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いいM&Aはいい料理

M&Aと聞くと、なんだかよくわからないという人が多いと思います。企業の合併買収、なんとなく聞いたことがあるけれど難しいイメージです。
私のM&A初体験はカンボジアの人材会社の買収でしたが、その時もワクワクするものの、やはり何がポイントかよくわからなかった覚えがあります。

しかし、実際に試行錯誤しながら実践していくと、あるわかりやすい例えを思いつきました。それは...

M&Aとは料理みたいなもんだ。

というものです。
「ん?」とお思いかもしれませんが、M&Aを料理に例えて、ポイントを3つ順に説明させてください。(シェフがM&Aをする人、食材が買収する会社と考えてください。)

まずはじめに、シェフはどんな食材を買うか、今冷蔵庫にある食材との組合わせを考えることから始めます。ここに戦略性がないといい料理はできません。(もしかしたら今ある食材だけで作りたい料理ができるかもしれません。そうしたら、買収はしなくていいのです。)
例えば、「今じゃがいもとにんじんと玉ねぎがあるから、あとは牛肉を買えばビーフカレーができるな。」といった感じです。何を揃えたらいい料理になるか、ここでじっくり考えます。

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M&Aをする人も同じように、今自分の会社がどんな事業をやっていて、新しく買収するとしたら、その既存事業と組み合わせて、どんな相乗効果を生み出せるのか?という点を徹底的に考えます。ちなみにこの相乗効果をシナジーと呼んだりします。
実はM&Aを実行する前のこの段階が一番重要です。買う前の事業プランニングこそ、M&A成功の鍵です。
(ときには最高級A5ランクの牛肉みたいに、素材単体だけでも美味しい会社を買収するという場合もありますが、それでもプランニングは重要です。)


次にシェフは計画した通り、食材を購入します。
ここで2つ目のポイントです。いいシェフはいい食材の選び方を知っています。
例えば、青い魚は鮮度が落ちると黒く変色していくので、鮮やかな赤色のものを選ぶ。にんじんはへたがなるべく小さいもののほうが美味しい。
といった感じです。肉も魚も野菜も乳製品も、幅広い知識が求められます。

M&Aでも同じように、買う対象となるいい会社を選ぶ方法を知らなければなりません。
例えば、その会社が属する市場は今後どうなるか、競争状況はどうか、財務状況はどうか、法務リスクはないか、などなどなど非常に多くのチェックポイントがあります。
実際は、弁護士や会計士らとチームで進めていくので、細かいところはその都度聞いたり調べながらやるわけですが、全体像は把握しておくべきです。

*この時、安売りしていたからと言った理由で計画にない食材を買ってはいけません。よくある話ですが、結局使わなくて冷蔵庫で腐らせてしまったりします。これはいいシェフとは言えません。


最後に3つ目のポイントは、購入した後です。
計画どおりにきっちり料理をすることです。食材を買ってきて一安心、料理はまたにしようとのんびりしてはいられません。食材の鮮度はどんどん落ちていってしまいます。1つ目のポイントで計画した通りに料理を進めます。
ところが、ここでは買ってきた牛肉の脂身が意外と多かったり、冷蔵庫にある玉ねぎが思っていたより少なかったりと、不測の事態が発生します。
そんな状況でも、計画を修正したりしながら料理を完成させなければいけません。

M&Aも一緒です。買収前に作った事業計画をもとに、スムーズに買収後統合作業(Post Merger Integration、通称PMI)をやります。顧客の引き継ぎや従業員との関係構築、必要であれば雇用契約の再締結、会計システムの統合などなど、やることはたくさんあります。さらに既存事業との戦略的提携など買収目的の達成に向けて動いていきます。
ここでも当然、計画通りにいかない部分がでてきます。買収した後に従業員がやめてしまった、見えていない顧客とのトラブルがあった、などなど様々な問題が起きます。
それでも、料理を完成させるように、買収の目的を柔軟に達成していく必要があります。M&Aとは、買うことがゴールではなく、買収目的の達成がゴールです。これを達成してこそ、ミッションクリアです。


以上のように、一見分かりづらいM&Aは料理に例えるとわかりやすいと思います。まとめると、
①今ある食材をイメージして、何を新しく買うか、そして何を作るかをしっかり考える。
②買うと決めた食材の質を見抜いて、購入する。
③購入した食材と既存の食材を使って計画した料理を完成させる。

ということでした。M&Aの場合、「食材」というワードを「事業」や「会社」と言い換えてもらえればOKです。

いいM&Aはいい料理です。
まだまだ私もシェフとして未熟ですが、これからも精進していきたいと思います。

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