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白々と間瀬の二度目の夜が明けていく

白々と間瀬の二度目の夜が明けていく

自分の鼻息に耳を澄ませば、波の音に聞こえる。

いや、これホント。

波と呼吸のリズムは同じ。

いつかうちの子が、恋人を連れてこの海を見ながらそう話すのを想像する。

それで、それをやって見せると鼻水がドバッと出て恥ずかしくて笑うけど、彼女(彼)が海を見ながらノールックでハンカチを渡してくれるのだ。
(鼻水を垂らしているところを見ないように)

それが嬉しいやら余計恥ずかしいやらで、鼻水の付いた

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春の便り

春の便り

昨日、雫石の友達がちょうど見頃のタイミングで小岩井の一本桜の写真を送ってきてくれた。

その日の朝の雫石の岩手山の空気が伝わってきてすごく良かったし嬉しかった。

もう桜のシーズンは終わったつもりでいたけれど桜前線は北上中だったのだ。

なんだか最近はゆとりがなかった。
つまりアソビがない。

で、友達と遊ぼうと思うのだけど躊躇してしまう。

そもそも、少年時代から友達の家には自分から遊びに行けな

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猫派になった日

猫派になった日

僕は犬派です

旅行の帰りには友達の家の犬にもお土産を買って行くくらいの犬派です。

それでも、夏のまだ日の高い夕暮れ近く、汗とマスクにこもる息で不快指数もマックスに足早に向かう子どものお迎えの途中、いつもの細い路地を曲がった向こう側、ちょうど日陰になった通路の真ん中で黒の子猫がちょんと座って私を出迎えてくれた日にはもう…。

ところで、この子猫が居た辺りには少し前まで雑草が鬱そうと茂る空き地があ

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平日、町を歩いて写真を撮る際に気をつけている事。

平日、町を歩いて写真を撮る際に気をつけている事。

僕は今、在宅勤務がほとんどで、平日の昼間にスーパーや郵便局へ行ったりする。

その際、昭和のサラリーマン家庭で育ったのでどうしても人の目が気になってしまう。

だったら目立たないようにすれば良いじゃないかと言われそうだけど、そんな単純な話じゃないのです。

そもそも僕は図体がデカく、だいたい人ごみの中でも頭ひとつ分飛び出しているし、写真が好きだから被写体に出くわせばちょっと大袈裟なカメラを取り出す

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四季彩  〜  アジサイの色彩

四季彩 〜 アジサイの色彩

物事には理由がある。

と、最近次男坊が「なぜ?なに?」五月蝿いのでなるべく自分で考えさせています。
中々の洞察力に度々感心する事も。

先日は、八百屋さんの軒先に下げられている厚いカーテンを見てコレは一体何なのか?と。

何だと思う?と返すと、太陽で(野菜が)熱くならないようにじゃない?と即答。
流石、クイズ王伊沢を信奉するだけのことはある。

その流れでこの禍いの最中、なぜ僕たちはお箸でご飯を

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ある掃除屋さんのプロフェッショナル

ある掃除屋さんのプロフェッショナル

ちょっと前にこの時期なのでマンションの前の草むしりをした。
賃貸マンションの僕はただの住人なのに。
これまでは以前住んでいたオーナーのおばあちゃんが、暇を持て余しながらいつも草むしりしていたから草が気になるなんて事はなかった。けれども今は不動産屋さんの所有になり事務的に定期的に掃除屋さんが来るだけだ。
(ちなみにこの不動産屋さんもトラブルがあるとすぐにかけつけてチャッちゃと解決してくれるので良い不

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ある写真家の恥

ある写真家の恥

昔、一緒に仕事をしていたデザイナーさんから聞いた話。

その昔、ある写真家がクライアントに依頼されて神社の境内を撮影した。スタジオに戻ってフイルムを現像してみると、参道のすみに小さなゴミを見つけた。彼は慌てて現地に戻りその場所を掃除して再び撮影した。

この話は、今から考えると3つポイントがある
一つは当然のことながら、良い写真に仕上げようとする写真家の気概のはなし。
二つめは、そのための技術の話

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彼は何ものにも寄りかからない

彼は何ものにも寄りかからない

彼は何ものにも寄りかからない。

これまで圧倒的で立派に見えた彼がふと孤独に見えた。

寄りかからないが故に1人立っている彼は孤独であり、一瞬寂しい者のようにも思えるのだ。

何ものにも寄りかからない彼には彼に寄りかかるものたちがいる。

彼に寄りかかるものたちは、彼に寄りかかった瞬間彼と孤独を共有する。

それは世界に独立して立つという、恐ろしく小さくもろい。

しかしやはり強く美しい存在なのだ

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時代に翻弄され激しく揺さぶられながらも慎ましく生きるツツジ

時代に翻弄され激しく揺さぶられながらも慎ましく生きるツツジ

タイトル写真は、身の丈程もある立派なツツジで、それはこのツツジが植えられている公園が貯水タンクを埋め込んでいる都合で上底された結果なのだけど。

そのツツジがちょうど子どものお迎え帰りの時間、西日と春風に揺れて、しばし子どもを待たせて眺めていた。

普通、写真好きの人は花を選ぶのだけど、選ぶ余裕はない。
花が激しく揺れて動いているから。

昔、何かのドラマでキムタクと草なぎ剛くんだったか、冴えない

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子どもはまだ人生を知らない

子どもはまだ人生を知らない

数日前、かれこれ三十年来の友人の誕生日でした。

おめでとうと一言メールを送ったのですが、その返信で彼のこれまた四十年来の友人の話が出て(仮にS君)、S君もまたおめでとうとメールをくれたのだと。

でも、そのS君。昔から山あり谷ありの生き方をしていて、S君が今どこで何をしているのか仲間の誰も知らないと。

その時に僕が返したのが、

たとえどんな状況であっても。
弾丸が飛び交っていたり、荒れ狂う猛

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子どもに創造性はない

子どもに創造性はない

創造性とは本質からのズレである。

本質を知らなければそこからズレることはできない。

たとえ創造的にみえるものでも

本質を知らないものは

タダのデタラメか

すでにどこかの本質組み込まれている。

だから子どもに創造性はない。

なぜなら子どもは本質を知らない。

強烈な色彩は絵の具の取り間違いである。

夢のある絵はどこかの絵本やアニメから来たのである。

詩人のような言葉は初々しい脳のエ

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先頭に立つ木 1

先頭に立つ木 1

この木は市内から海へ向かう並木道の最後尾、
海から見ればその始まりに立っている。

先頭に立って真正面から一番海風を受けている。

先頭はその列の顔だ。    

先頭はその列の社長だ。

先頭はその列のヒーローだ。

先頭は真っ先に到着し

真っ先に出会う。

先頭は真っ先に見つけ

真っ先に喜ぶ。

先頭は行き先を決め

動きはじめ

止める。

先頭は・・・