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業務スーパーで異国のフルーツと出会う【龍眼】

6月某日。買い物へ行くためいつもの道を通ったら、パチンコ屋がつぶれて業務スーパーになっていた。いわゆる居ぬき店舗のようで、遠目でみた感じは以前とあまり変わらない。

しかし目の前まできて変化に気づいた。爆音の「残酷な天使のテーゼ」や大当たり中のビコビコ電子音はもう聞こえない。
店前に並んでいた「1円パチンコ」「新台入替」ののぼりが消え、代わりにきゅうりやなすなど生鮮食品が積まれている。

私はパチンコはやらない。私の目的はこの先にある行きつけのスーパーである。営業開始が10時なので、開店直後の特価品を求めて歩いているところだ。パチンコ店に用はない。
開店待ちの行列の長さや、待ちきれぬ様子で新台情報を語らう人たちには「朝からようやるなあ」と呆れの混じった思いすら抱いていた。
まあ、私もスーパーの開店待ちだから人のこといえないが。私とこの場所のご縁はそれくらいのものだった。

でも業務スーパーとなれば話は別だ。看板には「一般客歓迎・卸値販売」とある。私はウキウキと入店した。

店内は広々としていて、天井が妙に高く、パチンコ店の名残を感じる。店の大半を冷蔵および冷凍コーナーが占めていた。

冷凍コーナーを覗いてギョッとした。鶏の足だけが大量に袋詰めされている。「鳥もみじ」という商品らしい。モノは言いようだな。
その隣では、子豚1匹がまるごとパックされている。子豚は、体をくの字に折りたたみ、耳を寝かせて眠るように横たわっていた。
じっと眺めていると、青白くなった子豚からはグロテスクさより不思議と静逸さを感じる。それがかえって哀しい。

なるほど、確かにこれらはまさしく「業務用」である。鶏の足も子豚ちゃんも、今はこんな姿だが、きっと小洒落たレストランなんかへ卸されて美味しい料理へ生まれ変わるんだろう。

などと思いを巡らせながらウロチョロしていたら、階段を見つけた。どうやら2階にも商品があるらしい。
階段はパチンコ店の頃から変わっていないのか、工事現場の足場のような鉄骨製だ。ロングスカートをたくしあげ、私はカンカンと階段をあがった。

2階には缶詰などの加工品が陳列されている。一人暮らしの私でも、缶詰くらいの量なら食べきれるかもしれない。せっかくだから何か買って帰ろう。

「唐辛子入り豆腐」棒状の豆腐が瓶詰されている。
「火鍋の素」鍋に入れて溶かして使う。辛そう。
ライチの缶詰。双喜紋がかわいい。

ザッと見たところ、中国(台湾)、タイ、ベトナム産の商品が多い。
ライチなら、食後のデザートにいいかもしれない・・・。と、その隣に見たことのないフルーツを発見した。

「龍眼シロップ漬け」とある。ラベルには、アイスの実くらいの大きさをした、半透明の果実の写真。大きすぎず食べやすそうで、価格も手ごろだ。これを買うことにする。

朝の買い出しのはずだったが、スーパーを出たら頭の中が龍眼でいっぱいになった。
あの、プリッとした丸いかたち。アロエのような半透明の果実。どんな味がするのだろう。食感は、やわらかいのか、かたいのか。
シロップの味はどうだろう。私は缶詰のシロップが大好きだ。昨日なんて、みかんの缶詰のシロップを1缶飲み干してしまった。
龍眼のシロップは飲んでも大丈夫かな。というか、連日そんなことして大丈夫なのかな、私。

とにかく龍眼のことが気になって、いてもたってもいられない。

というわけで真っすぐ帰宅した。早速、食べてみよう。

シロップがミチミチに入っていたので、流しで開けた。

ドキドキしつつ、ひとくち…うまい!
ライチみたいな味でもうちょっと繊維がある。サクサクッとして、かすかに青っぽいがイヤな感じはなく、薬膳料理のような味わいだ。それをシロップの甘みが包んでいて、爽やかで食べやすい。夏のおやつにピッタリだ!

ひとくち食べて、私はすっかり龍眼のとりこになった。
龍眼・・・わたし、あなたのこと、もっと知りたい!

つづく。
次回、「わたしの龍眼アレンジレシピ」公開予定。

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