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アキ・カウリスマキ監督映画「枯れ葉」感想

「交友関係が狭く、仕事と家の往復、独身で中年、そんな自分に刺さっちゃって」という話をポッドキャストで聞いて、それはまさしく自分のことでは、と思ったのと、大島依提亜さんのポスターデザインがかわいいのとで気になっていました。観てきました。

以下ネタバレありの感想です。


全体的に孤高で、上品だな~と感じた。なんでなんだろう。
お金はないけど心は貧しくはない、みたいな人間的な豊かさがかっこいいのかな。人間的な豊かさとはなんだって話ではあるけど。
洋服の色がきれい。大事な時にジャケットを着る。ワンピースに着替える。花を贈る。部屋の壁に色を塗る。映画を観る。音楽を聴く。戦争に怒る。殺処分が予感される犬を引き取る。そういうのが人間的に映る。
つましく危うい暮らし(アラフォーで3K肉体労働、雇い主の逮捕、深刻なアル中など)が、曇り空や雨を背景に描かれるけど、ホラッパ、アンサ、それぞれに人間的な誇りを感じる。

ホラッパ、アル中なんだよな。
でも酒をやめて愛を手にした。いいな。
ひとりが好きって言ってたのになんで変わったんだろう。
ホラッパもアンサもお互いどこに惚れたのかよく分からなかった。念のために書くけど、そういうのを描きすぎないのが好きだったから、分からないのがダメという意味ではない。孤独感や、人との距離感がマッチしたのか。
私は、自分が酒好きのだめ人間だから、ホラッパのほうに感情移入しがちで、いつ野垂れ死にしていてもおかしくないところまで来ていたホラッパにとって、アンサは愛する人というかもう希望そのものだろうな。酒をやめるのも大変だったと思うけど、アンサにまた会いに行く勇気があってそっちもすごい。
書いているうちに、ホラッパだけちゃんとした人間にならないでくれ~私を置いていかないでくれ~という気持ちが湧いてきた。

最後のシーンで、ホラッパが松葉杖にも関わらず、二人とも歩くのが速くてなんかウケた。
映画を観る前は、独りでも人生は悪くないと思わせてくれる着地なのかと期待していた。それとは違ったけど、希望的かつ素朴な終わり方で素敵だったと、素直に感じちゃったな。


そう言えば、全体的にみんな無表情だった。会話もつぶやくようなぎこちなさ。それが陰鬱な空気な中におかしみを作っていたのかな。後半に出会う犬に「チャップリン」と名付けられていたのには妙に納得感があったかも。そういうおかしみ。
固定カメラ的な画作りも多いと思うんですが、舞台を自席から見ているような感覚になり、好きな距離感だった。

音楽が、次のシーンにつないでいくのがひたすらかっこいい。抑圧された表情とセリフの代わりに、音楽が語る感じ。この演出が好きな私は、映画に対して整合性や説明をあんまり求めていないのかも。
ホラッパが心を決めてるっぽいシーンで出てくるギター&シンセの女性2人組バンドの音楽がすごくよかったな。絶望的な歌詞を無表情で歌うのになんだか、やっぱりおかしみがあって。
帰宅後にイラストのポスターが販売されているのことに気が付いて、欲しくなってきたかも。

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