見出し画像

嵐のあとの官能短編小説 | 不思議セクシードライバー

(1)

 私は、疲れきっていた。普段は歩いて移動する距離だが、今日はタクシーに乗って帰宅することにした。

「お客様、今日はどこまで行きましょうか?」
 タクシーに乗り込むと、女性の運転手だった。

「□▲町◯✕丁目まで」と私は告げた。

「いえ、お客様はお疲れのようですから、車内で少しゆっくりしませんか?車内でのサービスのお代は、いただきませんから」

「と言いますと」

「わたくしと、『あっち向いてホイ』をして、お客様が1回勝つごとに、わたくしは1枚ずつ服を脱いでいきたいと思っております」

「『野球拳あっち向いてホイ』ですか?あなたが勝ったときには、私が脱がなくてはなりませんか?」

「いいえ、それには及びません。ただ、わたくしに向かって『君はとっても綺麗だよ』と1度囁いて頂ければ、嬉しく思います」

私は内心、こんなおいしいことがあってよいのだろうか?と思った。

「わ、分かりました。『あっち向いてホイ』いたしましょう」

(2)

「あっち向いてホイ」
「あっ~ち向いてホイ」

 女は次々と服を脱いでいった。私は1度も「君はとっても綺麗だよ」と言っていない。この女は、わざと負けているのか?変態か?露出狂か?
 女はあっという間に、ブラとパンティとガーターベルトだけになった。ここからが佳境、クライマックスだ。

「あーちむいてホイ」

 さぁ、いよいよ何を脱ぐのか?とりあえずベルトか?、と思ったら、女はブラに手をかけた。
 えっ?、と驚く間もないほど、あっさりブラをとった。

 ニップレスの代わりに「ビックリマンチョコのシール」が貼ってあった。そんなに急には見せるわけないか。

「あっち向いてホイ」

さてさて、お次は何を脱ぐ?
と、その時、女の手がパンティにかかった。さすがにヤバいのでは?
 私は喜びを隠しながら、「それは最後になさっては?」と心にもないことを言ってみた。
「いえ、いいんです」

 女はパンティを一気に脱いだ。1枚脱ぐと、その下には、ティーバックをはいていた。

(3)

  あっち向いてホイは続いた。私は1度も負けていない。女は次々に脱いでいく。ビックリマンチョコシールを剥がし、胸があらわになった。淡いピンク色の乳輪が見えた。美しい。私はさすがに、ドキッ、としたが、相変わらず、あっち向いてホイは、つづいた。

 とうとう一番最後のティーバック1枚になった。

あっち向いてほーい!

 勝った。女は全裸になった。
 そのとき、不思議なことに、私の中の紳士が目覚めた。

「もう、あなたには何も脱ぐものがありません。服を着てください。遊びは終わりにいたしましょう」

それを聞いた女は言った。

「いいえ、まだ、脱いでいないものが1枚あります。もう1度だけ、勝負して下さいませんか?」

あっち向いて、ほ、ほ~い!

「あっ」と思わず私は叫んだ。初めて私は負けた。
 女は言った。

「私の、一糸纏わぬ姿を凝視してください。そして、『君はとっても綺麗だよ』と囁いて下さい」

 私は女のいう通り、女の、生まれたままの姿をじっくりと、なめるように凝視した。そして、囁いた。

『君はとっても綺麗だよ』

女はニッコリと笑った。
「あなたは、とうとう、私の最後の1枚を脱がしました。私がかたくなに守ってきた、心という最後の1枚の服を。そして、私の全裸の姿を褒めてくださいました。ありがとうございます」


おしまい

#フシギドライバー
#不思議セクシードライバー
#ショートショート
#あっち向いてホイ
#野球拳
#酔拳
#小説
#嵐のあとに
#嵐
#官能小説
#ほろ酔い文学
#忘れられない恋物語



この記事が参加している募集

ほろ酔い文学

忘れられない恋物語

記事を読んで頂き、ありがとうございます。お気持ちにお応えられるように、つとめて参ります。今後ともよろしくお願いいたします