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映画「BULL DURHAM」

DURHAM(ダーラム)はアメリカ合衆国ノースカロライナ州に実際にある街。昔はタバコ、今はデーク大学を中心に、ちょっとハイテクな街で人口は180〜190万人ほど。案外、大都市。
この映画の邦題は「さよならゲーム」、原題は「BULL DURHAM」。ブルズというダーラムに本拠を置くマイナーリーグの野球チームの話。これも実在するチームで、タンパベイ傘下の3Aのチーム。マイナーとはいうものの、実際のブルズは、日本人からは、そうは見えないチーム。

でも映画の中のブルズは牧歌的な雰囲気。そのあたりがマ、よりマイナーっぽくて素敵。ケビン・コスナーにスーザン・サランドン、ティム・ロビンスという豪華な布陣にしては等身大な映画で、これこそがアメリカ庶民の日常って感じが描かれている。

この映画において、野球は、アメリカにとって、宗教であり、哲学でもあるとされる。それを象徴する言葉のひとつとして「野球はシンプルなゲームだ。ボールを投げ、捕り、打つ。時に勝ち。時に負ける。時には雨が降る」を複数の登場人物に語らせている。

映画の終わり頃、スーザン・サランドンに「トーマス・グレイだったか、ウィリアム・カレン・ブライアントだったかの詩の一節」として以下の一節をつぶやかせる。

「人知れず咲く多くの花々よ 荒野に甘い香りを振りまいて」

これも、そんな哲学のひとつ。

この映画は「二流」な生き方を讃えている物語でもあるけれど、生き方としては一流な生き方をする仕事師たちが登場し、ちょっとインモラルかもしれないが魅力ある(自立した)人物たちもいて、みな、まさに多様性の中にお互いを認めながら生きている。

僕にとってはワクワクするような「街場のアメリカ」が展開していく。
みんなカッコいい…

実際のブルズに、タンパベイとマイナー契約をした松井さん(ヤンキーズにいた松井秀喜元選手)が一時プレーされていたけれど、なんだかうれしかったな。

たぶん映画のセリフは全部入ってると思う(それくらい観ました)。

この映画を最初に観たのは1980年代末のバブルの絶頂期。あまり「物語」を鵜呑みにするのはよくないけれど、この映画に出会わなければ、僕はもっと嫌な人間になっていたと思っている。

「さよならゲーム」(原題:BULL DURHAM 1988年公開)
監督/脚本 ロン・シェルトン 撮影 ボビー・バーン
配給 オライオン・ピクチャーズ&ワーナー・ブラザース(アメリカ)

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