ぺしゃんこ。

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詩について考えることが好きで、詩について考えた人達の言葉を集めています。谷川俊太郎・寺山修司・西脇順三郎。映画とモダニズムと抒情。 サイトhttp://pesyanko.itigo.jp/wiki/index.php

マガジン

  • 【映画の中の詩】

    映画と詩の交歓にまつわる文章を綴ります。

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    エッセイ レヴュー その他雑文

  • 詩歌ーmy poetry

    自作の詩歌です

  • ペーパー・ムーンの詩学~遙かなる二十世紀詩

    現代詩とはなにか?をイマジズムに始まる20世紀詩のイメージ革命をたどることで私なりに考えてみました。 T.E.ヒュームから寺山修司まで。

  • 無門関 ZEN & POEM

    『無門関』という古い中国の坊さんの書いた本を読みながら、なぜかしきりと詩のことを考えたのだった。

最近の記事

Backward and in High Heelsージンジャー・ロジャース

「もちろん彼(アステア)は素晴らしかったが、ジンジャーは彼がやったことすべてを後ろ向きに、そしてハイヒールを履いてやったことを忘れないでください」   (ボブ・セイブス『フランク・アンド・アーネスト』) 『ジンジャー・ロジャース自伝』(渡瀬ひとみ訳、キネマ旬報社)を読んで私が感じのは、ジンジャー・ロジャースという人は賢い女性だなあ、ということでした。 ジンジャーは自分を必要以上に大きく見せようとはせず、そうかといって逆に不必要に卑下することもなく、誇るべきところは大いに

    • 【映画の中の詩】『恋愛手帖』(1940)

      ダンサーから女優へーージンジャー・ロジャース 当時話題になったというクリストファー・モーリーの小説の映画化。サム・ウッド監督。 原作にはかなり露骨なラブシーンもあり主演の打診を受けたジンジャー・ロジャースは当初出演をためらいますが、ダルトン・トランボ(『ローマの休日』『ジョニーは戦場に行った』)の脚本を読んで出演を決めます。 そしてジンジャーはこの映画でアカデミー主演女優賞を受賞することとなります。 キャサリン・ヘップバーン(『フィラデルフィア物語』)、ベティ・デイヴィ

      • 【映画の中の詩】『ボディ・アンド・ソウル』(1947)

        虎よ、虎よ!ロバート・ロッセン監督。ジョン・ガーフィールド、リリー・パルマー主演。 『ロッキー』かな?のラストやローラースケートを履いた手持ちカメラで撮影した臨場感あふれる試合シーンなど、後のボクシング映画に大きな影響を与えた作品。 ボクシング映画として、フィルム・ノワールとして傑作の一本とされています。 また主演のガーフィールド、脚本のエイブラハム・ポロンスキーを始めとして、関係者がハリウッドに吹き荒れた〈レッドパージ〉に多数巻き込まれたことでも有名だそうです。 参考

        • 【映画の中の詩】『まごころ』(1946)

          荒野へ! 荒野へ! ーー ブロンテ姉妹 ハリウッド版の「ブロンテ姉妹」の物語です。 アイダ・ルピノ:エミリー オリヴィア・デ・ハヴィランド:シャーロット ナンシー・コールマン:アン アーサー・ケネディ:ブランウェル ブロンテ家の長男ブランウェルは姉妹の物語が語られるときにはいつもダメ男の問題児として描かれ、姉妹の引き立て役なのですが、実は才能豊かで姉妹の創作にも影響を与えたと思われ、評価する動きもあるそうです。 『雑誌の写真なんかで「ひとりとばして」なんて名前を書かれ

        Backward and in High Heelsージンジャー・ロジャース

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        記事

          【わが短歌・俳句入門】俳句はワンダーランド

          このところ歳時記が愛読書になってしまった。いままで一顧だにしてこなかった定型詩の世界にはまってしまったのである。 定型詩を避けてきたのにはわけがある。もともと短歌・俳句に興味がなかったうえに、現代詩なぞを読み始めたころ、「現代詩入門」といった本をいくつか読んだが、そのどれもが口を極めて定型詩(とくに短歌)を攻撃しているのだった。いわく「短歌的抒情は廃棄せよ」「奴隷の韻律」「第二芸術」etc・・・・・・。そんなわけで、すっかり洗脳されてしまい「自由詩こそ現代に生きる人間の歌、

          【わが短歌・俳句入門】俳句はワンダーランド

          映画監督 田中絹代

          田中絹代といえば誰もが認める大女優ですが、日本映画界において二人目の女性映画監督でもあり、近年ではその監督作品が再評価され、注目を集めています。 とりわけ夭折の歌人中城ふみ子を描いた『乳房よ永遠なれ』は評価高まるばかりですが、他の作品にも長い女優としての経験が生かされたであろう人間描写に光るものを感じます。 監督処女作は『恋文』(1953)。 出演は森雅之、久我美子、香川京子、道三重三。 田中絹代主演映画を多く手掛けた木下恵介監督が脚本を提供しています。 彼女の監督デビュー

          映画監督 田中絹代

          【映画の中の詩】銀座化粧(1951)

          詩が必要なとき 成瀬巳喜男監督   田中絹代 堀雄二 香川京子 このシーンだけ見るとロマンチックな関係に思えますがそういうわけではありません。田中絹代の方は好意を持っているのですが、堀雄二は別になんとも思っておらず、このあと香川京子に一目惚れしてプロポーズしてしまいます。 詩は佐藤春夫が中国女流詩人の作品を訳出した『車塵集』より。 この映画に出てくるのは東へ西へとふらふらと身の置き場の定まらないダメ男ばかりなのでした。 人生において詩が必要なのはいかなる時なのか? 私

          【映画の中の詩】銀座化粧(1951)

          【映画の中の詩】『紅唇罪あり(”Baby Face”)』(1933)

          ベビーフェイスの聖なる悪女バーバラ・スタンウィック主演の問題作です。 少女のころから父親と彼の経営する禁酒法違反の酒場の客の男たちに性的搾取を受けてきた娘リリーが、なぜかニーチェかぶれの靴職人の男から権力への意志こそ人間の行動原理である、とふきこまれ、その実践をすべく親友の チコとともにニューヨークへと向かいます。 大手銀行にもぐりこむと上司からその上司そのまた上司へと次々に踏みつけにして、最終的には頭取を自殺未遂にまで追い込んでゆくという、とんでもない悪女なのですが、スタ

          【映画の中の詩】『紅唇罪あり(”Baby Face”)』(1933)

          【映画の中の詩】『雨』(1932)

          「人間は自分自身にたいして最も残酷なことをする生きものである。おまえたちは、「罪びと」、「十字架をになう者」、「贖罪者」などと自称する者たちすべての訴えや告発のなかに含まれている快感を、聞きもらさぬがいい」         「ツァラトゥストラはかく語りき」(手塚富雄訳) 小津安二郎が『母を恋はずや』(1934)で引用していたジョーン・クロフォード主演の『雨』。 牧師は売春婦の女を導くというよりは追い詰めていくといったふうでほとんど洗脳的に懺悔させることに成功するが、その

          【映画の中の詩】『雨』(1932)

          【映画の中の詩】『天国への階段』(1946)

          「地上はいいな 総天然色(テクニカラー)だ」 監督・脚本:マイケル・パウエル/エメリック・プレスバーガー 主演:デイヴィッド・ニーヴン/キム・ハンター 飛行隊長のピーターは現代詩を書く詩人でもあるという設定。そのわりには引用するのがウォルター・ローリーやアンドルー・マーヴェルといった古風な詩人であり、モダンなプロペラは嫌だ、羽がいい、などと言うのが個人的にはおかしかった。 マーヴェルは『戦場よさらば』(1932)でも同じ箇所が引用されていました。 地上(現実)のシーン

          【映画の中の詩】『天国への階段』(1946)

          【映画の中の詩】『戦場よさらば』(1932)

          でも わたしの背後からいつも聞こえてくるのは 時が翼のついた戦闘馬車で急ぎ足で近づいてくる音― 『戦場よさらば』は『武器よさらば』として知られるヘミングウェイの小説『A Farewell to Arms』の映画化です。 公開時に日本では題名が不適切ということで変更されたとのことです。 監督はフランク・ボーゼイジ、出演はゲイリー・クーパーとヘレン・ヘイズ。 アンドルー・マーヴェルは17世紀の英国「形而上詩人」と呼ばれる詩人たちの代表的な存在です。 ヘミングウェイはおなじく

          【映画の中の詩】『戦場よさらば』(1932)

          【映画の中の詩】『白い恐怖』(1945)

          「人類にとって詩人ぐらい有害な生き物はありません!」 アルフレッド・ヒッチコック監督。 イングリット・バーグマン、グレゴリー・ペック主演。 精神分析をテーマにした最初の映画を撮ってみたい、というヒッチコックの意図で企画された作品。 夢分析のシーンはサルバドール・ダリが美術を担当しているのですが、例のごとくのダリ的イメージで、なんだか取ってつけたような感じで映画的に成功しているのかは疑問です。 それよりもダリとは無関係な次々にドアが開いていくキスシーンなどの方が美しく感

          【映画の中の詩】『白い恐怖』(1945)

          【映画の中の詩】『エドガー・アラン・ポーの愛』 (1942)

          この手からこぼれ落ちる砂の せめて 一粒だけでも救うことはできないのでしょうか? わたしの見るもの そう見えるものの すべては 夢の中の夢にすぎないのでしょうか?          (ポー「夢の中の夢」) エドガー・アラン・ポーと妻ヴァージニアの物語。結婚した時、ポーは27歳、ヴァージニアは13歳。 ヴァージニアは24歳の若さで逝き、その死の衝撃がポーに「アナベル・リー」等の作品をもたらしたと言われています。 ポーという人は長いこと本国アメリカでは評価を保留されてきた節

          【映画の中の詩】『エドガー・アラン・ポーの愛』 (1942)

          【映画の中の詩】『夢で逢いましょう』(1951)

          「あのね、ほとんどの男の子女の子たちは自分の気持ちを伝えるのにぴったりの言葉を知らないの。 だから、あなたは彼らのかわりにそれを32小節ぴったりに言葉をのせて言ってあげるのよ」 ドリス・デイとダニー・トーマス主演。作詞家ガス・カーンと夫人で作曲家のグレースの物語。 恋愛詩など取るに足りないものと思っていたカーンがグレースの父親の朗読するエリザベス・ブラウニングの詩に打ちのめされるシーン。 詩は映画『欲望という名の電車』(1951)でも読まれた『ポルトガル語からのソネット』

          【映画の中の詩】『夢で逢いましょう』(1951)

          【映画の中の詩】『未完成交響楽』(1933)

          わが恋の永遠に終らざる如く この曲もまた、終ることなかるべしシューベルトの交響曲第7番ロ短調はなぜ未完成なのか? シューベルトと伯爵令嬢カロリーネの叶わぬ恋の物語。 昔々、確かNHKの名画劇場かなにかで観て、内容はほとんど忘れていたのに、ラストのアベ・マリアのシーンのシューベルトのアップだけはなぜか印象深く憶えていて今回観返してみました。 胸打つ悲恋物語・・・なのですが事実かどうかは別の話となります。 シューベルトがエステルハーツィ伯爵家のカロリーネの家庭教師を務めてい

          【映画の中の詩】『未完成交響楽』(1933)

          【映画の中の詩】『アリアーヌ(Ariane, Jeune Fille Russe)』(1932)

          プレイボーイの中年男と初な娘の恋愛劇。オードリー・ヘプバーン『昼下りの情事』の元ネタ。 クロード・アネの小説『Ariane, jeune fille russe(アリアーヌ、ロシアの少女)』は何度か映画化されていて1931年にはドイツ語、英語、フランス語の3つの別バージョンが同時に制作されています。これはそのフランス語版。 主役のアリアーヌを演じるのは、ギャビー・モルレー。 同じ原作の映画化でオードリー・ヘプバーンがアリアーヌを演じたのが1957年のビリー・ワイルダー監督

          【映画の中の詩】『アリアーヌ(Ariane, Jeune Fille Russe)』(1932)