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『LIAR GAME』

◾️漫画の概要
バカ正直の神崎ナオのもとに、突然現金1億円が届く。LIAR GAME事務局の思惑にまんまと乗ってしまったナオは、天才詐欺師秋山のもとを訪れる。

◾️おすすめ
ライアーゲームは騙しあいのゲーム。事務局から金を貸し付けられ、それを参加者がゲームで奪い合います。嘘をつくのはあたりまえ、騙される方が悪い、というスタンスです。

事務局が説明するゲームの目的は、真の「嘘つき王」を決めたい。
そんな中で、神崎ナオは異質の存在でした。
自己保身に走り、他者を蹴落としてでも自分が生き残る、そんな状況の中で、ナオはゲームに敗れ借金を背負う他者を救済しようとします。
「信じてください」という言葉が空しく響き、何度も騙され、窮地に陥ります。秋山のサポートを受け、ゲームに勝ち続け、数億の借金を背負いながら、「ライアーゲーム」の必勝法を見つけ出していきます。

秋山の設定は心理学を専攻した詐欺師。人を騙すための状況づくりや、緻密な計算でゲームを勝ち抜いていくのですが、虚を突いた力業などもあり、これが結構面白いです。
心理学の用語も出てきますが、どちらかというと、ゲーム理論を少し知っているとさらに理解が深まりそうです。(作中では出てはきませんが)

与えられたマネーを奪い合う「非協力ゲーム」をプレーヤーは戦っていきます。ナオは、これを「協力ゲーム」として事務局と戦おうとします。
ライアーゲームでは、基本的に胴元のテラ銭は発生しません。参加者間のゼロサムゲーム。パイが奪われるのは、ゲームからドロップアウトするとき事務局に支払う辞退金です。
つまり、参加者がみな結託して賞金と負債を再分配すれば、誰一人損をすることがないということです。いわゆるパレート最適です。

しかし、負ければ「いかなる方法を用いても負債は回収する」といわれ、疑心暗鬼にとらわれているプレーヤーは奪う選択肢より他はなく、ゲームを通じて儲けようとする者すらいます。
各人にとっては合理的な判断をした結果、勝者と敗者が決定する、この状態がナッシュ均衡です。

ナッシュ均衡とパレート最適が一致していないとき、有名な「囚人のジレンマ」が発生しています。助け合えばよりよくなるが、自分のことを考えると全体が悪くなってしまうという命題が、物語全体の軸となっています。

「極楽の長い箸」「情けは人の為ならず」「うばい合えば足らぬ わけ合えばあまる」
昔からの説話にも有名な評語にも助け合いは大切だとあります。
それがなかなかできないのは、ヒトは本質的に生物であり、生物は奪い合いが原則だからでしょう。
人間は技術を生み出し、計画的に食糧生産、貯蔵、分配をすることで豊かになり、また共同体や社会の概念も発達していきました。

本作では、フクナガという男(女)がゲームを通じ、ナオや秋山と対決し、協力する中での変化も描かれています。非常に人間らしさを感じます。

このマンガは、高校生ぐらいの時から集めだして、最終的には心理学を志望するきっかけとなりました。(結局数学が悲惨でお隣の教育学になりましたがT_T )
同時期に聞いていた、敬愛するバンド”味噌汁's”の「ジェニファー山田さん」とともに、人にちょっと優しくなろうと決めたきっかけでもあります。




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