【窃盗症は依存症か】窃盗症は学習性精神病だったぞ

万引きというワードは、カジュアルに小物を盗むというイメージがあって、窃盗という犯罪であることの重さが軽んじられているような気がしている。

その昔、ある女性タレントがテレビ番組で子供の頃に駄菓子屋から数人がかりで段ボール箱ごと盗み出して、店を潰してしまったという話があったけれども、小さな盗みならと考えるのも軽率で、そのような人間が100人いたらたちまち店は傾く。

薄利多売で利益を得ているスーパーにとってはそれは深刻な問題で、ときどき放映している万引きGメンの特集などでは、モザイク人間がお詫びしてうなだれている。万引きGメンを金で雇わなければ、万引きという名の窃盗行為でもっと店はダメージを受けてしまう。

しかし、この万引きする人も、盗人と一目で見えるわけではなく、学生だったり、ただの主婦だったり、まるで魔が差してしまったといわんばかりに縮こまっている。様々な理由があるけれども、精神的な理由もあるようで盗み癖を持っている人が一定数いるらしい。


京都大学、大学院情報学研究科、MRCラボクリニックの研究グループは窃盗症を引き起こすと考えられる視覚的な手がかり刺激に対して、健常者には見られないような視線の動きと脳活動の反応が窃盗症患者に見られることを明らかにした。

窃盗症クレプトマニアとは、ものを盗みたいという衝動や欲求を制御できず、窃盗を繰り返してやめられない精神障害のこと。犯罪と直結する深刻な社会問題となる精神障害であるけれど、科学的な研究はほとんど行われていなかった。

しかも、この精神病による万引きの場合、刑罰を与えてもやめられないので、適切な治療が再犯を防ぐ鍵になっていた。一方では、行為嗜癖は不利益な結果になるとわかっていながらも、、特定の行動への衝動が抑えられず何度も繰り返す精神障害。これは、ギャンブルやインターネット、ゲームなどに対する依存は、覚醒剤やアルコールなどの物質を対象とする物質使用障害と同様のメカニズムが関わっているとされている。

これまで、薬物依存症における脅迫的な薬物追求は薬物を摂取することによるかイラクへの渇望や、薬物がないことによる離脱への嫌悪といった感情的な問題で説明されてきたが、

近年では薬物依存症は不適応な学習が成立してしまったために生じているものであると考えられている。

たとえば、アルコール依存症の場合、アルコール摂取と同時に、接種していた周りの環境を関連付けで学習してしまった結果、そのような環境が手がかりとなって、強い渇望が引き起こされることがわかってきた。つまり、枝豆が目の前にあるとビールが飲みたくなるような気分になるアレ。

今回の研究では、窃盗症患者11名、健常者27名に協力してもらい、窃盗への渇望を引き起こすと考えられるスーパーマーケットの風景や販売されている商品、それらとは関係ない外の風景などの画像やビデオを呈示した。

研究対象者にはアイトラッキング装置で視線の追跡を記録し、脳の前頭前皮質領域の活動を測定した。

計測の結果、窃盗症患者では、視覚的な手がかり刺激を含む画像に対して、視線の注視点、瞬き、瞳孔の変化などから構成される視線のパターンがほかの画像の視線パターンと異なることが示された。同様に、前頭前皮質の活動パターンにおいても、窃盗症患者だとやはり大きく異なっていた。一方で健常者ではそのような違いが見られなかった。

これらのことから、窃盗症患者は窃盗行為に関連する視覚的な手がかり刺激を学習してしまった結果、窃盗行為を渇望することが示された。この研究はほかの依存症と同様のメカニズムが関わっている可能性を初めて示唆することになった。

窃盗症が依存症と同じものであると理解が周囲に広間なければ、この精神障害に悩む人は減ることはないだろう。依存症は個人だけで治すことはとても難しい。現状、そういった理解が広まってないように見えて、本人を周囲が責め立てているようなイメージがある。芸能人も薬物依存症と闘っている人たちがいるから、陰ながら応援をしていきたい。

#日本の研究

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