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短編 | 最後のマスカラ

 僕の彼女はかなり変わっている。

 つぶらな瞳が僕は好きなのだが「私には目力が足りない!」といつも嘆いていた。

 石原さとみに似ていて、なにが不足なのかと思うのだが、彼女の理想は常に石原良純だった。

「良純の目力って憧れだわ」

「そうかぁ?石原さとみ似のままでいいと思うんだけど」

 端から見れば、バカップルだと思われるような会話だろう。

 ある日のデートのとき、僕は我が目を疑った。どう見ても珍獣ハンター。ぶっとい眉毛が僕の前に現れた。一瞬、自分の彼女だと判別できなかった。

 僕は思わず「イモトアヤコじゃ~ん」と突っ込みを入れてしまった。それが彼女の良純魂に火をつけてしまった。

「イモトじゃな~い!!」彼女は叫んだ。
「石原良純じゃ~👊」

 怒り狂った彼女はマスカラを取り出し、睫毛をこれでもかと強調し始めた。
左目が完成した頃、彼女は右目を作るマスカラが足りないことに気付いて雄叫びをあげた。

「Oh, my Yoshizumi !! 」


(410字)



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