特に大きく受けたという話はしておくべきだろう。

 TRPGなどはオンライン化がかなり進行しているし、遊戯王関連は需要の高さからオンラインで遊べる形が全力前進している。だがそれ以外のカードゲームやボードゲームは外に出て会って遊ぶという行為に制限がかかることで受けたダメージは途轍もなかったようだ。
 アナログゲーム界隈のここ数年の動向は極めて特殊な例外枠に入れて考えるべきだろう。未来を見守っていきたいところだ。

◆PCやスマホで見るが普通になった漫画・アニメ・映画戦線◆


・2017~19年漫画
「Dr.STONE」「東京卍リベンジャーズ」「魔入りました!入間くん」「妖怪ギガ」「うちのアパートの妖精さん」「サマータイムレンダ」「王様ランキング」「死神坊ちゃんと黒メイド」「終末のワルキューレ」「ラグナクリムゾン」「白聖女と黒牧師」「白薔薇のフランケンシュタイン」「神呪のネクタール」「スライムライフ」「蒼穹のアリアドネ」「創世のタイガ」「不徳のギルド」「人形の国」「魔法少女サイト」「間違った子を魔法少女にしてしまった」「偽りのフレイヤ」「世話やきキツネの仙狐さん」「血と灰の女王」「デッドマウント・デスプレイ」「圕の大魔術師」「ピーター・グリルと賢者の時間」「呪術廻戦」「チェンソーマン」「地獄楽」「EDENS ZERO」「オリエント」「金装のヴェルメイユ~崖っぷち魔術師は最強の厄災と魔法世界を突き進む~」「アビスレイジ」「異世界おじさん」「異世界ちゃんこ ~横綱目前に召喚されたんだが~」「江戸前エルフ」「終末のハーレム ファンタジア」「便利屋斎藤さん、異世界に行く」「天国大魔境」「転生悪女の黒歴史」「VS EVIL/終の退魔師―エンダーガイスター―」「ゲーム オブ ファミリア-家族戦記-」「このヒーラー、めんどくさい」「シャドーハウス」「ゾン100~ゾンビになるまでにしたい100のこと~」「ライドンキング」「夜桜さんちの大作戦」「タテの国」「MAO」「異世界失格」「ヴァンピアーズ」「JKからやり直すシルバープラン」「時間停止勇者」「魔都精兵のスレイブ」「パリピ孔明」「ヒロインは絶望しました。」「異世界美少女受肉おじさんと」「はめつのおうこく」「ふかふかダンジョン攻略記〜俺の異世界転生冒険譚〜」「神無き世界のカミサマ活動」「星降る王国のニナ」

・2020~23年漫画
「あやかしトライアングル」「アンデッドアンラック」「マッシュル-MASHLE-」「破壊神マグちゃん」「SAKAMOTO DAYS」「怪獣8号」「ハイパーインフレーション」「葬送のフリーレン」「ウマ娘 シンデレラグレイ」「ちいかわ なんか小さくてかわいいやつ」「悪役令嬢転生おじさん」「魔女大戦 32人の異才の魔女は殺し合う」「シャングリラ・フロンティア~クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす~」「忍者と極道」「盗掘王」「Lv1魔王とワンルーム勇者」「この世界は不完全すぎる」「サキュバス&ヒットマン」「怪獣自衛隊」「ウィッチウォッチ」「タコピーの原罪」「ダンダダン」「異世界ありがとう」「ケモ夫人」「黙示録の四騎士」「僕の呪いの吸血姫」「亜人ちゃんは語りたい」「ドキュンサーガ」「異世界ひろゆき」「黒猫と魔女の教室」「ルリドラゴン」

 なろう系の影響は漫画界にも確実に起きていて、影響を受けたと思われるファンタジー系作品が急増している。リストに入れていないWEB小説のコミカライズもリストの数と同じかそれ以上に刊行されている。

 そんな中、安定してヒット作を輩出する少年ジャンプからは「Dr.STONE」「呪術廻戦」「チェンソーマン」などが大きな話題となった。
 「東京卍リベンジャーズ」はかつて不良もの・ヤンキーもので黄金期を築いた少年マガジンが時代の流れでそのジャンルが衰退してから、改めて出てきた最新式SFアクションヤンキー漫画といった作品だ。
 少年サンデーの「葬送のフリーレン」は西洋風ハイファンタジーの傑作として昔からのファンタジーファンの心も掴み、その手応えから編集部が今最も力を入れている作品とも言われている。

 企業が提供するWEB漫画サイトでの連載作品が非常に多くなっている。WEB漫画はスマホで読む層も多いことから縦読みと呼ばれる上から下にスクロールするコマ割が登場していたが、その縦読みに特化しつつ縦読みであることに物語上の意味を持たせる漫画として、また往年のSF・ファンタジーの香り漂う作品として「タテの国」が独自の存在感を発揮した。
 他に「怪獣8号」「ハイパーインフレーション」「タコピーの原罪」などが話題となった。

 「シャングリラ・フロンティア~クソゲーハンター、神ゲーに挑まんとす~」は小説家になろう投稿作が小説書籍化を経ずに漫画化された作品だ。小説投稿サイトなんだから小説系出版社がスカウトするものという空気感も出来上がっていた中で、漫画編集部が先に動き出すムーブも始まり出している。

 なろう系を強く意識したオリジナル漫画の中で少し異色な盛り上がりを見せたのが「異世界おじさん」だ。家庭用ゲームリスペクトも強い作品であり、アニメ化時にはなろう系読者層よりもゲームファンの方が強く反応した。

 また、WEB漫画出身とかそういう枠を超越した「ちいかわ なんか小さくてかわいいやつ」は、作中の表現や言葉が語録と呼ばれるネット語化するブームを引き起こしている。

 SNSで注目されて書籍化される作品は現代ものが多いのだが、ファンタジー色が強いものとしては「ケモ夫人」だろうか。

 また、00年代ファンタジー漫画の傑作である「金色のガッシュ!!」の続編が開始されるなどの動きも見られた。

 歴史ものから「新九郎、奔る!」「天幕のジャードゥーガル」「チ。-地球の運動について-」「逃げ上手の若君」あたりを挙げておきたい。
 他にリスト外からは「五等分の花嫁」「宇崎ちゃんは遊びたい!」「ソウナンですか?」「ぼっち・ざ・ろっく!」「彼女、お借りします」「アクタージュ act-age」「スキップとローファー」「その着せ替え人形は恋をする」「トニカクカワイイ」「SPY×FAMILY」「ゲーミングお嬢様」「【推しの子】」「あかね噺」あたりだろうか。

 最後にSNS出身として「100日後に死ぬワニ」を取り上げておこう。100日後に○○~というムーブメントの中心地となり、SNS発コンテンツ愛好家から強烈に愛されたが、商業化のアプローチで躓き大炎上という現象に到った作品だ。
 だからどうというのを本記事でやるつもりはないが、SNS時代の熱狂と反転、支持と不支持の表裏一体、個人活動と企業介入の光と闇を体現する作品として、思うところも多い。

・17~23年アニメ
「正解するカド」「けものフレンズ」「プリンセス・プリンシパル」「あかねさす少女」「色づく世界の明日から」「ゾンビランドサガ」「ウマ娘 プリティーダービー」「刀使ノ巫女」「DOUBLE DECKER! ダグ&キリル」「SSSS.GRIDMAN」「重神機パンドーラ」「ダーリン・イン・ザ・フランキス」「プラネット・ウィズ」「LOST SONG」「新幹線変形ロボ シンカリオン」「異世界かるてっと」「W'z《ウィズ》」「Fairy gone フェアリーゴーン」「グランベルム」「ケムリクサ」「荒野のコトブキ飛行隊」「えんどろ~!」「revisions リヴィジョンズ」「半妖の夜叉姫」「神様になった日」「戦翼のシグルドリーヴァ」「LISTENERS リスナーズ」「アクダマドライブ」「BNA ビー・エヌ・エー」「Vivy -Fluorite Eye's Song-」「闘神機ジーズフレーム」「逆転世界ノ電池少女」「境界戦機」「ヴィジュアルプリズン」「ワンダーエッグ・プライオリティ」「アキバ冥途戦争」「東京24区」「機動戦士ガンダム 水星の魔女」「ユーレイデコ」「リコリス・リコイル」「連盟空軍航空魔法音楽隊ルミナスウィッチーズ」「アルスの巨獣」「大雪海のカイナ」「魔法少女マジカルデストロイヤーズ」「REVENGER」

 リストからは省略した、なろう系ヒット作のアニメ化ラッシュはずっと続いている。小説・漫画・アニメの全てで主流コンテンツにのし上がったことが、なろう系お腹いっぱい派や、なろう系は飽きた派などを生み出す一因となっているところはあるだろう。

 リストの話題作を見ていくと「けものフレンズ」はマルチメディア前提企画であり初出はソシャゲとなる。アニメ化の際に新進気鋭の監督を抜擢したことで独特の作風が大反響を呼び、大注目作となった。

 逆にゲームリリースより時期が早かった「ウマ娘 プリティーダービー」は、アニメ放送当初は大ヒットとまではいかなかったが、アニメ2期がスマッシュヒットして注目度が跳ね上がり、そことゲームリリースが連動したことで前述した爆発的ムーブへとつながっている。

 「新幹線変形ロボ シンカリオン」は子供向け変形ロボ作品であり、原作は玩具となる。「ゾイド」や「勇者シリーズ」などは取り上げたが、そういった系譜を継ぐ現代の代表作と言えるかもしれない。

 「機動戦士ガンダム 水星の魔女」はシリーズ最新作となるが、主人公とヒロインが共に少女であることや、多くの作風を持つ「ガンダムシリーズ」の中でも今までになかった描き方をしているとしてシリーズファン以外からも支持された。
 少女×少女のバディものとしては「リコリス・リコイル」も完全オリジナルアニメ作品としてヒットしている。

 また、70年代の伝説的作品であり現代オタクエンタメの母的作品という言い方も大げさではない「うる星やつら」がリバイバルアニメ化されている。 

 他に名前を挙げておきたいのは「サクラクエスト」「宇宙よりも遠い場所」「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」「PUI PUI モルカー」「白い砂のアクアトープ」あたりだろうか。

 映画からは、「ガールズ&パンツァー最終章第1話」は最終章シリーズを劇場版で連載形式にするとして話題を呼んだ。23年時点でまだ未完結であり、ファンからの熱い注目を浴び続けている。

 「響け! ユーフォニアム」のスピンオフでもある「リズと青い鳥(18年)」、「キルラキル」制作陣の新作である「プロメア(19年)」、新海誠の新作として「天気の子(19年)」「すずめの戸締まり(22年)」が公開され人気作となっている。特に新海作品は海外人気も高く、日本を代表するアニメ映画という地位を確立しつつある。

 ジブリは劇場版に先駆けてTV版を先に放送するという珍しい試みの「劇場版 アーヤと魔女(21年)」を公開したほか、今度は本当の本当に宮崎駿引退作になるのではという「君たちはどう生きるか」が23年夏に公開された。

 セカイ系という時代を生み出すきっかけとなり、ファンタジーを含むエンタメ世界を大きく変容させた「エヴァ」の最終作として「シン・エヴァンゲリオン劇場版:||(21年)」が公開され、内容の評価以上にそのことへの慰労の声が聞こえてきた。
 長寿化した名作が未完のままで終わるケースも増えてきていた中で、エンタメファンたちも色々と思うところがあったのだろう。

 アニメのヒット作の劇場版化はすっかり定番化していたが、大きく反響を呼んだのが「劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン(19年)」だ。
 「劇場版「鬼滅の刃」無限列車編」もヒット作の劇場版化という意味では同じなのだが、原作を忠実に反映しているエピソードをアニメ1期→劇場版→アニメ2期という連続性で描くという面白い試みをしている。そして劇場版も恐ろしいほどに大ヒットした。

 過去のヒット作のリバイバル新作というムーブはかなり前から定番化していたのだが、当時と同じかそれ以上にヒットするというのもなかなか難しいというところではあった。そんな中で「THE FIRST SLAM DUNK(22年)」は大成功し、海外から日本への聖地巡礼ブームなども発生している。

 往年のファンタジーファンを驚かせたのが「ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り(23年)」だ。中年層よりさらに上の70~80年代に青春を送った層を中心に盛り上がり、「D&D」話が飲み屋やSNSを賑わせた。
 エピックでヒロイックな海外ファンタジー至高論や古き良き本格ファンタジー論は定期的に噴火の如く吹き上がる話題ではあるのだが、令和の完全新作な「D&D」映画というトピックも影響を与えていそうではある。
 ただ、10代や20代と中年層以上では「D&D」というワードへの食いつき方がかなり異なる印象も強い。思春期世代のファンタジーファンがこの映画をどう受け止めているのかは、ファンタジー論の追及の上でも重要そうだ。

 他に「ひるね姫 ~知らないワタシの物語~(17年)」「夜明け告げるルーのうた(17年)」「メアリと魔女の花(17年)」「未来のミライ(18年)」「竜とそばかすの姫(21年)」などが公開された。

 最後に「バーフバリ 王の凱旋(17年)」の名前を挙げておこう。インド映画なのだが90年代の「ムトゥ 踊るマハラジャ」など、定期的に日本ではインド映画ブームというものは起きてはいた。
 それらの最終進化とでもいうような、スパイスをキメてトリップしてダンス・ダンス・ダンスな作風に中毒化する最新インド映画ブームは23年現在まで続いている。

 インド映画をファンタジーと親和性がある(?)として拾うならサメ映画も……と行きたいところなのだが、今回はサメ映画はやりません! 「グラブル」や「千年戦争アイギス」のような現役ファンタジーソシャゲ、あるいは「チェンソーマン」の様な大ヒット漫画が当たり前のようにサメ映画リスペクトをしている時代ですが、まあ取り上げません!!

 おいといて。

 ライトノベル前夜の80年代半ばからなら40年、アメリカ・パルプ・フィクション時代からなら100年という長い旅もここで終わる。最後がインド映画になるとは私が一番驚いている。

 取り上げられなかった作品は多い。あるいは、名前を並べるだけが精一杯で中身に踏み込めなかったものも。だが、十分に得るものはあったのではないだろうか。
 本格ファンタジーは死んだのか? の回答は道中で何度か行ったが、ここまで読んでくださった方なら、私がこの記事でやりたいことが本格ファンタジーの定義化ではないことは気付いておられるだろう。

 本記事の旅を通して確認したかったもの、そして本格ファンタジーという概念に対する私なりの回答を、終章兼あとがきとして綴って終着としよう。

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