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【英論抄読】児童・青年におけるFMS-システマティックレビューとメタアナリシス

📖 文献情報 と 抄録和訳

児童・青年におけるFMS-システマティックレビューとメタアナリシス

O'Brien W, Khodaverdi Z, Bolger L, Tarantino G, Philpott C, Neville RD. The Assessment of Functional Movement in Children and Adolescents: A Systematic Review and Meta-Analysis. Sports Med. 2022 Jan;52(1):37-53.

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DOI, PubMed(Full text), Google Scholar

💡 ポイント

✓姿勢制御、安定性、柔軟性、神経筋協調性、バランスなどの機能的動作の熟練は、生涯にわたって組織化されたスポーツに従事し、怪我をしないようにするための重要な構成要素である。
✓Functional Movement Screen™(FMS™)は、機能的動作を評価するための卓越した評価ツールであるが、これまで、主に競技者集団におけるFMS™に焦点を当てた研究が行われてきた。
✓本研究は、小児および青年を対象としたFMS™のデータを統合し、身体活動、体育、スポーツの現場で働く専門家に規範となる参考値を提供する初めての試みである。
✓FMS™のスコアには、性差や年齢差の可能性が、児童と青少年のサンプルで明らかになった。また、この集団では、肥満度指数と機能的動作熟練度の間に明らかな負の関係がある。
✓小児および青年における発達の軌跡および成熟の節目がFMS™の熟練度に及ぼす影響についてより深く理解するために、さらなる縦断的研究が必要である。

📚 概要

[背景]
Functional Movement Screen™(FMS™)は、健常者であっても傷害のリスクとなりうる潜在的な障害を示唆する、人間の動作の評価法である。FMS™スコアは、スポーツ選手と成人の両方において、よく報告されている。しかし、学齢期の小児および青年におけるFMS™データの包括的な系統的レビューおよびメタ解析は、これまで行われていない。

[目的]
本研究では、児童・青少年の機能的動作能力、特にFMS™を用いて評価した場合の機能的動作能力を系統的に検討・分析し、この集団におけるFMS™の初期標準値を設定し、さらに男女間、学校レベル(すなわち、小学校レベルの児童・青年と中高校レベルの児童・青年との間)、児童・青年の体格指数(BMI)の差に基づく機能的動作能力の差を推定することを目的とした。

[方法]
PRISMA(Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-Analyses)ガイドラインに従い,8つのデータベース(MEDLINE,SPORTDiscus,CINAHL,Web of Science,EMBASE,ERIC,PsychINFO and PubMed)の横断検索から,日付制限なく,2020年12月までプロスペクティブ研究を同定した。一次メタ分析では、学齢期の子供と青年のFMS™スコアの全体値を、発表された研究全体で推定した。さらに3つのサブグループメタ分析では、公表されている研究のうち、学校レベル、性別、BMIによるFMS™データの比較を推定した。FMS™データは、R Studioで利用できる多くの異なるメタパッケージ(Schwarzerら、Meta-Analysis with R, 1st ed, Springer International Publishing, Berlin, 2015)を用いてメタ解析された。

[結果]
合計19件の論文がシステマティックレビューに含まれた。メタ分析の結果、加重FMS™平均スコアは14.06、標準化Tau値は0.56であり、FMS™平均の研究間変動は中程度~大きいことが示された。男性(加重FMS™平均値13.91)と女性(加重FMS™平均値14.56)のサンプル間のFMS™平均値の差は、小さな効果量(標準化平均差-0.27)と考えられるものであった。FMS™の平均値の研究間変動は、中高校生のサンプルでは約5倍であった(Tau値の要因差5.16)。最終的なメタ回帰では、BMIとFMS™スコアの間に負の相関(r = - 0.42)があり、健康体重と過体重の児童・青少年の間でFMS™スコアに中程度から大きな差があることが示唆された。

[結論]
この系統的レビューとメタアナリシスは、小児および青年のグループから発表されたFMS™データの新規かつ重要な統合を示すものである。本研究は、FMS™スコアにおける性差および年齢差の可能性、ならびにBMIと機能的運動能力との明確な負の関係を示唆するものであった。発達の軌跡と成熟の節目がFMS™の熟練度に及ぼす影響をよりよく理解するために、より縦断的な研究が必要である。また、機能的運動不足に陥りやすい「リスク群」の機能的運動習熟度を改善しうる介入の種類を特定し、体組成の変化がこれらの介入とFMS™スコアの改善との関係を媒介するかどうかについても、さらなる研究が必要である。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

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2022年に、Sports Medicineから、こうした論文が発表されたことは大変意義深い。
FMSは障害予防に対するスクリーニングとして多くの研究が散見され、否定的な意見も多い。そこに『発達×FMS』という新たな研究テーマが見出された。
昨今における医療費削減の流れは、きっと高齢化の影響のみならず、これから先もずっと付きまとうだろう。だからこそ、スポーツ障害の予防だけでなく、「将来への健康増進」のためのFMS、というコンセプトはけっこう面白いんじゃないかと思った。

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