詩「日蝕」
窓から洩れる暁のわずかな冷気に身体を震わせ
季節はずれのブランケットを引き寄せたが
その実、震えているのは心だった
剥き出しにしていた首筋を
遠近を喪失しながらゆっくり擦り合わせた
記憶が照らしだされ
血の通わぬような私の頼りない手首が
あなたの生気に満ちた熱を吸収して
いきものらしくなったことを想起する
いろんなものを見てきたその瞳の奥に
実像の私が映っていることを
確認できるほど勇気はなくて
日常を激しく喰らってゆく想定外の熱に
優しく蝕まれ身動きもできず
枠組みを飛び越えぬよう鎮静を促しては
痛むのも頭ではなく心だった
話せぬことばかり蓄積されたなら
私は幻影になってしまうから
どうか、正しい距離のとり方を
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