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映画『きみの鳥はうたえる』 (ネタバレ感想文 )俺の中で空前の石橋静香ブームだったんだけど

監督:三宅唱/2018年 日

『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』(2017年)でも書きましたが、石橋静香はノースリーブと不機嫌顔が似合う女優いい女だと思うんです。

「大豆田とわ子」の頃から予兆はあったんですが、半年ほど前に私の中で空前の石橋静香ブームが起きましてね。
ちょうどその頃に観た『DEATH DAYS』(2021年)にも出てたんだ。

『あのこは貴族』(2020年)にも出てましたね。いい女優だな。

そんなマイブームだった時期のケーブルテレビ放映を録画して半年ほど放置(熟成)していたものをやっと鑑賞。

いやもう、石橋静河と柄本佑と染谷将太の演技をバシッと決まった四宮秀俊カメラで観られる悦び。それだけで星5。それだけが星5。

映画館のスクリーンで観たら高評価だったろうな。
残念ながらテレビ画面で見ちゃったもんだから粗ばかり気になっちゃって。

端的に言えば、それだけ話にのめりこめなかったんです。
106分の作品だそうですが、体感はもっと長い。
その長さが良い場合もあるんだけど、内容的には短編向きだと思うんです。NHKの単発45分ドラマだったら、ものすごくいい話だったかもしれない。
クラブのシーンとか、長すぎて腹立ってきちゃってさ(苦笑)
だって、「あたし、面倒くさいの嫌だって言ったよね?」チャンチャンって話でしょ?どう考えても短編向きだと思うんです。

主人公は、名無しの「僕」。
おそらく原作がそうなのでしょう(原作未読)。だとしたら小説は一人称で書かれているはずです。
ところがこの映画、時折、視点が主人公と違うところに行っちゃうんだ。
主人公の「僕」が知り得ない情報が描写される。簡単に言えば三人称の描写。
なんだかいう中年のバイトの先輩が石橋静香と店長の密会現場を見ちゃうシーンとか、あんなもん写す必要全然ない。それ、誰視点の描写なのよ?「僕」自身が目撃しちゃったならいいよ。でも彼は二人の関係を「聞いた」かもしれないけど「見て」はいないんだから。

むしろ、二人の密会現場は映さない方が観客の想像力を刺激したと思うんです。
実際、染谷将太と石橋静香のどきどきキャンプは、「僕」視点で一切描写しないから、面白いわけじゃないですか。
そこで何が起きたか、どうしてそうなったか、「僕」が周囲の様子等から手探りで知っていくのを観客も一緒に体験し、「僕」の気持ちの変化を観客も感じるってもんじゃないんですか。
「刑事コロンボ」じゃないんだから、観客が神の視点に立っちゃいけない話だと思うんですよ。

百歩譲って、染谷将太視点はまだいいんです。
男2人の調和のとれた生活の中に「小鳥ちゃん」が迷い込んでくる話だから。彼ら2人の物語という捉え方はできる。
(もっとも、上記どきどきキャンプの描写と矛盾しちゃうけど)
でもねえ、店長とバイトの先輩が飲みに行ったとか、新人バイトと他のバイト女子との色恋とか、いらないの。そしたら「青春群像劇」になっちゃう。
『海炭市叙景』(2010年)だったらそれが正解だけど、この映画だと最初から構造自体が違う。

そう考えると、原作と違うところで余計な事をしているような気がします。
1981年の原作なんでしょ?クラブはねーな。ディスコはあったかもしれないけど。
そうなってくると、原作の持つ(であろう)80年代の若者の空気感を、果たして約40年後の今の空気感に置き換えられたのか?って疑問も湧いてきます。
いやあ、最近、荒れ狂う70年代若者の空気感映画『八月の濡れた砂』(1971年)を観たばかりだからさ。れ!れ!言うとるからね、予告編は。酷い時代だな(笑)

この映画、2018年の若者は「わかる!わかる!」「ここに俺がいる!」って共感するのだろうか?
オジサンウケはいいような気がしますけど(<お前もオジサンだけどな)。
つまりね、80年代に若者だった今のオジサンが「俺が今の時代の若者だったらこんなだったかもな」というある種の郷愁ノスタルジーのような気がするの。
まあ、監督は38歳と若いんですけどね。

ごめんね。「視点」と「空気感」にうるさいんだ。
あと、グダグダした青春物に厳しい。ごめんね青春。

本当のことを言うと、薄々気づいてるんです。
この手の冗長な演出をする監督が嫌いなんだと思う。
今流行りの濱口竜介とか今泉力哉とか、昔流行った相米慎二とか。

(2022.09.04 CS録画にて鑑賞 ★★☆☆☆)

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