詩「色彩」
私だけを見て、
そう叫びたがる幼さを殺したくて
ひとまず閉じることにしたのに
丸めた背ごと包むような
柔らかさが鍵となって
殻の内部に愛しい声が反響して
結局ふたりで呼吸することを望んでしまう
同じことを繰り返しながら
違う不安を抱きながら
それでもまた還りたくなる
その腕のなかに
形容できない虚しさを
ひとりで抱きしめていた頃には
もう戻れない
それは新たな絶望の胚胎か
毒の糸を吐いて、編んで
身を包んでいれば
穏やかな孤独に安住できるのに
その笑顔が、香りが、温もりが
繭を猛然と食い破り
淡い記憶を強化する
鎧を全て失ったまま、
このまま漂えば素直になれそうだ
責任なら自分でとるから
その手を取りたいという意志に祝杯を
いま黒白の世界に雫が
ひとつ、ふたつこぼれ落ち
色が芽生える
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