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映画『12日の殺人』 ミステリーというより刑事の人間ドラマ。(ネタバレ感想文 )

監督:ドミニク・モル/2022年 仏(日本公開2024年3月15日)

ドミニク・モルという監督は、初めて観た『悪なき殺人』(2019年)が面白かったんです。

本作は一転、奇をてらった事が一切ない作品です。
ストーリーは時系列通りに進行し、事件の発生以外はほぼ警察側の視点で描かれる。
実に丁寧な映画で、遺体からスマホを取り出すシーンで私はグッときたんです。証拠品として収めるビニール袋のリアル。細かい描写がリアルなのって重要。神は細部に宿る。

私は、この映画の面白さはミステリーや謎解き的なことよりも、人間ドラマとしての面白さだと思うんです。
実際タイトルも、邦題は「殺人」なんてミステリー要素を強調していますが、原題は「12日の夜」なんじゃないかな?

興味深いのは、ミステリーの人間ドラマって、犯人か被害者に焦点を当てるパターンが多いと思うんですが、本作は刑事たちの(特に主任の)ドラマなんです。なんなら、犯人はおろか、被害者すらどういう人間か、あまりわからないままのような気がします。
そう考えるとこの映画は、ミステリーというより人間ドラマで、その職業がたまたま刑事だったというような印象すら受けます。

もう一つ興味深かったのは、常に「男と女」の話なんです。
被害者の女性。容疑者の男達。刑事同士の話ですら、結婚と離婚の話。
最近はとかくLGBTQ映画が多い中、徹底して「男と女」。
フランス映画か!フランス映画だ。
でもこれ、この話の重要なテーマだと思うんです。

「殺された理由知りたい?女だから」

それで言うと、停滞した捜査を再び動かすのは、女性判事と女性刑事なんですよね。これ、興味深い。
あと、この判事役のアヌーク・グランベールというベルギーの女優さん、61歳なんだそうですが、可愛くない?(<何の話だ)

主人公の主任刑事は自転車でトラックをグルグル回ります。
これは、山に囲まれた田舎町で、先の見えない捜査をグルグルと続ける刑事達の姿に重なります。
実際、途中で抜ける刑事は山の向こうへ消えていきますしね。

なので、主任刑事がトラックからロードに出るラストは、捜査の新たな展開を予感させる、ある種の「希望」なんだと思います。
ま、ツール・ド・フランスの国だしね。

(2024.03.20 新宿武蔵野館にて鑑賞 ★★★☆☆)

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