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日常を意識的に忘れるために、小さな非日常を食べていく。

「日常生活は、基本的に大事件は起こらない。盛大なオチとも無縁だ。だからといって、日常がつまらないわけではない。過去に逮捕歴はない。過去に何かの受賞歴もない。でも過去がつまらなかったわけじゃない。僕たちの人生は、なぜか忘れられなかった思い出の集合体でできている。」
(扶桑社)『夢に迷って、タクシーを呼んだ』 - 燃え殻 (Twitter : @Pirate_Radio_) から引用

(アフィリエイトではありません。個人的に周知させたくて掲載させていただいております。)


僕が愛してやまない作家の一人、燃え殻さんの言葉は間違いなく僕の生活に潤いを与えてくれる。彼の著書は全て、本棚の一番手に取りやすいお気に入りゾーンに並べてある。

彼が週間SPA!に連載し、それがエッセイ本として出版された 『全て忘れてしまうから』『夢に迷って、タクシーを呼んだ』の2冊は、砂漠浮浪者に撮ってのオアシス、真夏におけるシャワー、学生にとっての夏休み初日、サラリーマンにとっての有給1日目、断食した後のいきなりステーキのワイルドハンバーグわさび大量トッピングいきなりセットご飯大盛りいきなりステーキオリジナル黒烏龍茶、それらに匹敵するレベルの回復力を持っている。



「今日はなんかダメな日だ。」にとっての「燃え殻さんのエッセイ」である。




朝起きた瞬間の頭の重さに気づいた時には、その日1日は最悪な日となることが確定する。日常に組み込まれてしまった趣味は、こういう時には僕を救わない。最初は非日常として心を躍らせていたギターも、少しずつ日常に組み込まれていき、弾き終わった後に、心がまだ乾いていることに気づく。走馬灯が目の前で流れる時には絶対に思い出されない1日となる。もはや1日としてカウントされることはない。0日を生きている。

友達は少ない。会いたい人はみんな忙しそう。テストが迫っている。課題の締め切りは明日。その他の課題も数日後に迫っている。やりたいことはある。いやあったはずだ。やりたくないことはもっとある。やりたいことのためにやりたくないことを処理しなければならない。

やりたくないことは全部捨てて、やりたいことに全力で向かうことは僕を救う。それはわかっている。生きてきた21年間でその真理はしっかりと身に沁みていた。しかし、そんな状態にある自分にとっては、その真理も真理らしい冷たさを有する。とにかく動けない。寝っ転がってはいつも通り天井かYouTubeを眺める。椅子に座れば床か部屋の砂時計、僕を救うはずがないSNSを眺める。今日もそんな日か。


非日常は僕を救う。


ふと、昨日の自分が「自転車のブレーキをメンテナンスして、もっと安全・快適に乗れるようにしよう。昔は自転車屋に持って行っていろいろメンテナンスしてもらってたけど、自分でできるかな。」と考えていたことを思い出す。

動けないが、YouTubeを開くことはできた。そして、それが丁寧に説明されている。あれ簡単そうじゃん。できるようになったら楽だな。

部屋から軍手と六角レンチ、プラスドライバーを持ってきて、取り掛かる。

説明通りにメンテナンスしてみると20分ほどで完了した。空気も入れて、自転車にまたぐ。ブレーキが新品同様の強さに蘇ったことを確認して、少し心が弾む。


気づいたら、30分前の心の渇きは嘘のようにすっかり満ちている。夏に外に出て作業をしていたおかげで汗が背中に滲む。汗かいたからシャワー浴びようかな。あ、いやどうせこれくらいの汗でシャワー浴びるんなら、ジム行ってもっとハードに汗かいてからの方がいいな(当方、バリバリのスポーツマンのため、ジムにいくハードルはそこらの方々より低い)。

あぁ、真理ってつまらないけど、やっぱり真理なんだよな。


大規模な非日常を体験するのは体力も知力も運も必要だ。お金だって時には必要になる。

もちろん大規模な非日常はK1選手に顔面をぶん殴られるくらいの威力を有しているし、それを人生で追い求めることは辞めたくはない。

でも、そればかりが全てではない。人生のほとんどは日常で、そこにちょっとした非日常がスパイスとなって組み込まれる。そしてたまにとんでもない非日常が降りかかる。


日常と非日常を行き来することでしか、自分の人生に夢中になれない。




燃え殻さんのエッセイは、そんな非日常がこれでもかと組み込んであり、そしてたまに核心をつく真理を言葉にして読者に問いかけてくる。それらを1文1文読むごとに、僕の日常は少しずつ非日常になる。僕の凝り固まった心がしっかりと正常に作動していることに気づく。なんて本だ。


僕もあんなエッセイ集を書いてみたいなと希望を抱くと同時に、僕の21年間の甘ったるい人生から抽出される非日常や真理を抽出してみても、5ページほどにしかならなさそうである。やはり燃え殻さんのとにかく多様な経験をしている48年間の人生に敵うはずがない。(でも僕はこのNoteを使って、小さな非日常を書いていきたいなと思っています。僕のちょっとした挑戦です。)

そんな燃え殻さんが7/29(木)に新小説を発売するらしい。早く読みたい。



気分が落ちた時には、とにかく何もしなくていい。

「何もしない」をする。目的なしに家を飛び出る。綺麗だと思ったものの写真を撮る。綺麗ではなくとも、おっと目についたものを撮る。いい匂いがする方を歩く。逆に不快な匂いをするところを歩くのもいいかもしれない。ふと本屋に立ち寄ってみてもいい。意味もなくスーパーに入ってみてもいい。高いところをとにかく登ってみても良い。

「何もしない」をして、ふと頭に浮かんだものがあれば、それを「うーん、おりゃ!」でグイッと自分の心を押し殺してやってみる。

頭に会いたい人間が浮かんだら、「大好きです。会いたいですね。」と連絡してみる。いやそれはちょっと人によっては嫌がるかもしれないので、「この猫の動画みてよ、超可愛い」と送りつける。

何も思い浮かばなければ、「何もしない」を継続する。

いずれ「何もしない」にも飽きる瞬間がくる。非日常に疲れる瞬間がくる。「家帰ろうか」と先ほどまで自分を苦しめていた日常に帰りたくなる。




ここまで読んでいる人の中で、気づく人がいると思う。

僕の言葉は、ある一人の作家さんの影響を強く受けている。もはや支配されている。僕は彼の言葉を教科書にして生きているといっても過言ではない。死ぬまでに教科書を書く側になっていたい。そのために、この何者でもない自分の心から具現化される人生を全力で生きていきたい。


いついかなる時も彼の言葉が根幹にありますが、彼の言葉に救われた瞬間についてここで書くことは遠慮しておきます。

F (twitter : @No_001_Bxtxh, instagram : @no_001_bxtxh)




このNoteの着地点がわからなくなってしまったので、『夢に迷って、タクシーを呼んだ』から、好きなエッセイの題名を数個抜き出して、強引に終わろうと思う。


『この世界ってさ、ロマンチックなことが少な過ぎるんだよ』

『死ぬってのはそれ以上でもそれ以下でもない』

『あなたは女の人に救われた経験はある?』

『青春は未だ完結していない』

『「その夜の天使」みたいな人だった』

『「生粋の社会人』なんているのだろうか』

『その場所はただの雨降りだった』

『ねえ、このまま鎌倉まで行かない?』

『昨日のことを十年前のことのように書く』

『普通に生きることはできないのか?』

『偽物でもまがい物でも構わない』

『夢に迷って、タクシーを呼んだ』


多い。多過ぎる。全部が良過ぎるんですよ。

選ぶために再読してたら90分が過ぎていた。

そしてまた僕はまた日常に戻る。

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