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大阪ハムレット

世間のいうところの道徳…

そういうものに従わないからといって、ただただ「わがままな」というわけではなく、世間が求める水準より、はるかにやさしい人だということもある。世間の常識に縛られるのではなく、自らの「公」を自らデザインし、実践している…

この映画を見ながらそんなことを考えた。

「大阪ハムレット」

三兄弟のお兄ちゃんは、一昔前の言い方で言えば「オジン臭い少年」で、中学生なのに大学生で充分通用してしまうほど。で、間違えられて、はるかに歳上の女性と恋愛関係になる。次男坊は判りやすいヤンキーで、末の弟は女の子になりたい男の子。お母さんはお父さんの亡くなった日に転がり込んできた叔父さんと暮らし始めて、妊娠してしまう…

でも、みんな仲良しで、みんな家族思いで、世間体は気にしない。それぞれの個性を、それぞれが応援しようとする…

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ジェイン・ジェイコヴズさんが「大都市の理想」としたものを「家族」の中に体現したような一家。

今の日本に絶対必要なファンタジーだと思うのだけれど、支持する声はあまり聞かれず、なんだか、スーッとフェイド・アウトしていくように忘れ去られていった感じ…なんだか、森田芳光監督の映画「キッチン」の存在感に似ている気もする。

被差別な感じを圧政に苦しむかわいそうな人々に描けば、それなりに評価もされるんだけれど、彼らをして自由な風が吹いているところに生きている人々みたいに描くと評価されない…「キッチン」もそうだったけど、被差別側=「かわいそう」に描かないと、多くの人にとってピンとこないというか、呑み込めない内容の作品になっちゃうのかもしれない。

ホントは自由に生きようとすると「被差別」側に…
みたいなところがあるんだけど。

でも、いい風吹いてる映画だし、そこに描かれているのは愛しい人々。愛しい日常だ。原作も大好きな漫画ですが、それとは別の魅力に溢れた映画だと思っている。

ちょっと前に公開された映画だけど、僕の中では、今もサスティナブル。いろいろなことを教えてくれる。

大阪ハムレット 2009年
出演: 松坂慶子/岸部一徳/森田直幸/久野雅弘/大塚智哉/加藤夏希
原作:森下裕美 監督: 光石富士朗

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