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自殺論

"自殺の定義として次のようにのべることができよう。死が、当人自身によってなされた積極的、消極的な行為から直接、間接に生じる結果でありわ、しかも、当人がその結果の生じることを予知していた場合を、すべて自殺と名づける"1897年発刊の本書は方法論的に【社会現象としての自殺】を論証しようとした社会学の古典的名著。

個人的には、近年では個人の自殺行為すら多くの他者にとってのSNSコンテンツとして【撮影や配信で消費される】自殺大国に住む1人として、あらためて読んでおきたいと思って手にとりました。

さて、そんな本書は【論文のお手本としても見事な構成】で、まず自殺の定義づけから始まり、また【遺伝や人種、気象や精神病としての仮説を非社会的要因として排除】した上で【社会的自殺の3(4)類型として】社会統合が弱体化、個人化が進行したことによる自殺を『自己本位的自殺』殉死や義務的な自殺(切腹、即身仏を含む)を『集団本位的自殺』そして社会秩序が不安定化、無規制状態になることで起きる自殺を『アノミー的自殺』(その対比として抑圧で起きる自殺を『宿命的自殺』)と分類しているわけですが。

(宗教的な拠り所もなく)【自分らしく"ありのままに"生きよう!ただし自己責任で】的空気感とか【みんなそうしてる】軍隊的会社組織【フォロワー数や再生回数=人間的評価】承認欲求への飽くなき欲求と、それぞれ自己本位的自殺、集団本位的自殺、アノミー的自殺を私なりに現代的に解釈すると、是非はともかく社会としての【日本が自殺大国なのは必然なのかな】と淡々と腑に落ちました。

また一方で、本書は当時としては画期的な【様々データや数値を用いて】自殺が個人的な要因で起きるのではなく社会構造の変化などで『一定の現象として起きる』ことを論証しようとしているのですが。とかく現在でも【自殺は個人ごと】と毎日効率よく片付けられる国に住む1人として、何だかプレッシャーから開放されるような読後感もありました。

社会学を学ぶ人はもちろん、なぜ自殺が起きるのか?を俯瞰的に考えたい方へ。また論文の見本としてもオススメ。

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