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詩「ミゼレーレの聴こえない午前四時の礼拝堂のミサで・・」

「ミゼレーレの聴こえない午前四時の礼拝堂のミサで・・」
黒実 音子


無限という数字は
輪の形をしている。

それは口内と尾の無いヘビの如く、
濃縮され、
やがて一つの黒い濁点となる。

その濁点とは宇宙であり、
あらゆる可能性は
過去も未来もなく、
そこでは全て再現され、
永遠に繰り返される。

振り続けられる賽の目は
輪に閉じ込められる事により、
あらゆる可能性を再現するのだ。

矮小な人よ。
我々が今、ここに集う奇跡は
奇跡ではない。
愛すべき者に出会った奇跡は
奇跡ではない。

それは、
存在する素材で再現可能な
必然であり、
必然的なものは
永遠に輪の中で繰り返される。

おお、死に往く者よ・・
案ずる事はない。
我々はいつかまた
楽園で出会うのだから。

いや、出会い続けるのだ!!
永遠に繰り返し。
時として互いすら交換し、
憎む時も、憎まれる時も、
愛す時も、他者である時もある。
全ての帳尻合わせがなされた楽園で、
我々は肉と魂の遊戯を繰り返す。

その無限の世界では
時間も確率も無意味となり、
等しく一列に並べられる。

全ての可能性が!!
そして時間の順序が破壊され、
瞬時にあらゆる結論が
提示される濁点の中では、
一方通行の遷移すら
循環の中の
季節の輪廻の様なものに過ぎない。

おお、
我々の知性が想像もできない数字よ!!
想像もできない巨大さよ!!
想像もできない主の御業よ!!

ああ、
病室で孤独に絶望する者よ。
それでも
悍ましい臭気と、嫌悪と、苦痛の果てに
救いは成されるのだ・・

ミゼレーレの聴こえない
午前四時の礼拝堂のミサで・・

行われなかった
午前四時の礼拝堂のミサで・・




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