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海の底と太陽の森

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過去受賞作品  15年前の処女作品。新風舎文庫大賞で優秀賞受賞。 心に問題を抱える主人公。日常のなかに侵入してくる海の世界。深海の世界へ答えを探しに行く。村上春樹から影響を受… もっと読む
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記事一覧

海の底と太陽の森 18.そして最後の質問

「そういえば精神が増えるとか、ここに来る前に話していなかったですか?」僕が急に思い出した…

水田 淳
4年前

海の底と太陽の森 17.存在の理由

穴の中は恐ろしく狭い。じっとしているのが嫌になるくらいだ。早く抜け出したくなる。 芋虫の…

水田 淳
4年前

海の底と太陽の森 16.模索者

空が小さくなっていく、近づけば近づくほどに巨大になっていく。 下から見えた微かな木は、今…

水田 淳
4年前
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海の底と太陽の森 15.太陽の森

寒い。手がかじかむほどに、ここには温度と言うものはないのか? 15秒ほど前。 木が根を下…

水田 淳
4年前
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海の底と太陽の森 14.埋まっていく私

一歩前に進んだだけの僕の世界が少し変わる。 「あなたにとっての大きな一歩でしたね。そして…

水田 淳
4年前
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海の底と太陽の森 13.上昇する空間

目まぐるしく変わる景色の中で、僕は寝そべっている。 僕は小さな空間に男と二人で存在してい…

水田 淳
4年前
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海の底と太陽の森 12.流動的な部屋

風景は透明で空気は透き通るように澄んでいた。 窓の外は街を全て見渡せる高台に建っている。建物は透明度のメモリを落としたみたいに薄れていた。 暗い世界に、眩いばかりの小さな光が無数に散らばっている。光は一つ一つが小さな球体で、その中から無数の光の線が触手のように伸びている。 その触手のような無数の線がそれぞれくねくねと動いていた。その光の球体は落ち着きがなく、常に動き回っていた。 空を見上げると、さっき窓の淵に足を付けていた女性が…と言っても今は女性かどうか判別できない

海の底と太陽の森 11.海の底

僕は目を開けると仰向けになって寝転がっていた。 何度か瞬きをする。僕の目に映る景色には二…

水田 淳
4年前
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海の底と太陽の森 10.僕の街

僕はサラリーマンが去った後、少しずつ横に流れていた。 気持ちを行きたい方向に動かすと進ん…

水田 淳
4年前
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海の底と太陽の森 9.深く透明な海

無重力というのは不思議な感じだった。 自分が全く動かなければ自分が存在しているという感じ…

水田 淳
4年前
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海の底と太陽の森 8.案内人

 僕の脳みそは体を動かす事が出来ない。 海中を何もつけずに漂うという事は、本来人間に出来…

水田 淳
4年前
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海の底と太陽の森 7.階段の先

風が段々と弱まっていく気がする。 木々は僕を遠ざけていくように静かになっていく。僕は歩き…

水田 淳
4年前
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海の底と太陽の森 6.紙切れの話

急に体が寒くなってきたような気がする。僕は目を閉じたまま大きな広い道を歩いている。 まぶ…

水田 淳
4年前
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海の底と太陽の森 5.迷える森の先

まぶたの上が赤みがかっていく。日の光が僕のまぶたの上を通過しているようだ。 僕はまだ目をあけない。僕は段々と浮き上がる。日の光が強まっていくのが感じられる。 僕は息を大きく吸い上げ手を大きく伸ばす。全てを受け入れる準備は出来たんだ。 「そうか…ここにあったのか」 僕の声は天井から響いて僕の体は太陽に到達した。  僕は目を開けた。部屋はまだ真っ暗で、隣にはアカリが眠っている。 時計を見ると眠ってからまだ3時間ほどしかたっていなかった。僕は寝転んだままアカリの眠ってい