自然の変化を感じる 建築と庭園とアート。 ー 江之浦測候所

江之浦測候所 神奈川県小田原市にある「江之浦測候所」https://www.odawara-af.com/ja/enoura/ 杉本博司氏が10年以上の歳月をかけて構想し、杉本氏と榊田倫之氏による「新素材研究所」が設計・デザイン監修を担った複合文化施設です。広大で見応えのある施設でしたが、まずは 感想を1枚にまとめてみました。 (後は、写真を載せています。)
画像2 東海道線で小田原から2駅。根府川にあります。事前予約制のシャトルバスもあります。相模湾が見渡せ、当日は曇り〜雨ながら、入る前からテンションが上がります。
画像3 まず、案内されるのが「待合棟」。こちらで注意事項などの説明を受けます。館内には2点の杉本博司氏による写真作品も。また、テーブルには、現在は採取できない樹齢1000年を超える屋久杉が用いられています。
画像4 3000坪の広大な敷地のなかに、多数の建築・作品・歴史的な素材が点在していますが、その中でもなんといっても印象的だったのは、「夏至光遥拝100メートルギャラリー」。
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画像6 大谷石でつくった壁面に、片持ちの屋根。その反対側にあるガラスは、屋根と床面に挟まれ自立しています。柱がないので、庭園と、それに続く自然の風景も、すべてつながっているように感じられます。
画像7 この「夏至光遥拝100メートルギャラリー」の中には、杉本博司氏の”海景シリーズ”作品6点が並びます。構造上、反射で作品は見づらいのですが、一方で、「海景」の作品の中に、本物の海が写り込んでいるのは少し面白くもありました。
画像8 夏至の日の朝、ちょうどこの空間を太陽光が抜けていくそうです。
画像9 続いて庭園へ。この「冬至光遥拝隧道」を通っていくと…
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画像12 まるで掛け軸のように切り取られた海。 「夏至光遥拝100メートルギャラリー」と同様に、こちらは冬至の日の朝に朝日がこの空間を貫通していき、その奥にある巨石を照らすのだそうです。同じように、秋分の日・春分の日の光の道筋を表す道もあります。
画像13 ここから外に出ると「光学硝子舞台」。光学ガラスでつくられた能舞台です。張り出した舞台が清水寺を思い出してしまいますが、「懸造り」はまさにその造りなのだそうです。
画像14 この日は曇り〜雨でしたが、晴れていたらどんなふうに見えるんだろうか…と想像してしまいます。
画像15 こちらの門「名月門」は、室町時代の門。もともと根津美術館の正門として使用されていたものだそうです。
画像16 続いて、2018年10月にオープンした「竹林エリア」へ。古い”素材”が多くあるこの施設。どこまでが自然のもので、どこまでが人工物なのか、その境目がわからなくなってきます。
画像17 この「竹林エリア」で印象的なのが、広大なみかん畑のなかにある「化石窟」。
画像18 中には、杉本博司氏の化石コレクションが展示されています。世界に3つしかない、貴重な化石もあるそうです。
画像19 もともとはみかん小屋だったものを、奥にある巨木が見えるように改築したものだそうです。化石だけでなく、ここで使われていた多数の古道具や、「秀吉軍 禁令立て札」なども展示されています。(”石垣山一夜城”もこの近くなので、その当時のものでしょうか…?)
画像20 このゾーンには、杉本博司氏の「数理模型」のシリーズも。
画像21 「被爆宝塔 塔身」。こちらの竹林エリアにある作品は、ハンドアウトで”時代”と”タイトル”が示されているものの、その由来などは詳しく説明されていないので、想像しながら見ていきます。
画像22 ふたたび、もとのゾーンに戻って。「茶室『雨聞天』」。鳥居は古墳時代のつくりを模してつくられたものなのだそうです。
画像23 茶室は”千利休作「待庵」の本歌取りとして構想された”とのことですが、見上げると、その屋根はトタン!みかん小屋のトタンを再利用したものだそうです。トタン屋根に響く雨の音を聞くから「雨聞天」… トタンって、古臭いイメージでしたが、こんな風に使われるなんて、なんて素敵なんだろう…
画像24 茶室の入り口の踏石は光学ガラス。澄んだガラスに曲がりくねった割れ目があり、川のような水の流れををイメージしてしまいます。
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画像26 作品を見る場所なのか、建築を見る場所なのか、それとも庭園なのか…なかなか掴みづらい不思議な場所でしたが、その名前「測候所」のとおり、建築や庭園のつくりを通じて、”春分・秋分の日”や”夏至””冬至”といった季節を知り、海と空の1日の変化を観察する…建物や作品を通じて、自然の変化を感じ取るような場所でした。すべて見て回ると2時間以上はかかりますので、ぜひお時間に余裕を持っておでかけください。
画像27 ■江之浦測候所 https://www.odawara-af.com/ja/enoura/ 見学:予約・入れ替え制 休館日:火曜日・水曜日、年末年始および臨時休館日 見学時間 1日2回:午前の部(10時~13時)、午後の部(13時30分~16時30分)(各回定員制) 入館料:インターネットから事前にご購入の場合 3,000円(税別) 当日券をご利用の場合 3,500円(税別)
画像28 ※おまけ※ 根府川駅から1駅の早川には「さかなセンター」が。付近にも地魚を扱った海鮮のお店や、干物のお店がならび、楽しいです。

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