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漫画版『東京喰種』を語りたい①(心理描写を中心に)

書きたい欲求がムクムクとしてきたので、いつぞやぶりの漫画感想文。

好きなシーンやキャラについて興が乗るままに自由に書きたいと思っていたけど、めっっっちゃ長くなりそうなので何回かに投稿を分けようと思う|ω・)

まんまとハマる私

今回語りたいのは漫画版『東京喰種』『東京喰種:re』。
久しぶりに推しキャラまでできてしまった。
うっかりフィギュアが欲しいかもしれない、とまで思ってしまったのは『DEATHNOTE』のL(エル)以来だろうか。

2011年に原作の連載が開始され、アニメ化や実写化までされた作品。
ハマるの遅くない?という感じは否めないのだけど、私は対象がなんであれ大流行している間は乗ろうとしない天邪鬼なので……自分にはありがちなパターンだったりもする。苦笑

集英社の漫画アプリ、ヤンジャンアプリで10月15日まで無印のほうが全話無料ということで読んでみたら……まんまとハマり『:re』まで一気に全巻読破。

無印14巻+:re16巻を2周しても尚、なんだか情熱が冷めやらない。むしろ語りたい!という軽躁的な状況なのである。

ではここでごく簡単な設定とあらすじを。

設定とあらすじ

『東京喰種』の世界にはヒト以外に、喰種(グール)という種族が存在する。

喰種とは一言で表せば「ヒトを喰らう怪物」(※喰種同士で共喰いを行う個体も存在する)。
「液状の筋肉」と呼ばれる赫子(かぐね)を捕食器官とする。しかし非戦闘時の見た目はヒトと大差ない。

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主人公・金木研(カネキケン)は読書好きな大学生。ある日彼はリゼという名の女性に恋をし、デートにこぎつける。しかし喜びもつかの間、デートの帰り道に豹変する彼女。なんと彼女は喰種だったのだ。

金木はリゼに襲われ絶命もやむなしの致命傷を負うが、工事現場から落下した鉄骨が彼女を直撃し捕食は中断。瀕死状態だった金木はリゼの臓器を移植され命をとりとめ、半喰種として生きていくこととなる……。
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カネキくんには本当にありとあらゆる試練が降りかかり、もう許してあげて!と思うこともしばしば。

戦闘シーンや拷問シーンの迫力や狂気は本作の魅力を支えていると思うが、私は丁寧な心理描写にも惹かれた。

細やかな心理描写が魅力

本作では沢山のキャラクターが登場し、それぞれの心の内が実に丁寧に描かれている。
語ろうと思えば各キャラごとに「この描写たまらんよね!」と語れそうなくらい想いはあふれているのだが、今回はカネキくんにスポットをあててみる。

インナーチャイルドとの対話

戦闘不能になり意識が混濁するなかで何度か描かれる、カネキくんのインナーチャイルドとの対話が印象に残っている。
(厳密には自己対話だけではなく、彼が生み出したイメージ上のリゼとの問答も含まれる)

私自身、母親との葛藤から一時的に逃げ出したくて、漫画という虚構の世界に逃げ込んだはずなのにここでも母親の問題が出てくるのか……と思ったりもした。
でもそのおかげで「母親に対する心情は単純ではないよね」と思いなおせたので感謝もしている。

「お母さんのこと好き?」と大人カネキに聞かれ、顎を触りながら「うん」と答える子どもカネキ。

実はこの「顎を触る」というのはカネキくんの「ウソをつくときの癖」。

カネキくんは両親を亡くしている。
正確に言うと、父親を亡くしたあと母親も過労で逝き、親戚の家で育った。しかし母親と2人で暮らした時間は彼にとって大切な思い出であり、その影響は大きいように見受けられる。

母親は生活が苦しいなかでも自分の姉に金銭の援助をする「自己犠牲」の精神の強い人で、口癖は「人を傷つけるより傷つけられる人に」だった。

カネキくんはその教えを頑なに守ろうとした。それは「絶対に勝てないと言われている相手」にも戦いを1人で挑み、自分を犠牲にして仲間を守ろうとしたことからもよく分かる。

彼は「自己犠牲」を貫いて逝ってしまった母親に心のどこかで疑問を持っていたが、チャイルドとの会話で気づく。

母親は誰かを守りたいがために献身的だったわけではない。夫を亡くして、これ以上自分の周りから人が離れていくのを恐れた。孤独を畏れるただの小心者の怖がりだったのだ、と。
そしてカネキくんも皆を守りたかったわけではなく、本当に守りたいのは自分自身だったのだ、と静かに納得する。

つまり母親からカネキくんに受け継がれた「自己犠牲の精神」には「こんなにあなたのために頑張っているのだから私/僕から離れないでね。私/僕を寂しくさせないでね」という思いが秘められていたのである。

大切だと思う仲間を守りたい、という一見純粋な気持ちの裏側を見つめられるカネキくん、というかそれを丁寧に描く作者さんの感性が好きだなと思った。

しかし、母親への言及はこれでは終わらない。

「ウソ」の核心

物語がかなり進んだ後で、またカネキくんの意識は混濁する。
そしてそこで母親との記憶が想起され「ウソ」の核心に迫るような描写が示される。

自己犠牲的ではあったが、カネキくんの記憶の中ではいつも優しかった母親。

正直なところ「人を傷つけるより傷つけられる人に」(=「加害者になるくらいなら、被害者であれ」?)という言葉を見た時点で私は「微妙な物言いだな」という印象を抱いていた。

母親自身が信奉する「自己犠牲の精神」を押しつけているように感じたが、好意的に見れば「人に優しくあれ」という風にも解釈できるのかな……なんて思いながら。

しかし、実は母親が日常的にカネキくんに手をあげていたことが示唆される。
ここで彼女が言っていた「人を傷つけるより傷つけられる人に」の別の意味が見えてくる。

虐待されていた事実を踏まえると、あの言葉の裏に「母親に力を振るわず/歯向かわず、体罰を受け入れよ」という意味もあるように感じてしまう私なのであった。

ここまで考えて「そりゃあ『母親が好き?』と聞かれて100%純粋な気持ちで『うん』なんて言えないよね……」と複雑な気持ちになった。

それでも絶体絶命のピンチや意識混濁時、物語のキーポイントに必ずと言って良いほど母親のイメージ(あるいは母親のようにカネキくんを諭すリゼのイメージ)が挿入されるところを見ると、彼にとって母親は「憎いだけの存在ではない」のだろう。

ある種、両価的な母親への心情を読み取り、私はカネキくんに強く感情移入した。

……やっぱり長くなってしまった。(>_<)

読んで下さった方、ありがとうございます🍀
次回は特に好きなキャラクターについて自由に語っていきたい。

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