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卯月短歌 20首vol.11

1.くっきりと 春が現れ 長雨と
強風の後 燦々と降る

2.鼻をつく スパイスの香り 見慣れぬ文字
異国の人の 強(したた)かさよ

3.冬服を 整理してみる ぽっかりと 
出来た余白に 春風そよぐ

4.古ぼけた ビルの入り口 ピカピカの
自販機デビュー 違和感と共に

5.もう少し 君の寝顔を 見ていたい
網膜の奥に 焼き付けるほど

6.闇の中 浮かび上がる 夜桜は
狂気を孕(はら)み 我を見下ろす

7.行儀良く 並んだパン屋の 陳列棚
どの子も愛しく トングが迷う

8.ホタルイカ 噛む時腸(わた)の 香りがし
人間も同じ 腹の底見えぬ

9.確かめては いないがたぶん 両想い
その状態に 名前付けたい

10.皆同じ スーツ着て歩く 入社式
初々しさと ぎこちなさ同居

11.桜咲く 皆気を取られ 知らぬ間に
居なくなりにし 百舌鳥の鳴き声

12.降りしきる 雨粒たたえた 花びらの
濡れながらなお 逞しく咲く

13.お気に入り だったセーター 出番なく
防虫剤だけ 取り替える春

14.チューニング ズレたギターの 音色みたい
人も同じだ 永遠合わない

15.月が明け 気持ちざわめく でも花は
雨粒孕(はら)み 微動だにせず

16.この桜 一緒に見たい 人きっと
これから先も 傍にいて欲しい

17.満開の 桜は少し もの悲し
後は散るのみ 躊躇いもせず

18.呪いなら きっとあの花 狂おしく
嵐のように 散り尽くす様

19.少しだけ IQ足りない ただそれで
誰かと誰か 分ける愚かさ

20.桜見て 騒いでいるのは 人ばかり 
樹々は黙々 ただ泰然と

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