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短編 | 別れた午後に...

 一晩中睦み合ったあと、女がボソリと言った。

「あたしたち、これで終わりにしましょうか」

 愛欲に溺れながらも、もうこの恋が終焉に近づきつつあることを、私も察していた。

「そうだね。このまま、いちばん綺麗な状態でピリオドをうつのが良いのかもしれないね」

 ベットの上で最後のキスを交わしたあと部屋の外へ出た。サクラの花が咲き誇っていた。

「まぁ、綺麗ね」
「そうだね。本当に綺麗だ」

 しばらく沈黙がつづいた。女が言った。

「今まで、お世話になりました。あなたとのことは、良い思い出のまま記憶に刻みます」

「あぁ、本当に君との時間は美しかった。…じゃあ、サクラの散る前に…」

「さようなら。お元気で。今までありがとうございました」

「あぁ、こちらこそ。今までどうもありがとう。さようなら」

 これが最後の逢瀬となった。


 女と別れた日の午後、部屋の整理をしようと思い立った。

「置き残した物があれば処分しておいてほしい」と女は言っていた。ほとんどの物を女は持って出ていったから、もう何もなかろうと思っていた。しかし、箪笥を整理していたら、女の残した青いブラと青いパンティが出てきた。


「こ、これは、あの時の…」 

終わった恋は終わった恋だ。
終わりにした恋は終わりにした恋だ。
気持ちの整理をつけなければ。

しかし、けれど、もう一度だけ。

 私は今朝まで愛し合ったベッドの上に、女の残していったブラとパンティを置いた。ベットに女が残していった馥郁たる匂いの中で、暫し微睡んだ。


 気がつけば、窓から西日がさしこんできた。
 外には、セピア色のサクラが見えた。朝のサクラとは、まったく違う花のように思えた。
 ベッドに置いた青いブラも、そして、青いパンティも、徐々にセピア色に染まっていった。


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