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アーティスト本人の手がける、個人ミュージアムの深い世界。

きっかけは、「明和電機マイクロミュージアム」での衝撃。

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今月、秋葉原のラジオデパート内に、明和電機の手掛ける1畳にも満たない小さな美術館「明和電機マイクロミュージアム」が登場し、その空間を体感して衝撃を受け、取材させていただきました。

■ ひとりずつしか入れない・SNS禁止・世界最小の美術館が秋葉原に誕生「明和電機マイクロミュージアム(MMM)」とは? 明和電機・土佐社長インタビュー

この美術館は、非常に小さかったり、1人ずつしか入れなかったり、SNSでの内容シェア禁止だったり、将来的な「分散型」を意図していたりといろんな側面があるのですが。

このうち「アーティスト本人が手がける 個人ミュージアム」という側面に目を向けた時、そういえばアーティストご本人が手がけるミュージアムやギャラリーは、深すぎて時には戸惑うこともあるけれど、公共の美術館とはまた違った体験があるなぁと感じて。これまでに伺ったなかで興味深かった「アーティスト本人の手がける個人ミュージアム・ギャラリー」を振り返ってみました。
(※ ご本人の作品が展示されていることを基準に選んでいます。)

水戸のキワマリ荘/中﨑透美術館準備室(仮) (中﨑透「Connection Collection」展)

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「ミュージアム」と言っていいのかは分からないのですが。水戸にある、美術家・中﨑透さんの運営するギャラリー「遊戯室」のある水戸のキワマリ荘と、中﨑さんのアトリエ兼ギャラリー的スペース・中﨑透美術館準備室(仮) で、中﨑透「Connection Collection」展が先日開催され、11/21(土)〜12/23(水)の間、アポイント制で延長開催されることとなりました。

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水戸のキワマリ荘

中﨑透さんのコレクションを展示しつつ、その中に中﨑さん自身の手掛けた作品もいくつか展示されているのですが、とにかくその物量がすごい… 中﨑透美術館準備室(仮)の巨大な民家と2階建のお蔵を改装したそのスペースの中には、骨董を中心に650点を超える作品が。

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どこまでが作品なのかも分からなくなってきます…

とても規模が大きいのですが、アーティストご本人が案内してくださったり、ハンドアウトや展示室の解説もとても丁寧に綴られていて、そして、そこに書かれているのは、コレクションを手に入れた経緯やその作品を作ったときのエピソードなど、個人的な思い入れだったりして。なんだか読んでいて楽しさが伝わってくるような展示です。

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実は、最初に書いた「明和電機マイクロミュージアム」を体験した翌日にこちらを体験して。展示室の大きさや物量は全く異なるものの、どちらも公共の美術館でのそのアーティストさんの展示を見る時とは全く違った体験で、SNS NG/OK の違いはあっても、どちらの展示も、なんだかその核心は自分ひとりの中にそっと留めて置きたくなるようでした。

モリムラ@ミュージアム

外観だけからは普通の民家にも見えてしまう、大阪にあるこちらのミュージアム。森村泰昌さんがディレクターを務め、森村さんの作品にいつでも出会える、森村さんの作品だけで構成されたミュージアムです。

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M@M (エム・アット・エム、と読むそうです)

様々な絵画や歴史上の人物に扮した作品を手がける森村さん。現在は「北加賀屋の美術館によってマスクをつけられたモナリザ、さえも」を開催中。

展示室、ライブラリー、サロン、ミニシアター、ショップと、本当の美術館のように充実した設備です。作家本人の所蔵する、”秘蔵の作品”なんていう作品も見られたりします。

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個人美術館と思えない広さ(これでも展示室の一部です)

面白いのは、例えば過去に「「モリメール」~あなたも『フェルメール』になれる~」展では、森村さんの作品の撮影に用いた部屋のセットが登場。このなかに自由に入って自由に撮影できたり、「モリメール写真館」としてカメラマン・スタイリスト・メイクアップ、チーム森村がその変身をサポートしたりと、公共の美術館ではなかなか体験できなさそうなイベントも開催されています。

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ウォーホルのBrilloボックスならぬ、Morilloボックスも。

江之浦測候所

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こちらもまた、ミュージアムといっていいのか分かりませんが。アーティスト・杉本博司さんの作品を展示するギャラリーがあり、コレクションを展示する場でもあり、この場所自体が巨大な作品ともいえるような場所です。

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「海景」シリーズの展示された「夏至光遥拝100メートルギャラリー」

小田原から二駅の根府川駅からさらにバスで移動した場所にあるこちらは、とにかく壮大。敷地面積9496㎡のなかには、光学硝子でできた能舞台があり、根津美術館から移築した室町時代の門があり、広大なみかん畑あり、化石コレクションまでもあり。そして、この敷地からはほかの民家や道路などがほとんど見えず、見渡す限り作品群と、海と空、という場所です。

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作品を見る場所なのかコレクションを見る場所なのか、はたまた建築なのか庭園なのか…不思議な場所です。

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現在森美術館で開催中の「STARS]」展の杉本博司さんのコーナーでは、こちらの江之浦測候所を舞台とした映像作品が上映されていますが、ぜひこの場まで足を運んで、巨大な作品のなかを歩き回ってみたい場所です。

■ 自然の変化を感じる 建築と庭園とアート。 ー 江之浦測候所

「個人ミュージアム」呼んでよいものかもわからなくなってきましたが。どれも個性的で、アーティストご本人のことが今までよりも少しだけ深く知れるような気になれる場所でした。


アーティスト本人による個人ミュージアムとは別に、アーティストの手がけるギャラリーや、コレクターさんの個人ミュージアムなんていうのもありますね。近いうちにそんな観点でも書いてみたいなと思います。

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