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原発と放射能を本気で考える 韓国映画【パンドラ】

2016年に韓国で公開された映画。この映画の存在を全然知らなかったのですが、それもそのはず、日本で公開しなかったようです。Netflixにしれっと入っていてFilmarksの評価もなかなかだし、なんと言っても原発を題材にした映画なので、意気込んで視聴しました。

【あらすじ】
原発のある街で子供の頃から育ったジェヒョク(キム・ナムギル)。発電所で働きながらも、原発には否定的な気持ちを持っていて、そろそろこの街を離れて別の生き方をしてみたいと思っていた矢先に大地震が起こり、老朽化していた原発で事故が発生。危機的な状況にある中、事態を隠ぺいしようとする政治家や原発上層部がいる一方、必死にメルトダウンを阻止し、住民の命を守ろうとする人たちがいて…。

この映画は福島原発事故をモデルにしていますが、完全にフィクションとして観た方がいいと思います。それでも身につまされることがたくさんありました。

どうにかして事態を隠ぺいしようとしたり、人命より経済を優先しようとする人々はたいがい権力者で、彼らが実権を握っています。挙句の果てに半径10キロ以内にいる人たちの状況が漏れないよう、情報統制(電波妨害)しようとさえする…。

一方、事態を収束させようと命をかけて奔走したり、目の前にいる町民を放射能から守ろうとする人たちは、たいがい発言権を持たない市井の人々。どの映画でもこういった構図が出てくるのは、それが現実だからなんだと思います。どうして人は権力を持つと、他人の命を軽んじる方策を立てるのでしょう?

どうにかしてメルトダウンを止めようとし、放射能を浴びてしまった原発職員や、爆発を収束させようと現場で作業する消防隊員たち。そして、原発事故を知って、少しでも遠くに逃げようとする人々…。まさに、どこを切り取っても地獄絵図。そして日本もあの時、ちょっと間違えばこうなっていたのかもしれない…と、恐怖が沸き上がってきました。

とはいえ、私はこの映画の以前にHBOのドラマ、チェルノブイリを視聴していまして。このドラマで初めて、放射能がどれほど恐ろしいものか知ったのです。

だからこの映画での原発職員の描写は、リアリティラインに欠けているのは否めません。放射能は本当に凄まじい。HBOのチェルノブイリでは、放射能を浴びて数週間後に亡くなった原発職員は体中の細胞が破壊され、顔が溶けてなくなってしまったという、凄まじい描写があります。

でも、この映画には時間を忘れて見入ってしまうほどの吸引力(要は面白さ)があるので、だからこそ身につまされるところがあるし、有事の時に人はどう選択すべきなのかと考えさせらます。そして何よりも「原発」について、今一度考え直すきっかけになりました。

パンドラ」は、Netflixで2時間ちょっとでサクッと観れるし、映画としてちゃんと面白いので、ぜひたくさんの人に観て欲しい一本です。
それと同時に、もし原発や放射能の現実を知りたい方には、「チェルノブイリ」がおすすめ。こちら、数ある傑作を生みだしているHBO作品の中でも、最高傑作と言われているほどの重厚な作品です。

極私的スキ度★★★★★★★(7)

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