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彼は狂人(日記)

 あんなに好きだったはずなのに、「好きだったよね?」と確認しなきゃ不安なのは何故だろう。好きだったあの時の感情は確かに私から放たれたものなのに、その事実を疑ってしまう程“好き”という気持ちが出てこない。
これを簡潔に言う言葉が「倦怠期」なのか、はたまた取り返しがつかないところまで進んでしまったのかは、私より周囲の人達の方がよく分かるんだろう。口を揃えて「別れた方がいい」と言われた時点で最良の選択はひとつしかない。
全てがクリアに見えているつもりだが、未だ決定的な1歩を踏み出せない理由は、“情”。情の正体が、“同情”なのか、“愛情”なのか。それとも、彼に対し好きの感情を抱いていた自分を正当化したいだけなのか。どちらにしろ応えを出す時間が惜しい。その時間を使って運命の相手を見つけたい。見つけたいと思いつつも、すんなり彼を手放す程の薄情さはまだない。だが…と頭の中は堂々巡り。


彼からの連絡が無くなって今日で4日目。
「毎日LINEするの大変だったら止めてもいいよ」と送ったら本当に止めやがったのだ。
「LINE止めてもいいよ」は、「急にこんな事言い出すって事はそれだけ切羽詰まってるの。“なんかあった?”の一言が欲しくて、そこから話し合いしたいんだけど。」という意味の合図、だと思ってたのは私だけだった。言葉を言葉の通りにしか読み取れない彼は、文字通り、止めた。

「そう言われたから、じゃあ自分の時間作るのにいい機会かなぁ〜って思って。最近全然時間なかったし。」

読解力のない彼からの言葉は裏の意味なんてない。それでも、「自分の時間がなかった」の裏には「君と付き合う時間に押し潰されて趣味に費やせなかった」の意味が隠れているものだろう。そんなこと誰が言ったの?なんて聞かれても回答に困るが、往々にして日本語とはそういうものである。

言葉と言葉の間には行間があって、本当の意味はその行間に隠れているものだ。
「行けたら行くね」は来ない人が使う言葉で、「また連絡します」は、「もう連絡してこないでね」の意味。友人の彼氏には「優しそうな人だね」というのが決まっている。
そんな事学校では教えられないが、日本で生まれ育ったなら暗黙の了解と言うやつで、自然と身に付くものだと思っていた。

身に付かなかった狂人が彼だ。

視野を広げて見てみた。
もしかしたら彼は、社会の濁った空気に害されること無く素直に育ったのかもしれない。子供の言葉に裏はない。「悲しい」も「嬉しい」も、口から出た感情はそのままを表現している。…てことは彼は子供なのか?30歳を過ぎ、四捨五入したら来年で40歳になる幾分も歳上の彼は、まだ、幼児期の途中なのか?それはそれで狂人だ。発達段階を着々と進んできた(気でいる)私には荷が重い。それに私は身も心も歳上の方が好みだ。逆コナンくん兼ピーターパン症候群はお断り願いたい。

理解ができない事はたくさんあるし、住んできた所も環境も違う2人の価値観が合わないことなんてよくある。擦り合わせをするつもりもないし(合わせなきゃいけない事は話し合いたいが)ひとつに絞るものでもないと思う。「あなたの考えはそうなんだね。私はちょっと違ってるんだけどね、」なんてトークテーマのひとつになれば充分。そう思っていたのだが、理解の範疇を大きく上回るとキャパオーバーというやつで私の頭がBANされてしまった。
頭の中では藤井風の「何なん‪w」の「何なん!」の部分だけが大音量でヘビーリピートされてしまう。使い慣れていない横文字を乱用したくなるくらい私のブレインは再起不能だ。

BAN!!!!!!


これから私はあと何回大爆発を起こせばいいのだろう。穏やかな日々を過ごしたい。小鳥のさえずりや川のせせらぎ、そよ風に身を委ねながらのんびりお散歩をしたい。今や彼の存在は雑念だ。早急に排除しなければ脳の雑念を処理する場所が過労死してしまう。

正しい処理方法は分かっている。分かっているのに動けない。動けない理由を仕事やプライベートと言える期間もタイムリミットが近付いている。

どうしたらいいのか、分かるようで分からない。


彼は今日も自分の時間を大切にしているのだろう。
狂人だ。

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