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ぴぴぷる散歩

散歩がすきだ。ゆっくりと歩きながら、草の匂いや、季節の空気を味わって。山をみたり、人をみたり。川をみたり、家をみたり。

生活のそばにある、地元の自然。それは用水路に流れる浅い水であったり、公園の木であったりする。そういったものを感じながら、澄んだ空気を吸って歩く。そうすると「あぁ、働くことがすべてじゃないなぁ」なんて思う。

毎日仕事をしていると、なんだかそれが生活のすべてに思えてくる。疲れて家にかえって、お酒を飲んで寝て、また仕事。
すこし元気な日や、逆にあまりにも疲れた日に、ふらっと手ぶらで外に出てみる。すると、外はただただ静かである。町は程よい生活の気配を漂わせながら、時の流れに身を任せている。

歩いているうちに、「なんで忘れちゃってたのかなぁ」と思う。すぐそばで、こんなに静かな時間が流れているのに、僕はいつの間に職場と家だけの世界に迷い込んでたんだろう。
虫は鳴いているし、おばあちゃんは畑で座っているし、雲は風に流れてるというのに。

少し前、嫁さんに腹をたててしまったことがあった。
理屈で心を落ち着かせる作業につかれてしまって、冷たい態度をとってしまった。ふだんは彼女が寝る前にキスをするのに、その日はおでこにするのが精一杯だった。

嫁さんが寝て、ひとりの時間が始まっても、苛だちは胸のなかをぐるぐるまわって僕を荒らしてくる。深夜1時をすぎていたけど、散歩をしようと思い立って外に出た。

僕のすんでいるアパートは小高い場所にあって、少し歩けば夜景が見渡せる場所にこれる。ふだんはそちらは散歩ルートではないのだけど、せっかくだからと思ってそこを目指して歩き出した。

とぼとぼ。とぼとぼ。

自分の足音。虫の声。遠くを走る車の音。
聞こえるのは、その3つくらい。

とぼとぼ。とぼとぼ。

冷えた空気。街灯。揺れて光る用水路。
静かだった。景色も音もなにもかも。

そして、夜景の場所にたどり着く頃には、もうすっかり心は穏やかだった。

ゆっくり家に帰って、noteの続きを書いた。満足して寝室へいくと、当たり前だけど嫁さんが寝ていた。なんだか安心して、ふとんの暖かさを味わいながら眠りについた。

散歩。それは、生活を見つめなおせる時間。

僕は散歩がすき。これからも、ずっと散歩と一緒だ。


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