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映画『氷の微笑』 デ・パルマかと思った。(ネタバレ感想文 )

監督:ポール・バーホーベン/1992年 米(レストア版日本公開:2023年6月16日)

30周年記念4Kレストア版で初鑑賞。
ええっ!?初鑑賞!?
当時、めちゃめちゃヒットしましたけどね。実は初鑑賞。
この頃、ヒット映画とか馬鹿にして観てなかったの。今でもだけど。
今でこそ「鬼才ポール・バーホーベン」だって知ってるけど、当時『ロボコップ』(1987年)、『トータル・リコール』(90年)を大ヒットさせて一躍有名になって間もないオランダ人監督(当時50代)が、イカレポンチだなんて分かるのはもっと後だったじゃない?

撮影ヤン・デ・ボン、音楽ジェリー・ゴールドスミスですってよ。
懐かしい。
ヤン・デ・ボンは『スピード』(94年)で監督デビューする直前で、本作辺りが撮影監督キャリアの最後くらいではないでしょうか?
ジェリー・ゴールドスミスは超大御所。彼が映画音楽を手掛けた作品は山ほどあります。私の中では『猿の惑星』(68年)。
でもこの映画、いま観ると、過激な暴力&性描写というよりも、過剰な音楽の方が気になる。てゆーか、もう、全体的にやりすぎ(笑)

そして、ビックリするくらいヒッチコック風味でした。
デ・パルマかと思った(笑)

細かいことを先にいうと、殺し方は『サイコ』(60年)だし、海岸沿いを走る車を俯瞰する絵面は『鳥』(63年)を想起させます。海岸沿いの道路のカーチェイスは『断崖』(41年)にも思えるし、アパートメントから見える窓外の風景は『泥棒成金』(55年)にも思えます。
そして何と言っても、話は『めまい』(58年)ですよね。
アパートメントの螺旋階段もゴールデンゲートブリッジも金髪に染めることも『めまい』を暗示しています。
『めまい』の進化系と言えば、デヴィッド・フィンチャー『ゴーン・ガール』(2014年)です。
『氷の微笑』と『ゴーン・ガール』は根底が一緒。
シャロン・ストーンもロザムンド・パイクもキム・ノヴァク。
いや、それは違うな。

この時代、同じくマイケル・ダグラス主演の『危険な情事』(1987年)辺りから、女性を中心としたサスペンスが流行ったんですよ、たしか。
当時、本作もそのブームの中の一作で、より過激になった一本という扱いだったような気がします。

でも、いま観るとバーホーベンらしい視点に気付かされます。
「足の組みかえ」で有名な取り調べシーン。
弁護士も立てずに女一人でオッサン6,7人に対峙するんです。
これって、「権力と戦う女性」という時代の象徴に思えます。例えば日本では、初めてのセクハラ裁判が1989年(平成元年)ですからね。ちょうどこの時代の機運と合っていた。
私が最近観た老成した(?)バーホーベンの『ベネデッタ』(2021年)にも通じるものがあります。

ただ、マイケル・ダグラスがシャロン・ストーンと「最高の」夜を過ごすじゃないですか。男としては、コトに至りそうで至らない方が「ハマる」ような気がするんですけどね。どうでしょう?

(2023.06.17 シネ・リーブル池袋にて鑑賞 ★★★☆☆)

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