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散文短歌 #8 「ツンデレな彼女。」

たまに仕事終わりに実家に寄る。

その日は、食材のおすそ分けあるからと連絡があり帰った。21時。母は洗い物、父はテレビを観ながら晩酌。「ただいま。」「おう、おかえり。」畑で採れた野菜、刺し身を受け取る。カチャカチャ食器を洗う音、淡々と今日のニュースを伝えアナウンサー。会話は無く、とても静かな空間。

愛犬が亡くなり、もう少しで1ヶ月。帰宅すればいつも愛犬は長座布団に寝っ転がっていた。しっぽを振って近寄ってくるので撫でて戯れる。満足すると、急に唸って噛みつくようなツンデレなやつだったけど、それはそれで愛らしかった。
もう、そこには居ない。けれど、まだリビングには長座布団が置いてある。「全部片付けてしまったら寂しいからな。」そう父が言いながら長座布団を寝室まで運んだ。寝るときはいつも両親の隣で寝ていた。亡くなった後も、長座布団だけ運び一緒に寝ているそうだ。
娘のように可愛がっていた愛犬が居なってから、元気が無くなっていく両親を見ているのが辛い時がある。まだ日も浅いし、受け入れるにはまだまだ時間もかかるだろう。また新しい犬、家族を迎い入れてあげれば気持ちも楽になるのかなと思うが、飼うにあたっていろいろ覚悟が必要だ。


「あまりにも綺麗に逝ってしまうから 今日もあなたがいると思った」

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