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本屋がアジアをつなぐ

"僕は『本屋』という言葉を、『書店』と区別して使っている。『書店』は書籍や雑誌を売っている小売店。『本屋』は(中略)その仕事に就くことが宿命であったかのような人に対する呼称としている。"2019年発刊、新聞連載『本屋がアジアをつなぐ』をベースにした本書は、書店には本を売るビジネス小売店として以外に『本屋』として【言論の自由を守る場】としての大切な役割がある事を再確認させてくれます。

個人的にも【本好きの趣味が高じて『書店』を】ではなく、その逆。運営しているNPOが対象とする社会課題の1つとしての(民主主義を支える)【読書人口の減少】その解決のための取り組みとして、ローカルメディア専門や読書会のみの『本屋』を運営している事もあり、連載時から気になっていた本書をようやく手にとりました。

さて、そんな本書は2016年から2019年前半までの国内はもちろん、韓国や台湾、中国は上海、香港と、それぞれに政治事情に左右されながらも【町中の『党外人士(=民主化運動を推し進める人々を指す)』】として、様々な想いで活動している『本屋』を短い章立てで読みやすく紹介してくれているわけですが。

いわゆる【オシャレ空間として】インスタ映えするアジアの『書店』や経済的な出版事情を紹介するガイド本は増えてきているものの。敗戦後、少なくとも『言論の自由』が当たり前となった日本とは違う、韓国や台湾、そして揺れ動く中国は香港の【民主化運動についてまで踏み込んで】『本屋』の【果たしてきた、果たしている役割】を紹介してくれている本は今まで読んだ事がなかったことから、私にとっては大変貴重で、運営しているスペースについて、またNPOの活動を確認する事ができる。大変貴重な読後感でした。

また、著者もページ多く触れている、2017年に創業100周年を迎えた『中国がもっとも敬愛する日本の書店』といわれる内山書店、そして、その設立者にして日中両国から危険な思想家として見なされていた魯迅を徹底して匿ったり、上海の店で【日中の草の根文化人交流につとめた】内山完造について。恥ずかしながら初めてその存在を本書で知り、こちらも東アジアの政治対立が緊張感を増している現在において【それでも】少なくとも、市民レベルでは文化交流を継続していく大切さを実感させてくれました。

本を一冊でも多く売る『書店』としてだけでなく、民主主義において大切な【言論の自由を守る場】として『本屋』をしている全ての人へ。またオシャレデート空間や、SNS撮影スポット以外としての【アジアの『本屋』の魅力】を知りたい人にもオススメ。

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