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東郷平八郎の名を持つ犬

動物が主人公の映画はなるべく避けたい。
子供の頃に観た南極物語なんてもってのほかだった。

何故にあの環境下で犬たちをリードに繋いだままで置き去りにした?という怒りに囚われてしまい、物語の趣旨に心と頭が追い付かなくなるからだ。
”天候不良で迎えに行けなかった。”、”費用が無かった。”、許可”が下りなかったから。”等の事情という名の言い訳を聴けば聴くほど、『うるさい。行け。連れて行ったんだから命をかけて何としてでも迎えに行け。』と子供ながらに思った。

実話を基にした物語ばかりではない。キングコングシリーズも大嫌いだ。人間の身勝手さや愚かさが、心優しい生き物を死に追い立てて行く物語だからだ。
(その割には全部観ているというこの矛盾。)

私が動物モノの物語を観るときに冷静でいられないのは、動物や子供や老人を無力なものとして捉え過ぎてしまっているからだろう。
だから、『これは作り物の話ですよ』というふうに離してみることが出来なくて、ハラハラ涙が零れてしまう。

そんな中、動画サイトで下記の映画の予告編を観てしまった。これも実話に基づく物語。
観ちゃダメだ!と心に誓ったのにわずか数日後に再生ボタンを押してしまった。やっぱり気になるのよね。

『トーゴー』(原題:Togo)は、2019年制作のアメリカ合衆国の冒険映画。
1925年の冬にアラスカ州ノームでジフテリアが流行した際、州全体に激しいブリザードが吹き荒れ、アンカレッジからの飛行機では救命のための血清が届けられなかったため、犬ぞりチームのリレーで血清を運んだ“ノーム血清走行”の実話の映画化。

犬も猫も、全ての動物は、ある時、頑なな人間をも変化させる。その人の心、価値観、存在そのものを成長させてくれる。
そんな出会いが生涯で一度も無いとしたら、それはちょっぴり寂しい人生かも知れないと、今の私はそう思う。

駄犬どころか、『悪魔だ!』と飼い主に忌み嫌われていたトーゴーは、何故に不屈の精神を持って大事を成し遂げたのか?

それは媚びでもなく、恐怖に駆られたからでもなく、とある一つの理由から彼が心底それを望んだからだった。

先述の通り、私は動物が主人公の物語では平静でいられないので、鑑賞中、無意識に「嘘だから。これ、嘘だから。ドキュメントと言っても絶対脚色しているから!」と自分に言い聞かせながら観ている節がある。

あと、もう一つは観る前に絶対ネタバレサイトを先に検索して悲劇で終わらないかどうか?をチェックする。(← もうさあー、そうまでして観るの止めなさいよ。という話なのだが。)

*悲劇だったら観ないわけである。

この映画は、本当に観て良かったなあと思った。目が腫れるほど泣いちゃったけど、悲しい涙ではなかった。

その他、”脚色いっぱいでしょ?”と予防線を張っていたものの、最後に出来来た実際の写真を観て、ビックリした。犬も似ているけど飼い主も本物そっくり。その写真から色んなことを感じ取って、また涙が出た。きっと多くの実話を傾聴して忠実に作成された映画なのだろうなと思う。

感じ方は人それぞれだけど、私はこの映画を観て元気が出た。

何のために生きるのか?何をやりたいのか?

そして、その問いに対しての答えを日々選択をしつつ生きる。『今はこうしよう!』と。

そんなことを感じて生きているのは、人間ばかりではないのだと思った。

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