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ありがたき御縁

いつもきびきび働いている新人ナースさんの一人が丸椅子に座っていた。忙しい一日だったが、一息ついたのだろう。私の隣に位置する椅子なのだが角なので、真横、至近距離に存在していた。

私はというと、今しがたインフルエンザ予防接種を注射した人たちの予診票にロット番号のシールを貼ったり、サインをしたりとさかんに手を動かしていたのだが、静寂の中、思わず笑ってしまった。
Kさんが傍らに座っている猫のように私の手の動きに合わせて規則的に顔を動かすからだ。

「どうしたんですか?主任さん?」と瞳孔が開いている様子のKさん。

いや、うちに居た猫さんみたいだなと思ったから。よくそうして私の一挙一動を観てたんです。空気感が似ている。

一瞬失礼なことを言ってしまったかなと思ったのだが、「嬉しいです。好きな存在と比べて下さって。うちはわんこですけど、8月に他界しちゃって、今も色んな時に思い出します。13年も一緒にいましたから。」とご自身の大切な子のお話をして下さった。

そう言えばだけど、私はよく人様に近寄りがたいと言われる。何だかつんけんして見えるのかな?無口だからかな?「怖い」とか「話しかけても良いですか?」とか。いずれも良い印象でないことは確かだ。

しかし、この人はふと気が付けば私のパーソナルスペースに居る。何も話していないときでも、するりと横に居る。そうやって仕事を覚えているというのもあるのだろうが、酷いときには、私と私が見ているPCの画面の間に頭が入って来るので「ちょっと・・・。見えない。」と言うようなことも。

「あ!だっはっはっ!すみません!」

一方、そんなやり取りを聴いていた他の新人ナースのAさんは、「いいなあ。私は動物嫌いじゃないけどアレルギーがあるから一生飼えないし、近くにも寄りたくないです。」と。

皆さん自分の取り扱い説明書を開示するのが上手で、Aさんも「私はタバコが嫌いで、近所の店で他人が吸いだしたときも窓開けて下さい!って言っちゃう。お酒も飲めません。」とか。

仕事仲間と友達になることもあるが、動物がダメで酒もたばこもダメなAさんとは、多分友達にはなれないなと思う。パーソナルスペースはがっつり空いているので楽だけど。

にも関わらずよく話しかけてくれるのはAさんの方だ。仕事のことからプライベートなことまで。「お酒飲めなくても飲んでいる人とご飯食べるのは好きですよ。」とか。

その他、古株の人で私が入職した頃、何を思ったか宗教の勧誘して来ていた人、全然仕事しない人。実に様々なタイプの人がいるものの、最近は何となく業務が落ち着いて来ている。一重に最近入って来てくれた新人さんたちが普通ーに仕事してくれる人たちだったというところが大きい。

よくあることだが、これまでの方々は依頼されたことはやらず「ど、どうして今そんなことを?!」というようなことばかりやる人たちだったから。

少し楽になって来たのかも知れない。

こんな時期にマニュアルでも作って充実させておこう。

と、良いことに目を向けた今日だった。

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