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短編小説🍑桃太郎[第3話]

(A)

 翌日、あまりの寒さで目が覚めた。ポチは私のとなりで眠っていた。戸を開けて外の様子を見ると、あたり一面雪で覆われていた。これでは薪を集めるのも容易ではなさそうだ。暖をとらないと凍えてしまう。しかし、薪は残りあとわずかである。晴れることを期待するしかなかった。とりあえず、日が出るのを待とう。

(B)

  夜中に一度起きてから、いつの間にか眠っていた。眠りを覚ましたのは、ポチの悲鳴だった。

「ギャワ~ン、グルル、ギャワ~ン」

桃太郎は眼をこすりながら、ポチのほうへ目を向けた。猿の化け物が、ポチの目の前に立っていた。

「お前は何者だ!」と桃太郎が叫ぶと、猿の化け物は、「フリーズドライ吉備団子」三個が入った行李をひったっくって逃げ出した。

(C)

 ポチと桃太郎は、猿の化け物を追った。逃げ足の早い奴だ。今日こそは、朝食に吉備団子を食べようと思っていたのに。化け物はどんどん遠ざかっていく。あいつは何者だ?
 そのとき、なぜか桃太郎はむかし父親がよく唱えていた呪文を思い出した。

「ワッカ、チヂーム、ワッカ、チヂーム」

 すると不思議なことが起こった。遠くの山奥から悲鳴が聞こえた。

「ウギャ、ウッキっキー、モンキッキ」

(D)

  悲鳴の聞こえた山奥まで行ってみると、先程の猿の化け物が頭をかかえていた。
行李に入った吉備団子も無事だった。
 猿の化け物が叫んだ。

「行李はちゃんと返す。だから、呪文を解いてくれ」

 何のことかわからなかったが、桃太郎は、「ワッカ、チヂーム」の後に父親がよく言っていた言葉を唱えてみた。

「ワッカ、ヒロガ~ル、ワッカ、ヒロガ~ル」

すると猿の化け物がおとなしくなった。

(E)

 こうして向き合ってみると、猿の化け物は意外と従順で可愛らしいことがわかった。桃太郎は彼に尋ねた。

「お前の名はなんと申す?」

「孫悟空と申します」

桃太郎と孫悟空は、お互いの身の上話をしはじめた。

(F)

  聞くところによると、孫悟空も鬼ヶ島を目指していると言う。三蔵法師から聞いたという東に位置する小さな島に棲息する鬼たちと戦うために、はるばる海を渡ってきたという。

「それではいっしょに鬼ヶ島へ行こう」と桃太郎は言った。
「その前に温泉🐒♨️に入って温まろう」
と孫悟空が言った。

 孫悟空の後について行くと、秘境の温泉があった。桃太郎は、フリーズドライ吉備団子三個を、すべて湯船に浮かべた。桃太郎と孫悟空、そしてポチもいっしょに吉備団子を食べた。おいしかった。三者とも、再び元気を取り戻した。

犬猿の
仲を乗り越え
鬼ヶ島

小異捨て
鬼に如意棒
孫悟空

桃太郎
味方増強
いざ島へ

三者と鬼👹との戦いは近い。


つづく🍑(かもしれない)

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