保育園の運動会で見る卒園児の成長

暑くも寒くもない薄曇りの日、体育館で行われたかつて長女も通った保育園の運動会には、長女も含めて卒園生が何人も来ていた。弟や妹がやはり同じ保育園に入所してのことである。プチ同窓会みたいになって長女ははしゃいでいた。

年少さんからはリレー競技がある。ひとり体育館半周ずつ走る。年長さんや卒園生は一周だ。
長女の同級生が何人もリレーに参加した。

そのうちのひとりは長女よりひとまわり小柄な女の子だ。取り立ててすごく速くはないけれど、しっかりとした足取りで駆けていく。体育館の床を靴底で蹴るその振動が伝わってくるような力強さだった。

その走りに、その子が年少さんの時に初めてリレーを走った様子を思い出す。

運動会を目前にしたある日お迎えに行くと園長先生に呼び止められた。
「娘さんにはリレーでちょっと走るのが難しいお子さんと一緒に走ってもらいます。」
最後のほうにもう一度走らせてもらえるという配慮付きで、最初にその子と一緒に半周走るとのことだった。

その子は低体重で生まれたのか、保育園では他の同学年の子たちと比べてひとまわりもふたまわりも小さかった。身長は低く、手足も細く、コミュニケーションもたどたどしい。遊び方も独特で、グループでごっこ遊びをするタイプではない。が、長女のことは時々家でも話しているようで、比較的仲は良いようだった。

スタートの合図とともに、年少さんの長女と手を繋いだ彼女は歩き出した。走らないのか、と観客席が少しざわついたが、きちんと半周歩ききって2人はそれぞれバトンを次の子どもに渡した。

保育園はほとんどの子がまだオムツの頃から通い、小学生になる頃に卒園する。だから保育園の期間での成長はものすごく大きい。小規模の保育園で、長女は一学年12人、女の子は5人という環境で、成長著しい期間を長く過ごした。

卒園して一年以上経ったいま、5年前は長女と手を繋いで歩いた小さな身体のあの子は、しっかりと足裏で床を蹴って走っている。その振動から、すっかり見違えるように成長した小学生の彼女の体重と筋力が伝わってくる。
胸を打つとはこういうことか、と思った。

子どもは成長する。当たり前だ。

しかし成長するだけで心動かされることがあるなんて。
それも自分の子ではなく、他人の子に。

子どもを持ってみないとわからないことがたくさんある。
その多くは特に伝えるほどでもないことだから、ほかの人にはわざわざ伝えたりしない。

だからこの経験は、存在を客観的に観察されない。

でも、胸を打った。

心が動かされたことを、記憶しておこうと思った。

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