見出し画像

都会から田舎へ移住し農業をやろうと思っているあなたへ

=都会から田舎へ移住し農業をやろうと思っているあなたへ=

都会の喧騒を逃れ地方の田舎へ。

農業をやりながら自由でゆったりとした暮らしをしたい。
広々とした家に住み、自給自足的な生活で田舎ライフを楽しみたい。

こういった夢見たいな生活を描いている人には悪いですが、事実を申し上げたいと思います。

僕は農家の長男です。
小さい頃からお茶畑を駆け巡り、筍を採り、わらびを採り、田植えをして、肥料を撒き、草取りをしてザリガニを捕まえ、稲を刈り、稲藁で遊び、みかん畑で下痢するくらいにたくさんのみかんを食べ、富士山を仰ぎ山に隠れ家を作って遊んできました。

大人になり、僕は小学校の教師になりました。
親父は僕が農家を継がないことを知っていましたし僕が「農業しようかな」と言った時「やめなさい。稼げないから」と言いました。

事実、農薬をして肥料代を払い、農協にお茶やみかんをだしてもその収支はトントンで儲けはわずか。
ほとんどの農家が農家だけでは食べていけず何かしらの副業をやっていました。

うちもデパートやお店で使う紙の袋の紐通しの内職や日本人形の飾りを作る内職をしていました。

僕も手伝いましたが、一袋紐を通して結び、それで1円にもならない50銭でした。

お茶の時は朝早くから起きてその日のうちに農協にだし、茶葉はすぐに機械にかけないとダメになってしまうので時間との勝負でした。

草はすぐに生えますから度々、草刈機で刈らなければなりません。

みかんは摘果作業が朝早くから夕方まで続きました。
収穫したら選果と言って、大きさや状態で選別を夜遅くまで、そう12時近くまで寒い納屋でやっていました。
みかんが痛むので暖かくすることはできないのです。

農業は「牧歌的なイメージ」があるようですが、実際は全然そうではありません。もちろん農閑期というものはありますから雨が降ったら仕事はお休みということもあります。
しかし同時にその時は「こも」と言われるお茶にかけるシートのようなものを整理したり、脱穀機の整備をしたり、やることは次から次へとありました。

昔はカーバイトを炊いて獣や鳥を追い払っていましたが今は電気柵を設置したりして猪やハクビシンの食害から守ります。これにもかなりお金がかかります。

そして親父が亡くなって、僕は田畑、山地を相続しました。
しかし農地法によって、それらの土地を他人に売ることはできません。農家であれば売れますが、宅地として売るのと違い、大きな規制があります。

農家は農家をやりなさい、というのが基本的な農地法です。

これは憲法の職業選択の自由とは相容れないものです。
もっというと憲法違反です。
元々、農家を保護するための農地法ですが今となっては単なる「足かせ法」となっています。

農地法の改革が必要です。

田舎への移住が憧れのように宣伝されているのをみると「なんだかなあ」と僕は思ってしまうのです。

農地は貸すことはできても自分の土地にはなりません。
企業並みに大きな土地を機械を投入してやっている農家も確かにありますが、多くは農協という組織に縛られています。

田舎の「五人組」的なしがらみは強力です。
田舎へ行けば行くほど、町内の目は厳しいです。

今は海外から技能実習生という名のものに農業労働者を安く雇い、運営している農家もあります。昔の3K(汚い、きつい、危険)を外国人にやらせているのは正直なところ僕はあまりいい気持ちがしません。

一番いいのは休みだけ日曜農園をしかも趣味で楽しみ、採れた野菜を近所に配る、あるいは無人販売で売るくらいがいいのではないでしょうか。

農業を甘くみてはいけません。
「農」を「業」(なりわい)とするのは大変なことなのです。
趣味でできるようなことではありません。

もし移住するなら車必須、近所付き合い日常、都市ガスなしプロパンガス、浄化槽必須、などなどよくよく調べて不便を楽しむくらいの決死の覚悟で望んでください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?